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五島 健太(ごとう けんた) データ更新日:2023.11.22

助教 /  先導物質化学研究所 分子集積化学部門 理学研究院化学部門構造有機化学研究室


大学院(学府)担当

学部担当



ホームページ
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就職実績-他大学
就職実績有, 2003年4月から2004年3月
科学技術振興機構(東京都立大学) 博士研究員
2020年4月から2021年3月
青山学院大学 総合プロジェクト研究所 客員研究員
取得学位
博士(理学)
学位取得区分(国外)
なし
専門分野
有機化学
ORCID(Open Researcher and Contributor ID)
https://orcid.org/0000-0002-7369-5996
外国での教育研究期間(通算)
00ヶ年00ヶ月
活動概要
研究活動とその概要

 有機π電子系化合物は, 柔らかく軽い素材であり材料への応用が期待される化合物群である. 芳香環・複素環の修飾や拡張により, 電子的性質や光物理的性質を必要に応じて変化させる事ができる. 一方で, 化合物の機能を極限まで引き出すには, 分子配列も重要な課題である. 本研究は, 芳香族及び複素環, 並びにこれらを構成単位とする大環状化合物に分子間相互作用を巧みに取り入れ新奇な電子的・光物理的性質を見いだした.

1) 4,6-置換ピリミジン類の超分子構造体の構築と光物理的性質
 炭素-炭素単結合と二重結合の繰り返し構造からなるポリインの一方の末端に電子供与基であるアミノ基, もう一方に電子吸引基のカルボニル基を導入した化合物はメロシアニンと呼ばれる. 色素としてのメロシアニンの光物性は多くの研究者を魅了している. 我々は4-アミノ-6-オキソピリミジン類がメロシアニン様の構造を有し, 加えて, 水素結合供与, 受容部位を含む事から, 超分子構造体の構築とそれに伴う機能の発現を期待して研究を行った.
 母体骨格およびそのMe誘導体は, 結晶中で自己相補的な水素結合により一次元のテープ状の構造をしていることが分かった. これら超分子構造体の最も顕著な性質は, EtOHおよび結晶中で, 360 nmにJ型の励起子帯を生じる事である. この分子は, 単分子では無蛍光性であるが, 励起子帯に光照射すると400 nmで発光する. これは従来の色素分子が, 反平行にπ—πスタックしH型の励起子相互作用をすることとは対照的であった. 一次元テープ状の集合体構造は, 疎水性相互作用を巧く取り入れることで劇的に変える事ができる. イソブチル基を側鎖に持つ誘導体は一次元のテープ状構造と環状六量体構造の結晶多系として得られる. 溶解度曲線から環状六量体構造が安定な系であることを明らかにし, イソブチル基のような小さな疎水性官能基であっても集合体様式の変換に有効であることを示した. これらの化合物群のクラスター構造の計算化学や結晶中での赤外スペクトルの検証により集合体としての性質が明らかなりつつある. 本系は二重水素結合一次元鎖モデルの数少ない例であり今後は, 色素としての基本性能をもつピリミジン類縁体のさらなる機能追求が望まれる.


2)芳香族酸ジイミドを基盤とした化合物の光学特性および大環状化合物の合成・超分子構造体の構築と機能
A) ラジカルを発生する光応答分子の創成とフォトメカニカル効果

 光により安定なラジカル種を生成する分子は, 不対電子に由来する特徴的な光学的・電気的・磁気的特性が期待されるため, 光電子材料などへの応用の観点から興味深い. 我々は, 側鎖にアルキルアミン部位を有するナフタレンジイミド (NDI) が, 固体状態で光照射によりラジカル種の生成に伴う色調変化を示すことを見出した. これらの化合物の結晶は光による形状変化 (フォトメカニカル効果) を示すことが明らかとなった. NDIの粉末に光 (λmax = 370 nm) を照射すると, 黄色から黒色へと色調が変化する. これを大気下, 暗所に戻すと, 粉末の色は再び黄色へと変化した . NDIの結晶に光を照射すると屈曲が観測される. 光照射前後のX線構造解析および磁化率の測定からNDIラジカルアニオン種間の静電反発, ラジカルアニオンおよび混合原子価積層体の形成に伴う結晶中での分子配列の変化が屈曲に関係していると考えられる. ラジカルを発生するフォトメカニカル効果を示す系は極めて珍しく今後は機能性材料として大きな期待が寄せられる.

B) 芳香族酸ジイミドを基盤とした大環状化合物の合成・超分子構造体の構築と機能
 ピロメリット酸ジイミドは, 電子受容体として振る舞う. 我々は, ピロメリット酸ジイミドを基盤とした大環状化合物を種々合成した. これらの大環状化合物は電子不足の空孔をもつホスト分子として振る舞い, 電子の豊富なゲスト分子を電荷移動相互作用により包接する.  大環状化合物はジメチルアニリンに対して特異的にゲル化し, そのキセロゲルは多孔質ナノファイバー構造を取っている事が分かった. 芳香族ドナー分子の蒸気をこの多孔質ナノファイバーに再び作用させると電荷移動相互作用により着色し,ドナー性の増大とともにその電荷移動吸収帯は長波長にシフトする事が分かり, 化学センサーとしての機能がある事を示した.

3) 自己組織化による簡便な大環状化合物の合成と性質
 アルデヒドと環状尿素誘導体あるいはアミン類との脱水縮合反応は, 適切な酸性条件の選択や, 方向性や剛直さをもつ基質を選択する事で, 自発的に安定な化合物を与える. エチレン尿素とホルマリンとの反応では, 酸性度を設定する事で環サイズの異なる化合物を選択的に合成できる事を見いだした.
一方, 剛直なジアルデヒドと柔軟なトリアミンとの反応では一辺が23 Åもある巨大な四面体型の大環状化合物4が生成し, このカプセル型巨大分子の有機溶媒中の体積は用いる溶媒の体積に依存して変化する事を明らかにした. この化合物は結晶中で疎水性のメソ孔をもち選択的に1-ブタノールを吸着する.







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