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星野 友(ほしの ゆう) データ更新日:2018.07.02

准教授 /  工学研究院 化学工学部門 分子・生物システム工学


大学院(学府)担当

学部担当



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092-802-2769
就職実績-他大学
就職実績有, 東京工業大学, 日本学術振興会 特別研究員
University of California, Irvine, JSPS Research Fellow
University of California, Irvine, postdoctoral Research Fellow
University of California, Irvine, Assistant Project Scientist
取得学位
博士(工学)
学位取得区分(国外)
なし
専門分野
生体分子工学、タンパク質科学、合成高分子、分子認識化学、コロイド界面化学、CO2分離材料
外国での教育研究期間(通算)
03ヶ年03ヶ月
活動概要
私達は、抗体や酵素のように高度な機能を持つ材料を安価なプラスチック原料から創り出す方法を開発しています。新しいプラスチック産業を生み出すべく、国内外の企業や大学と積極的に共同研究を行い、日々研究に励んでいます。

現在は主に下記の3つの研究をしています。

1,プラスチック抗体/アプタマーの開発
抗体のように特定の分子と強く特異的に結合する合成高分子ナノ粒子“プラスチック抗体”を開発しています。これまでに数種類の機能性モノマーを適切に組み合わせランダム共重合する事で標的のペプチドやタンパク質とマルチモードで多点結合するナノ粒子を合成できることがわかっています(1)。さらに、機能性モノマーの導入量を最適化し(1,2)、分子インプリント法(3)やアフィニテイー精製法(4)と組み合わせる事で抗体と同等の強さで標的ペプチド(1,3,4)やタンパク質(2,5,8)を認識するナノ粒子を調製できる事を明らかにしています。これらのナノ粒子は生きた動物の血流内に於いても標的タンパク質を認識し、結合する事でその機能を中和することが出来ます(1,6)。最近ではフリーラジカル重合の代わりに分子量分布の制御が可能なリビングラジカル重合法を用い、さらにアフィニティー精製法や分子インプリント法を活用する事で分子認識能や分子構造が均一な高分子リガンド“高分子アプタマー”を調整する技術を精力的に開発しています(7,9)。将来的には合成高分子を抗体やアプタマーのように疾患治療に応用し、タンパク質の精製工程で用いるアフィニティーリガンドをタンパク質から合成高分子に置き換える事を目標にしています。

(参考文献)
(1) PNAS 109 (1), 33-38, 2012
(2) JACS 134, 15765-15772, 2012
(3) JACS 130, 15242-15243, 2008
(4) JACS 132, 13648-13650, 2010
(5) JACS 136, 1194-1197, 2014
(6) JACS 132, 6644-6645, 2010
(7) JACS 137, 10878-10881, 2015
(8) Nature chemistry 9, 715, 2017
(9) J. Contl. Rel., 268, 335-342, 2017

2,プラスチック酵素の開発
生体は、外部から物質を取り込み、物質・エネルギー変換し、不要な物質を排出し続ける非平衡開放系システムです。膨大な量の物質が流れている中で個体がその状態を維持できるのは、多種多様なタンパク質(酵素)が存在し、それぞれのタンパク質が標的分子と“必要な時だけ”“必要な強さ・速度”で結合・解離を繰り返し、反応を触媒しているためです。近年、酵素は標的分子との結合性を制御する為にタンパク質の構造を大きく変化させていることがわかっています。また、酵素はしなやかに構造をゆらがせる事で標的分子との結合/解離の速度を制御していることがわかってきています。私達は、合成高分子ナノ粒子にタンパク質が持つしなやかな構造ゆらぎを付与することでナノ粒子の標的分子認識機能や分子認識動力学を制御できるのではないかと考えています。これまでに、温度に応じて体積相転移を起すナノ粒子と標的タンパク質との相互作用が相転移温度前後で可逆的にon-offスイッチングできることを明らかにしました(4,10)。また、ナノ粒子の相状態や密度を設計する事で標的分子との親和性に影響を与える事なく、標的分子結合/解離の速度を制御できることがわかってきました(11,12)。これらの知見を生かし、変性タンパク質に強く結合し、天然構造のタンパク質には比較的弱く結合するように設計されたナノ粒子は、タンパク質凝集体を可溶化し天然構造に巻き戻すプラスチックシャペロンの様な役割を果たすことが明らかとなっています(13)。今後はナノ粒子に触媒機能を付与する事で酵素の様に温和な条件で効率よく機能する化学プロセスを構築できるのではないかと考えています(14)。

(参考文献)
(10) Angew. Chem. Intl Ed. 51, 2405-2408, 2012
(11) JACS 134, 15209-15212, 2012
(12) Biomacromolecules 15, 541–547, 2014
(13) JACS 138, 4282-4285, 2016
(14) Biomacromolecules,16, 411–421, 2015



3,酵素のようにpKaが可逆的に変化するナノ粒子の開発および高効率二酸化炭素分離剤への展開
酵素は、様々なpKaの官能基を活性部位に精密に配置しています。さらに、化学・光エネルギーを用いて分子構造を変化させ活性残基のpKaを上下させることで、高度なイオン輸送機能を達成しています。私達は温度応答性のナノゲル粒子を合成する際に酸性官能基のプロトン化状態を制御することで温度変化に応答してpKaが大きく可逆的に変化するナノゲル粒子を合成できることを明らかにしました(15,16)。このpKa変化を利用することで、相転移温度前後のわずかな温度差で可逆的に二酸化炭素などの酸性ガスを吸収/放散出来ることがわかっています(17,18)。これは、酸素との結合と同期したヘモグロビンによる二酸化炭素分離の分子機構(ボーア効果)のように効率の良い二酸化炭素分離システムになり得ると考えています。最近ではアミン含有ナノゲルを薄膜化することで火力発電所から排出される高湿度の二酸化炭素を低コストで分離する材料になることがわかってきました(19)。安価な温度応答性ナノ粒子を使えば、様々な工業プロセスやエネルギー変換プロセスを低コストで省エネルギー化出来ると考えています。

(参考文献)
(15) Advanced Materials 26, 2449–2606, 2014
(16) Journal of Materials Chemistry B 5, 9204-9210, 2017
(17) JACS 134, 18177-18180, 2012
(18) Chem. Sci. 6, 6112, 2015
(19) Angew. Chem. Intl Ed. 53, 2654–2657, 2014

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