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前田 幸嗣(まえだ こうし) データ更新日:2017.05.15

教授 /  農学研究院 農業資源経済学部門 農業資源経済学講座


大学院(学府)担当

学部担当



電子メール
ホームページ
http://www.agr.kyushu-u.ac.jp/lab/quant/
九州大学 大学院農学研究院 農業資源経済学部門 食料経済分析学分野 .
電話番号
092-642-2969
取得学位
博士(農学)
専門分野
農業経済学,食料貿易論,食料産業組織論,数量経済学
活動概要
1.研究活動

(1)国際農産物貿易の政策シミュレーションモデルの開発
 経済学の教科書では,農産物市場は,完全競争市場の典型とされる.しかし,実際には,寡占化や製品差別化が進行し,農産物市場は不完全競争状態にある.また,農産物市場には,工業品市場などと異なり,関税や輸出補助金,生産補助金など,多種多様な政策が介在する.したがって,農産物の国際需給予測や政策評価を行うには,不完全競争と多種多様な政策の統一的扱いを可能とする計量モデルが不可欠となる.
 そこで,以上の統一的扱いを可能とする国際貿易の政策シミュレーションモデルを開発している.これまでは,空間均衡モデル(spatial equilibrium model)に不完全競争度を表すラーナー指数を導入し,その指数を推計する方法を開発した.また,製品差別化を空間均衡モデルに導入し,その度合いを関税ないし輸出補助金として貨幣評価する方法を開発した.さらに,関税や輸出補助金,生産補助金,関税割当制度,不足払い制度,輸出国家貿易,輸出規制,国際備蓄など,各種政策を含む空間均衡モデルを開発した.
 なお,これまでの成果に対しては,平成14年度日本農業経済学会賞が授与された.また,平成14年8月~平成15年8月には,米国コーネル大学に留学し,共同研究を行った.

(2)TPP参加の政策シミュレーション分析
 わが国の環太平洋経済連携協定(TPP)への参加をめぐって,参加賛成派は,TPPへの参加がわが国の稲作に与える影響は小さいと主張している.むしろ,生産調整の廃止と規模拡大を合わせて実現することにより,日本産米の輸出拡大が可能となるとさえ,主張している.一方,参加反対派は,TPPへの参加によって,わが国の稲作は壊滅的な打撃を受けると主張している.
 この国論を二分するTPPの参加問題について,米貿易の政策シミュレーション分析を行った.その結果,参加賛成派の主張は,日本産米の外国産米に対する製品差別化度が現状に極めて近い状態に維持されない限り,成立しないことを明らかにした.分析結果は,日本産米の製品差別化度の縮小により,わが国の稲作が大打撃を受けることを示しており,参加反対派の主張を支持するものであった.
 なお,以上の成果については,全国地方新聞社連合会等が主催し,内閣官房等が後援したシンポジウム「TPPをともに考える 地域シンポジウム」にパネリストとして招待され,閣僚らとともに,パネルディスカッションを行った.

(3)WTO農業交渉の政策シミュレーション分析
 農産物貿易の自由化問題としては,輸入国の関税削減がクローズアップされがちである.しかし,実際には,輸出国の貿易政策や国内支持政策も多くの問題を抱えており,世界貿易機関(WTO)農業交渉では,大きな争点となっている.
 そこで,アメリカの生産補助金とEUの輸出補助金,ニュージーランドなどケアンズグループの輸出国家貿易,アルゼンチンの輸出規制について,政策シミュレーション分析を行った.その結果,これら輸出国の政策がいずれも農産物貿易を大きく歪曲していること,なかでも,アメリカの平均作物収入・選択支払い(ACRE)が現在のWTO農業交渉と逆行し,アメリカ国内の農業保護を一層強めるものであることを明らかにした.
 なお,これまでの成果に対しては,平成25年度日本農業経済学会賞が授与された.


2.教育活動

(1)ミクロ経済学(学部2年生対象)
 行き過ぎた市場の機能の利用は,経済格差の拡大に代表される様々な経済問題を招く.一方,行き過ぎた政策介入は,自由な経済活動を圧迫し,経済成長を妨げる.つまり,経済成長の実現や食料・農業・環境問題の解決には,市場の機能と限界をよく理解した上で,市場の機能とそれを補完する経済政策,食料・農業・環境政策をバランスよく活用することが重要となる.この授業では,ミクロ経済学の基礎理論の習得を通じて,市場のもつ機能と限界について考察する.

(2)食料産業経済学(学部3年生対象)
 食料の安定供給を実現するには,食料産業を供給面からだけではなく,需要,市場および貿易を含むあらゆる側面から一体的に捉え,産業全体の効率化を図る必要がある.また,他産業にはない食料産業の特質を十分に認識しながら,食料産業にもたらされがちな他産業との経済格差や地域間格差を政策的に解消する必要もある.この授業では,食料産業の特質と効率化への対応,主要国の食料産業政策と貿易政策の現状を理解しながら,それらを分析する上で必要となる食料産業経済学の基礎理論について習得する.

(3)食料経済分析学特論(大学院修士課程1年生対象)
 食料・農業・環境問題を科学的に研究するには,①経済理論を数学的に表現し,②その理論の真偽を現実のデータを利用して統計学的および計量経済学的に検証した上で,③食料・農業・環境政策の経済効果をシミュレーションする,という一連の数量経済分析が必要不可欠である.この授業では,以上の数量経済分析の方法と農業資源経済学への応用について習得する.

(4)卒業論文,修士論文および博士論文
 現在の食料・農業・環境問題に対し,食料産業経済学,食料貿易論および数量経済学(計量経済分析とシミュレーション分析)の理論と方法を適用し,それら問題の発生メカニズムと具体的な解決策を計量的に解明する.論文の作成を通じて,論文作成の技法だけでなく,コンピュータやソフトウェアの活用法,プレゼンテーションや討論の方法についても習得する.

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