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兼松 隆(かねまつ たかし) データ更新日:2024.05.07

教授 /  歯学研究院 歯学部門 口腔常態制御学講座


大学院(学府)担当

歯学府 歯学専攻 口腔常態制御学講座

学部担当

歯学部 歯学科 口腔基礎常態学 薬理学・歯科薬理学・臨床歯科薬理学
歯学部 歯学科 口腔基礎常態学 口腔生化学・分子遺伝学

その他の教育研究施設名

役職名

医療系統合教育研究センター長
歯学研究院 副研究員長
歯学部 学務委員長
歯学研究院 教授


ホームページ
https://kyushu-u.elsevierpure.com/ja/persons/takashi-kanematsu
 研究者プロファイリングツール 九州大学Pure
http://www.dent.kyushu-u.ac.jp/sosiki/a04/index.html
九州大学大学院歯学研究院口腔常態制御学講座口腔細胞工学専攻 .
就職実績-他大学
就職実績有, 2009.2.1.-2019.3.31. 広島大学大学院医歯薬保健学研究科 教授 
2019.7.1.-2020.3.31. 広島大学大学院医系科学研究科 特任教授
取得学位
博士(歯学)
専門分野
薬理学 生化学 分子生物学
外国での教育研究期間(通算)
02ヶ年09ヶ月
活動概要
— 新規イノシトール三リン酸結合タンパク質の発見—
 イノシトール1,4,5−三リン酸(Ins(1,4,5)P3)が細胞内の小胞体からCa2+を放出させる機構解明がなされ、Ins(1,4,5)P3の細胞内情報伝達物質としての重要性が認識されている。我々は、Ins(1,4,5)P3親和性レジンを作製し、この親和性レジンを使い、ラット大脳から新たに分子サイズが130kDaと85kDaの2種類のIns(1,4,5)P3結合タンパク質を見いだした。それぞれの部分アミノ酸配列を決定し、85kDa分子はホスホリパーゼC(PLC)のδ1型アイソザイムであり、一方130kDa分子は新規タンパク質であることをつきとめた。PLC-δ1(85kDa分子)に関しては、N末端の30番目から43番目までの領域がIns(1,4,5)P3結合ドメインであることを明らかにした。この領域は、プレックストリン相同領域(PHドメイン)に当たり、我々のこれらの一連の報告はIns(1,4,5)P3とその関連物質がPHドメインの共通性リガンドとして認知されるきかっけとなった。130kDa分子は、未知のタンパク質であったのでその全長遺伝子を単離した。クローン化した遺伝子から、本分子は85kDaのPLC-δ1よりひと回り大きいものの、全体的に38.2% のホモロジーでPLC-d1に類似していることが分かった。しかしこの分子にはPLC酵素活性は認められず、新しい機能タンパク質である可能性が示唆された。この分子をPLC Related Catalytically Inactive Protein (略してPRIP)と命名した。
— 新規タンパク質の機能解析から抑制性シナプス構築の分子メカニズム解明への展開 —
 130kDaもの分子サイズをもつこの新規Ins(1,4,5)P3結合性タンパク質の機能解明を目指して、2つのプロジェクト(1:相互作用分子の検索 2:ノックアウトマウス作製)を進めた。相互作用分子の検索からPRIP-1分子結合タンパク質を2つ同定した。一つはプロテインホスファターゼ1の活性サブユニット(PP1c)であった。PP1cはPRIP-1のPHドメイン直前部分に結合し、その複合体はPP1cの酵素活性(ホスファターゼ活性)を抑えた。もう一つの結合分子はGABA(A) receptor associated protein(GABARAP)であった。生化学的な結合実験から、PRIP-1がGABA(A)受容体のγ2サブユニットとGABARAPとの結合に競合することを示した。次に、PRIP-1 ノックアウトマウスを作製し、γ2サブユニットに作用点を持つ薬剤 (ジアゼパム等)を作用させたところ、海馬細胞を用いた電気生理学的解析やマウス個体を用いた行動学的解析において、この薬理効果が無効であることをみいだした。即ちPRIP-1遺伝子を欠損させると、抑制性神経伝達物質である γ-アミノ絡酸(GABA)の受容体の機能異常が起こることを明らかにした。
—PRIPはGABA(A)受容体の一生を制御している —
 PRIPを介したGABA(A)受容体のγ2サブユニットの形質膜発現機構を解析した結果、PRIPがGABARAPをγ2サブユニットに適切なタイミングでトランスロケーションさせることでγ2サブユニットを含んだ(ジアゼパム感受性)受容体の膜発現調節をしていることを明らかにした。また、PRIPは相互作用分子であるプロテインホスファターゼ活性を制御して、形質膜に発現しているGABA(A)受容体のリン酸化/脱リン酸化制御を行なってチャネル活性を調節することを明らかにした。さらに、膜に発現しているGABA(A)受容体の数的調節には、受容体のリン酸化レベルに依存したエンドサイトーシス機構が関かわることが最近明らかになった。PRIPによる受容体の脱リン酸化調節は、受容体のエンドサイトーシスの制御にも重要な役割を持つことを明らかにした。
—今後の展望 —
 PRIPには二つのサブタイプが存在する。PRIP-1は中枢神経系に特異的な発現パターンを示すのに対し、PRIP-2は様々な臓器に発現している。そこで我々は、PRIP-1/2ダブルノックアウト(DKO)マウスを作製しその解析を進めている。PRIPは、これまでの結果からGABA(A)受容体の輸送に関わる重要な分子であることが分かっているが、このDKOマウスを解析した結果、PRIPはGABA(A)受容体の輸送のみならず普遍的な分泌現象にも関わる分子である可能性が出てきた。現在、PRIPと分泌小胞輸送との関係について解析を行なっている。

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pure2017年10月2日から、「九州大学研究者情報」を補完するデータベースとして、Elsevier社の「Pure」による研究業績の公開を開始しました。