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岡野 潔(おかの きよし) データ更新日:2017.04.18

教授 /  人文科学研究院 哲学部門 インド哲学史


大学院(学府)担当

人文科学府 人文基礎専攻 インド哲学史

学部担当

文学部 人文学科 哲学 インド哲学史


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http://gdgdgd.g.dgdg.jp/
九州印度仏教学 .
取得学位
哲学博士 (マールブルク大学)
専門分野
インド仏教、チベット仏教
活動概要
 サンスクリット語・パーリ語・古典チベット語で書かれたインドの仏教文学(仏伝文学と説話文学)と,インド小乗仏教諸部派のコスモロジーを研究している。ネパールの仏教文献写本の校訂作業と翻訳を行なう。

(1)インド仏教コスモロジーの領域の研究
 インド仏教の上座部系部派の中の正量部という12世紀頃に滅亡した部派が伝えたコスモロジー文献を研究している。インド仏教正量部の文献として『マハーサンヴァルタニー・カター』という正量部独自の歴史的宇宙論を内容にしたカーヴィヤ(美文体の文学作品)が、サンスクリット語の原典として、ネパールに伝わっている。その作品の写本(最終的に六本の写本が確認された)は断片ではなく、完全なものであった。その写本の学術的価値にはじめて気づいて、研究を開始し、ドイツのマールブルク大学でミヒャエル・ハーン教授の指導の下に、その唯一サンスクリット語として現存する文献のテキスト校訂とドイツ語訳を行い、研究をまとめてマールブルク大学に博士論文として提出した。その後もこのインド正量部文献の研究を継続して研究し、「いもずる式」に他の複数の現存する犢子部・正量部の文献を見つけだそうとしながら、正量部の宇宙論の総合的な研究を行っている。またパーリ語で書かれた仏教コスモロジ−文献に強い関心があり、研究を行っている。

(2)インド仏教文学の領域の研究
(2ー1)『梵語仏典の研究 初期経典篇』の出版のために作成した「インド仏教文学研究史」の原稿をWEB上に公開し、世界中の研究者にさらなる研究情報提供を呼びかけた。この「インド仏教文学研究史」の最大の特徴は世界中に散在する仏教文学文献写本の所在を徹底的に調べ盛り込んだことである。ヨーロッパやインドとその周辺の写本情報を集めた上で,校訂や翻訳、内容研究などの過去150年の研究をまとめた。

(2ー2)讃仏作品、ジャータカ・アヴァダーナなどの文学的な仏教文献の研究
 アヴァダーナ(北伝仏教の説話文献)の中でも特にサンスクリット語で書かれたネパール中世の仏教説話文献,アヴァダーナ・マーラー文献には,写本のままで未だ校訂されていない作品が山のようにある。未開拓の領域といってよいので,その写本を蒐集し,校訂を行っている。
 特にドイツのミヒャエル・ハーン先生の勧めで始めたのがボーディサットヴァ・アヴァダーナ・カルパラターという11世紀にクシェーメーンドラによって作られた梵語の仏教説話集の研究である。この作品はネパールのアヴァダーナマーラー文献群の模範となった作品であり、梵文とチベット訳を校定する必要がある。2006年ごろからいくつかの章の校定テキストを発表しはじめた。今後も校定作業を継続してゆく予定である。またこの研究と並行して、ネパールのアヴァダーナマーラー文献群の研究の一環として、ラトナ・アヴァダーナ・マーラーの研究に現在取り組んでいる。またインドの仏教説話は,根本有部律などの律蔵文献に多く含まれており,それらの読解にも力を注いでいる。

(2ー3)仏伝文献の研究
 西暦2〜3世紀の大乗仏教の詩人たちが作った、ラリタヴィスタラ(漢訳普曜経)というサンスクリット語(梵語)の仏伝(仏陀の伝記)を研究し、東北大学インド学研究室での大学院時代(留学する前の26歳から31歳までの時期)に、集中的に研究を行い、8本ほどの論文を発表した。最も古い漢訳との比較によって、現存するサンスクリット本は後代に付加増広された部分を相当含むことがわかる。作品の最古形が古訳『普曜経』から推測できるが、さらに新訳『大方広荘厳経』を用いて、現存するサンスクリット本の半分を占める付加部分の成立過程を明らかにした。その結果、この仏伝文献には4つの成立段階があったことがわかった。『ラリタヴィスタラ』の諸伝本の系統の問題はほぼ解明されたと思うが、今後もマハーヴァストゥ(大事)などの類似する仏伝文献との比較に研究を拡げてゆきたい。

(3)インドの大乗仏典の研究
 作品の大部分が梵文が失われ、チベット語訳と漢訳で現存する大乗方便経という初期大乗経典のテキストの研究を現在継続中である。数本の論文を発表している。チベット語訳の大乗経典は、未開拓の領域である。力を入れてゆきたい。

(4)教育活動
  教育活動としては、学部および大学院においてインド仏教文献学に関する講義、演習を行っている。ドイツでハーン教授の許で学んだ厳密な仏教文献学の方法を、日本の次の世代に受け継がせてゆきたいと願っている。

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