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西山 浩司(にしやま こうじ) データ更新日:2024.04.22

助教 /  工学研究院 環境社会部門 水・資源循環システム学


大学院(学府)担当

学部担当



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https://www7.civil.kyushu-u.ac.jp/suiken/mino_disaster/index.html
このHPは,福岡県筑後地方の耳納山地(久留米市,うきは市)で起こった過去の豪雨による土石流災害を記憶に留め,将来必ず起こる災禍に備えるために作成されました. ここでは,50名以上の犠牲者を出した享保5年(1720)の土石流災害の記録「 壊山物語 」を紹介します.享保5年の豪雨は,当時の古文書などの記録から,現在の福岡県筑後地方中心に,佐賀県の背振山東部から大分県日田市にかけての東西の広い範囲に深刻な災害を引き起こしたことがわかってきました.特に,東西に延びる耳納山地に沿って大きな被害が出たことが,壊山物語によって明らかになっています.壊山物語を含め,当時の古文書等の記録から,被災状況,被災地の地域的な拡がり,気象状況(豪雨を引き起こす梅雨末期の典型的な気象状況)が明らかになってきたので,気象庁が命名している豪雨事例と同様,江戸時代の事例についても 名付けることにしました.事例の命名でよく使う言い回しに倣って,「享保5年7月九州北部豪雨」と呼ぶことにします.このHPでは,耳納山地の山麓地区(うきは市,久留米市)にお住いの方々を対象に ,今後,耳納山地で起こる土石流災害に備えるための学習資料を用意しました.耳納山地北麓の各地区の災害リスクを住民の皆様に知ってもらうため,土石流災害に見舞われた当時の村落の位置をハザードマップ上に表示しました.また,お住いの地区の災害をイメージできるように,当時の災害の特徴についても説明を加えました.その元史料として,壊山物語の原文と翻刻文も公開しています .
https://seinoken1010.wixsite.com/tohomura-suijin
福岡県東峰村の水神と災害との関わり .
http://www7.civil.kyushu-u.ac.jp/suiken/
豪雨診断及び人工降雨の研究紹介 .
就職実績-民間機関等
就職実績有, 松下電器産業株式会社:1993年4月から1994年3月
取得学位
博士(工学), 防災士
専門分野
気象工学,災害気象学,近世豪雨災害発掘,降水制御技術
活動概要
これまで,物理学・気象学の知識・知見や人工知能技術をベースにして,主に,①地域の豪雨防災(身近な研究課題),②人工降雨による水資源の確保(中長期的な課題),③地域の災害リスクの認識,といった人々の生活に密着する工学的基礎研究に従事してきた.これらの気象学的研究を通して豪雨災害の対策と渇水対策に貢献することを目標とする.

詳細はここに記載
http://www7.civil.kyushu-u.ac.jp/suiken/


1.人工知能技術を用いた豪雨診断及び降雨予測手法の開発に関する研究

 暖候期に起こる豪雨(梅雨前線に伴う集中豪雨,台風接近時の豪雨)の発生を診断し,雨量情報を予測することは,洪水予測の入力を与え,流域内の洪水や都市域の内水氾濫に対する災害対策を講ずる(意思決定する)上で重要な課題である.しかし,豪雨は,豪雨を取り巻く多次元の気象情報(気象要素の空間場)と密接かつ複雑(非線形的)に関連する.従って,そのような多次元情報を,人間が理解しやすいパターンで表現し,豪雨と関連させることが望ましい.そこで,本研究では,豪雨の発生環境についての気象学的知見に基づき,人工知能の学習機能(ニューラルネットワーク,自己組織化マップ(SOM))を駆使して,豪雨場のパターン認識手法,及び,豪雨予測手法を開発する研究を行ってきた.この研究で構築された豪雨診断・降雨予測手法では,雨量に関する予測結果だけでなく,気象状態のパターンが診断され,そのパターンと類似する過去のイベントを検索することが可能になった.

2.人工降雨技術をを用いた降水制御(渇水軽減,豪雨・豪雪軽減)に関する研究 

 気象の人工制御で代表されるのが人工降雨である.人工降雨とは次のようなプロセスをいう.氷点下の雲の中に飛行機を使って人工的に氷晶化物質を散布して氷の結晶(氷晶)をつくる.それが成長すれば落下をはじめる.氷が途中で融けて地上で雨となる.この試みが成功し,十分な水分を地上にもたらすことができれば,渇水対策に大いに貢献できる.しかし,半世紀にもわたる全世界的な多く人工降雨実験が,多額の費用を費やしたにもかかわず,ほとんどが曖昧な結果に終わっている.原因は,人工のシグナルよりも自然変動の方が大きいという問題もあるが,他に,方法論的な問題もあったからである.例えば,ドライアイスや沃化銀を使った方法は,撒布後の評価が極めて難しい.また,人工の氷晶が形成されても,雲内に十分に広がらない可能性もあり,水資源になるほどの降水は期待できないと考えられる.一方,アメリカ合衆国ユタ州立大学の研究グループが開発した液体炭酸(航空機利用,積雲下層の0度以下の領域に液体炭酸を撒布)を使った新しい方法で解決できる可能性が出てきた.この方法では,地上で雨になるほど十分な大きさまで氷が成長できる方法で,しかも,人工の評価が他の方法に比べて簡単に行える点が特徴である.これまで,ユタ大学,防衛大学校の共同で,海上自衛隊の協力(P3C対潜哨戒機),1999年以降試行錯誤を行ってきた.また,地域研究の一環として,福岡県(1999年),佐世保市(2008年),山口県(2009年)からの受託研究に基づき,民間機を使った研究も行ってきた.その結果,人工的に降水を引き起こすことに成功し,貴重なデータを得ることができた.さらに,2006年以降,自然では降水が期待できない1km程度の薄い積雲でも,液体炭酸を用いることによって効率よく,雲を降水に変換する可能性があることがわかった.その結果は,今後の人工降雨の研究の幅を広げる知見となった.また,日本国内では深刻な豪雨・豪雪災害に見舞われることから,今後,豪雨,豪雪の軽減技術の開発についても検討・推進する予定である.

3.古文書編纂資料に基づく地域の土石流災害記録の抽出

近年,2009年7月21日の防府豪雨,2013年10月16日の大島豪雨,2014年8月20日の広島豪雨などで土石流が発生し,深刻な災害を引き起こした.そのような災害に備えて,平常時から居住地域の災害特性を十分認識して,地域住民が主体的となって,緊急時の避難対応を考えておくことが重要である.そのためには,地域の居住者が,過去に土砂災害が起こった場所がどこなのか,そして,どの程度災害リスクが存在するのかを調べられる環境が必要である.近年は,インターネットの急激な普及に伴って多くの気象情報や災害情報を取得できるようになり,災害被害軽減のための有益な情報が増えてきた.一方,それ以前の何百年にも渡る災害資料は少なく,地域の過去の災害履歴をインターネット上で検索してもほとんど出てくることはない.災害は同じ地域に頻繁に起こるわけではないため,地域住民の記憶の中に災害の経験が乏しく,災害リスクを具体的に認識することは難しい.そこで本研究では,地域の古文書資料を活用して,過去の土石流災害の特徴を抽出し,福岡県筑後地方,広島市周辺,長崎県諫早市などを対象に,土石流災害のリスクがどの程度あるのかについて研究活動を行っている.この研究を通して,地域の公立図書館や歴史資料館等に紙媒体として眠っている過去の災害記録(町史や古文書など)を掘り起こして編纂・解読し,インターネット上に公開できるようになれば,地域住民が土石流災害の危険性を認識する機会を持つことができ,今後の豪雨災害発生に備えて,平常時の地域防災教育ツールとして役立てていくことも期待できる.

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pure2017年10月2日から、「九州大学研究者情報」を補完するデータベースとして、Elsevier社の「Pure」による研究業績の公開を開始しました。