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論文一覧
今井 亮一(いまい りょういち) データ更新日:2023.11.22

准教授 /  留学生センター


原著論文
1. 今井亮一, コロナ禍からの経済回復期におけるインフレーション, 九州大学留学生センター紀要, 31, 1, 29-62, 2023.03, 我が国は2020年から2022年にかけて新型コロナウィルス感染症危機(以下、コロナ禍)に見舞われ、多大の健康被害及び経済損失を被った。コロナ禍の特徴は、健康被害を減らそうとして対策を打つと経済損失が発生することにあり、健康と経済の間にはトレードオフがある。本稿では、政府・日銀等が公開した公式文書に基づいて、公衆衛生上の現状や対策をレビューするとともに、コロナ禍からの経済回復期における論点を整理する。我が国のコロナ対策は、コロナウィルスの致死率が高い間は厳格な人流制限によって死者数を抑制し、ウィルスが弱毒化しワクチンが普及するとともに規制を減らし経済回復を優先した形になっており、大きな超過死亡を出した欧米よりうまく感染を制御したと言える。経済回復期において高インフレ、高金利となった欧米に対し、低金利を維持した日本銀行の金融政策は急激な円安を招き、メディアから批判されたが、円安は一時的なものであるとして金融政策を大きく変えない日銀の姿勢は概ね妥当である。.
2. Ryoichi Imai, 2021年:コロナ禍と日本経済, 九州大学留学生センター紀要, 29, 21-38, 2022.03, [URL], 新型コロナウィルス感染症拡大が日本経済にもたらした影響を包括的に検証する。2021年の日本経済は、年初の第3波、春の第4波(アルファ株)、夏の第5波(デルタ株)と、新型コロナウィルス感染症拡大の影響を受けたが、ワクチン接種や、感染防止対策の普及によって、そのインパクトは次第に小さくなった。これにしたがい、経済活動をなるべく抑制せずに感染抑止を達成する手段について、専門家の議論が深まっていった。.
3. Ryoichi Imai, 2020年:コロナ感染拡大と日本経済, 九州大学留学生センター紀要, 29, 21-38, 2021.03, [URL], 2020年の日本社会はコロナに始まり、コロナで終わったと言える。コロナウィルス感染症に対する
日本政府の初期対応は功を奏し、第1波、第2波は軽微に終わったが、その後、経済優先に国策が切り
替わるとともに、これまでにない感染者増をともなう第3波を迎えている。本稿では、コロナ禍で発生
した経済社会の諸問題を整理・展望する。感染抑止と経済回復の二兎を追うことは難しく、感染を徹底
的に抑制することがむしろ、長期的な経済再生につながると思われる。.
4. Ryoichi Imai, 内生的貨幣論と消費税, 九州大学留学生センター紀要, 27, 61-74, 2020.03, [URL], 本稿では、2019年に注目された経済論争を振り返り、その意義を検討する。最初に、ブランシャー
ルが2019年の米経済学会長講演で、あらためてモデルを作り米国政府の財政赤字持続可能性を論じた
ことで再燃した「金利<成長率」論争をレビューする。続いて、今年の経済政策論壇をにぎわせた
MMT(現代貨幣理論)について、主流派の立場から検討する。最後に、10月の消費税率の8%から10%
への引き上げは、予想外の消費水準の変動を起こしたが、これは前回(2014年4月)の消費増税のよう
に標準的動学的マクロ経済学によって予想されるパターンではなく、メディア報道に家計が過剰に反
応した新しいタイプの変動であることを指摘する。.
5. Ryoichi Imai, 長期停滞論とネオ・フィッシャー政策, 九州大学留学生センター紀要, 27, 61-74, 2019.03, [URL], リーマン危機(2008年)以後の「大不況」(The Great Recession)から世界経済は立ち直ったが、大不況以前に比べて経済成長率の低下は疑うべくもない。いわゆる「長期停滞論」には需要サイドと供給サイド、それぞれに原因を求める立場がある。景気回復後も継続する低インフレやデフレから脱出する方法として近年注目されているのが「ネオ・フィッシャー政策」である。これは、「インフレ率が目標水準に到達してないからこそむしろ利上げによってインフレ率を上げることができる」という新奇で大胆な理論であるが、最近の米国FRBの果敢な利上げ政策に影響を与えていると考えられる。しかし、現在のように金融資産が膨張した経済では、株式市場、債券市場ともに金利上昇に対し脆弱となっており、ネオ・フィッシャー政策の持続性は疑わしい。.
6. Ryoichi Imai, Payroll Tax Reform and Job Distribution, 九州大学留学生センター紀要, 26, 61-76, 2018.03, [URL], Taxation on employment is explored in a labor search model with two types of jobs of different productivity and on-the-job search. The highproductive job is charged with both payroll and income taxes, while the low-productive jobs with income tax only. A tax reform to reduce payroll tax and raise income tax shifts the steady-state equilibrium distribution of jobs toward less productive ones. The result stands in a sharp contrast to the usual argument that replacement of payroll tax with income tax creates more of high-productive jobs..
7. Ryoichi Imai, 保険と医療需要, 九州大学留学生センター紀要, 25, 117-130, 2017.03, 保険は消費者価格を生産者価格から乖離させ、供給価格に比べて割安な消費者価格は、過大な需要を生む。ここで、生産者が特許制度によって守られていれば、生産者は戦略的に高い価格を設定して高い利益を得ることができるが、高価格は需要を抑制する。結果として、医療保険は、医療の数量は大きく変えず、所得を消費者から生産者に移転する機能を果たしているにすぎない可能性がある。医療の自己負担率引き上げは、生産者価格の引き下げを通じて保険料を下げ、自己負担率の上昇を考慮しても、消費者の生涯効用を上げる場合がある。.
8. Ryoichi Imai, 住宅市場のサーチ理論, 土地総合研究, 24, 1, 14-24, 2016.02, [URL], 本稿ではサーチ理論による住宅市場のモデル分析を紹介する。すでに膨大な業績が積み上げられており、全貌を紹介することは不可能なので、研究のスタートとなったWheaton (1990)を中心に説明する。住宅市場は、買手が同時に売手となる点で他の市場と異なっている。その結果、市場の厚み(取引量)が取引価格と正の相関を示すという特殊な性質を持つ。とりわけ住宅市場では、家計同士直接取引するより、仲買人がいったん購入し転売する方が経済厚生は高い。したがって、不動産業者が仲介する個人間の住宅取引は社会的に見て過剰である。.
9. Ryoichi Imai, アベノミクスを考える, 九州大学留学生センター紀要, 24, 29-48j, 2016.03, 本稿では、開始3周年を控えて、これまでのアベノミクスの成果と問題点を考察する。本稿ではアベノミクス「第1の矢」金融政策に考察を絞る。2013年4月に開始された「量的・質的緩和」の顕著な効果は円安と景気拡大に現れたが、物価上昇率目標については目覚ましい成果は上がっていない。さらに、物価が上がらないのは賃金が上がらないから、という近年の議論を踏まえ、1997年の金融危機によって日本経済の体質、特に雇用慣行が変化したことが物価および賃金の上方硬直性をもたらした可能性を検討する。.
10. Ryoichi Imai, Stagnation and Technological Progress, 九州大学留学生センター紀要, 22, 25-35, 2015.03, I present a simple model to illustrate the mechanism that technological progress might cause apparent stagnation, while it obviously improves economic welfare. TFP growth in the anufacturing sector induces employment and output to shift to the service sector if the elasticity of substitution in preference is small. Then GDP stagnates while welfare increases..
11. Ryoichi Imai, チケットの経済学, 九州大学留学生センター紀要, 22, 25-35, 2014.03, 本稿では、チケット販売の経済学について、筆者のオリジナル研究を交え考察する。特に、最近研究が進んでいる仲介業者(middlemen)の分析に基づいて、発売済みチケットの転売や流通に焦点をあてる。発売済みチケットの流通は、強い道徳的批判にさらされることが多いが、経済学的にチケット流通の禁止を正当化することは難しい。むしろ自動車販売や住宅販売と同じく、中古市場の存在が流動性を供給し、発売済みチケットを取引する消費者の利益のみならず、イベント提供者(興行主)にも利益を与えることを論じる。.
12. Ryoichi Imai, 労働移動支援政策の課題, 日本労働研究雑誌, 641, 50-60, 2013.12, 政策課題として急速に浮上している「労働移動支援助成金」について、経済学上の問題点と課題を検討する。生産性の低下が一時的ではなく恒常的であると判断される場合には、衰退産業から成長産業への労働移動を促すことが社会的に望ましい。この時、産業構造調整が失業をともなう限り大きな社会的コストを発生させるので、できれば「失業なき労働移動」を実現したい。しかし、経済学の人的資本理論では、一般訓練(他の企業の生産性向上に役立つ訓練)は既存企業によって供給されないということが知られている。そこで政府の介入が必要となるが、既存の雇用を保護する雇用調整助成金に比べて、新しい雇用への人材移動を促す労働移動支援助成金は、インセンティブ上の問題が大きい。雇用調整助成金は、景気回復後に訓練済みの労働者を優先的に雇用したいという企業の希望と整合的であるが、労働移動支援助成金は、再就職の成功を前提とする限り、たとえ技能訓練の実費全額を支給する助成金であっても、企業にとっての期待利得はマイナスであり、利用を促すためには実費以上の助成額を用意しなければならないと思われる。マクロ経済の論点として、成熟産業から放出された労働者は、労働生産性の高い産業に移動するはずで、政府はそれを促進すべしという声が強いが、実際には労働生産性は、成熟産業である製造業で高く、雇用を急速に拡大しているサービス業で低い。また、「グローバル化や技能の陳腐化は労働市場の流動性を高める」という印象論とは異なり、ここ数十年、世界的に先進国の労働市場の流動性はむしろ低下している。増大する外部労働市場の不確実性が、労働者の交渉力の低下を通じて留保賃金を引き下げ、離職率を低下させているのだ。これら長期トレンドを反転させる政策の持続可能性について真剣に検討すべきである。.
13. Ryoichi Imai, インフレ課税について, 九州大学留学生センター紀要, 21, 19-37, 2013.03, インフレ課税の理論と日本経済への応用について展望する。課税のない理想の世界ではゼロ金利を維持する「フリードマン・ルール」が最適な金融政策となるが、この結果は、課税が存在する現実経済でもほとんど変わらない。ただし、価格や賃金が硬直的だったり、適切に課税できない所得の源泉が存在したりする場合には、正の金利が正当化される。これによって、現実の金融政策において正のインフレ目標を掲げることが正当化できる。しかし、金利がすでにゼロに近づいている場合には、金融政策のみで目標を達成することはできず、財政政策と金融政策が協調することが重要である。.
14. Ryoichi Imai, 労働市場サーチ理論, 日本労働研究雑誌, 621, 16-19, 2012.04.
15. Ryoichi Imai, Middlemen and Resale, Search Theory Conferenceで報告。, 2012.03, [URL].
16. Ryoichi Imai, A Search Model of Bestsellers, Search Theory Workshop (Osaka), 九州大学で報告。, 2011.02, [URL].
17. Ryoichi Imai, A Search Model of the Resale Market, Search Theory Workshop (Osaka and New York), Workshop on Macroeconomic Dynamics, Free University of Amsterdam, 東京大学で報告。, 2010.07, [URL].
18. 今井亮一 江口匡太 奥野寿 川口大司 神林龍 原ひろみ 原昌登 平澤純子, 裁判所における解雇事件, JILPT資料シリーズ, No.17, 2006, 2006.08.
19. 今井亮一, 「解雇規制:裁量かルールか?」, 雇用・能力開発機構, 198-213, 2006.03.
20. 今井亮一, 「解雇訴訟における法廷判断の経済学的考察」, 雇用・能力開発機構, 304-320, 2005.03.
21. 今井亮一, 「解雇規制と経済厚生」, 雇用・能力開発機構, 2004.03.
22. Kenneth Burdett, Ryoichi Imai, and Randall Wright, "Unstable Relationships", Frontiers of Macroeconomics, 1(1), 1-42., 2004.01.
23. 今井亮一, 「パートナー解消の経済分析」, 名古屋商科大学論集, 第46巻2号、41-49, 2002.03.
24. Ryoichi Imai, "Some Coordination Games Which Have a Unique Equilibrium", NUCB Journal of Economics and Management, 45(2), 107-114, 2001.03.
25. 今井亮一, 「パートナーシップの経済学」, 名古屋商科大学論集, 第44巻2号, 95-107, 2000.03.
26. Ryoichi Imai, "Growth and Unemployment in a Search-Theoretic Model of Money", NUCB Journal of Economics and Management, 44(1), 135-156, 1999.07.
27. 今井亮一, 「転職の理論」, 名古屋商科大学論集, 第43巻2号、1-24, 1999.03.

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