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井上 眞理(いのうえ まり) データ更新日:2016.05.21

教授 /  農学研究院 資源生物科学部門 農業生物科学 講座


大学院(学府)担当

生物資源環境科学府 資源生物科学専攻 農業生物資源学 専攻教育コース

学部担当

役職名

副理事


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取得学位
農学博士
専門分野
作物生理学、植物水分生理学
活動概要
<研究>
1)環境ストレス下における植物細胞の初期応答と防御機構:代謝の場となる細胞水の動態について、NMR分光法により、様々な環境(凍結・低温・乾燥・高温・紫外線・昆虫寄生)ストレス下の植物におけるNMRスピン-格子緩和時間(T1)をパラメータとして研究している。 低温感受性の異なるマメ科芽生えでは、T1の温度ヒステリシスを定量化し、低温感受性との相関を明らかにした。また、高温ストレス時の特異的な緩和挙動とその要因(常磁性イオン、タンパク質)の消長について低温ストレスとの比較検討を行った。一方、常緑植物の紫外線による紅葉化や虫えい形成による傷害に対し、葉のT1が延長することなどから、様々な環境ストレス下における植物の初期応答を1H-NMRにより探知できることを示した。これにより、生体系の水は単に反応を行うための媒体と見なすべきものではなく、ストレスに対する細胞の防御機能とも密接に関連していることを明らかにした。
2)イネにおける高温耐性機構:登熟期の高温による玄米品質の低下について、近年、育成された品種・系統の登熟過程における籾重や含水比および水分生理学的パラメータの1H-NMR と玄米品質との関係を調べた。その結果、登熟初期の籾乾物重の増加速度が白未熟粒の発生に影響していることを明らかにした。
3)コムギにおける発芽制御機構:穂発芽はコムギの品質低下をもたらし、農業上の大きな問題である。登熟過程の子実および成熟子実に対するアスコルビン酸処理は発芽を抑制し、いずれの登熟ステージにおいてもアスコルビン酸は有効な穂発芽抑制物質となることを明らかにした。また、穂発芽耐性の「農林61号」のアスコルビン酸含量、カタラーゼ活性およびmRNA発現レベルは、耐性のない品種に比べ高いことから、抗酸化能力の高さは穂発芽と密接に関連していることを明らかにした。
4)ササゲの乾燥耐性獲得機構:ササゲは、アフリカ西部の半乾燥地帯で広く栽培されているマメ科作物である。登熟期の乾燥ストレス下において、ササゲの葉に蓄積していた不溶性糖は素早く可溶化され、子実に転流させることで、光合成が低下しソースの供給がない状態でも、子実の登熟が可能となることを明らかとした。
5)ダイズのオートファジーと栄養飢餓応答の解析:ダイズの青立ち・莢先熟現象は、機械収穫の障害となる。シンク-ソースのアンバランスに着目し、オートファジー関連遺伝子であるGmATG8c とGmATG8i が開花4 週目に一過的に強く発現誘導を示したことから、葉の急速な老化と窒素栄養転流に関与していることを明らかにした。
6)トマトMicro-Tomの温度耐性機構:トマトのトレハロース合成酵素遺伝子SlTPS1の発現は、低温ストレスに応答して最も増加した。10℃で処理した葉は障害を受けるが、トレハロース添加により低温ストレスが軽減されることを明らかにした。
7)園芸作物の成熟・老化機構:果実の成熟過程および花の老化過程における細胞内の水のコンパートメントや糖、有機酸などの変化について、1Hおよび13Cを対象核とし多核NMRを用いて調べている。果実の各組織のT1、スピン-スピン緩和時間(T2)測定から自由水や結合水などの成分分割法により、成熟に伴い自由水が増大することを明らかにした。一方、花の老化過程においてはエチレン非感受性型の花弁でトレハロースが著しく効果的であることを水分生理学的に明らかにし、膜系やタンパク質の保護との相互作用について議論している。
8)球根植物の開花機構における水分バランス機構:温帯原産の球根はある一定期間の低温に遭遇しないと花茎の正常な伸長開花が起こらないという現象について、チューリップ球根の水の動態に着目し、NMRイメージングや1H-NMRで解析している。その結果、低温は鱗葉組織において、シンク器官からソース器官への適切な転換を誘導することを解明した。
9)木本植物の耐寒性と過冷却能:生態地理的分布を異にする植物の花芽や木部柔組織の過冷却能が、分布の北限または上限地における最低極温ともよく一致することを示熱分析法により明らかにした。これらの樹種は深い過冷却で凍結を回避しており、冷却速度、含水量、水ポテンシャル、組織学的特徴などの寄与を明らかにした。 

<教育>
 専門科目では、作物学総論、作物学各論、農学実験I~III、科学英語Ⅱ等を担当・分担している。大学院教育では、植物生産生理学詳論、作物学特論、国際コース講義等を担当している。過去には、全学教育において自然科学総合実験、少人数ゼミナール(環境ストレス下の植物における適応機構)、細胞生物学、専門科目では植物生理学を分担した。卒論生や大学院生には、ゼミ、実験および論文の指導を行っている。
 卒業生は、大学、農林水産省、県庁、市役所、教育職、JA、食品会社、種苗会社、商社などで、それぞれ専門を生かした仕事で活躍している。

<社会活動>
 日本学術会議連携会員、文部科学省中央教育審議会、JIRCAS(国際農林水産業研究センター)、農林水産省事業再評価技術検討委員会、生物系特定産業技術研究支援センター評価委員会、福岡県・環境審議会、福岡市・環境審議会等の委員を務めている。過去には農林水産省・独立行政法人評価委員会、同 農業資材審議会、文部科学省科学技術・学術審議会人材委員会、福岡県農業関連審議会の委員等を務めた。

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