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井口 千雪(いのくちちゆき) データ更新日:2024.04.09

准教授 /  人文科学研究院 文学部門


主な研究テーマ
明代武官の文学活動
キーワード:武官 武定侯 郭勛
2018.04~2023.03.
1)『三國志演義』成立史の研究
2)明代武官と白話小説成立の関係の研究
3)『水滸伝』『金瓶梅』の研究
キーワード:三国志
2017.04~2020.03.
従事しているプロジェクト研究
明代武官を中心とした社会的異種階層間の文学的交流の研究(科研費・若手研究)
2018.04~2024.03, 代表者:井口千雪.
研究業績
主要著書
1. 井口 千雪, 『三國志演義成立史の研究』, 汲古書院, 2016.03,  第一章~第七章は博士論文に加筆と修正を加えた内容となっており、前言・序章・結語は書き下ろしである。
 元末明初(明の建国は1368年)、戯曲作家の羅貫中によって編まれたとされる『三國志演義』であるが、その執筆プロセス、成立過程、羅貫中の詳しい足跡、執筆に至った動機などは謎に包まれていた。
 序章では、現存する明代版本の体裁・刊行者・刊行経緯・読者層を考察し、当時の『三國志演義』受容の様相、読者層拡大の経緯などを明らかにする。
 次に第一章では、版本間の本文の異同の問題と、素材論の観点から、『三國志演義』の成立史についておおまかな見通しを提議する。
 第二~四章では、現存する早期の版本群の本文を詳細に校勘して、どの本文が「原演義」の様相を残しているのか、それにどのような意図で書き換えが加えられたのかを考証する。特に、これまでの研究で軽視されてきた「劉龍田本」などが、本文変容の過渡期の様相を伝えているという新事実を指摘する。
 第五~七章では、執筆者が何を素材としてこの小説を構成したのか、具体的な執筆プロセスを考察する。『演義』のあらすじは、元の至治年間(1321―1323)に建陽(現福建省南平市建陽区)の虞氏から出版された『全相平話三国志』を概ね踏襲している。また、西晋の陳寿著『三国志』(および東晋末劉宋初・裴松之注を含む)、北宋の司馬光著『資治通鑑』・南宋の朱熹著『資治通鑑綱目』といった史書の記述・文面が多く利用されており、作者が執筆の際にこれらの書物を参考書として用いていたことがうかがわれる。
 結語では、これまで漠然としていた『三國志演義』の成立史について、段階的な成立過程を経ていること、多くの人間が様々な意図を以て手を加え、現在のような形になったと総括する。そして、そのような発展の原動力となった「大衆の読書に対する希求」や書坊の役割について論じる。.
主要原著論文
1. 井口 千雪, 武定侯郭勛による『三国志演義』『水滸伝』私刻の意図, 『日本中國學會報』第71集, 2019.10, 中国においては従来、文学の担い手は大夫(文人・文官)であったとみなされて来たが、本研究は、明代文学を代表する小説『三国志演義』『水滸伝』が高級武官である武定侯郭勛によって出版されたことに着目し、膨大な史料の精査により、その出版意図や背景を考察したものである。明代の武人・武官が、出版事業によって、自身らの主張を世に知らしめたり、地位向上を図っていたことを明らかにした。.
2. 井口千雪, 「明朝勲戚武定侯郭氏と文学―「諸葛の如き」定襄伯郭登―」, 『中国文学論集』第四十六号, 111-133, 2017.12.
3. 井口 千雪, 「『三國志演義』三系統の版本の継承関係―劉龍田本を手がかりに―」, 『東方學』第127集, 2014.01,  『三國志演義』の三系統の版本の本文を校勘し(本論では葉逢春本、劉龍田本、嘉靖壬午序本という比較的古い版本三種を利用)、従来は簡本であるがゆえに軽視されてきた劉龍田本の本文は、葉逢春本から嘉靖壬午序本へと洗練されていく過渡期に派生した版本であることを明らかにする。
 この発見は、これまで漠然と想定されてきた「現存する版本以前に存在したであろうテキスト」の存在を実証するものであって、今後、人物形象の変遷などを考察する際にも重要な基礎的研究とみなされることになると思われる。.
4. 井口 千雪, 『三国志演義』執筆プロセスに関わる考察, 『日本中國學會報』第64集, 2012.10.
主要学会発表等
1. 井口 千雪, 明代白話小説と大衆の生活, 九州中国学会, 2020.10.
2. 井口千雪, 武定侯郭勛の文学活動, 日本中国学会 第七十回大会, 2018.10.
3. 井口 千雪, 「明朝勲戚武定侯郭氏と文学」, 東方学会平成28年度秋季学術大会, 2016.11.
学会活動
所属学会名
東方学会
九州中国学会
京都府立大学国中文学会
三国志学会
中国古典小説研究会
九州大学中国文学会
日本中国学会
学協会役員等への就任
2020.04~2022.03, 中国古典小説研究会, 幹事.
学会大会・会議・シンポジウム等における役割
2021.04.01~2022.03.31, 九州大学中国文学会 文藝座談会, 発表者の調整、開催通知、会計など.
2020.04.01~2021.03.31, 九州大学中国文学会 文藝座談会, 発表者の調整、開催通知、会計など.
2019.08.28~2019.08.29, 中国古典小説研究会大会, 学会運営補助.
2019.04.01~2020.03.31, 九州大学中国文学会 文藝座談会, 発表者の調整、開催通知、会計など.
2018.04.01~2019.03.31, 九州大学中国文学会 文藝座談会, 発表者の調整、開催通知、会計など.
2017.04.01~2018.03.31, 九州大学中国文学会 文藝座談会, 発表者の調整、開催通知、会計など.
学会誌・雑誌・著書の編集への参加状況
2021.04~2021.12, 『中国文学論集』第50号, 国内, 査読委員.
2021.04~2021.12, 『中国文学論集』第50号, 国内, 編集委員.
2020.04~2020.12, 『中国文学論集』第49号, 国内, 編集委員長.
2020.04~2020.12, 『中国文学論集』第49号, 国内, 査読委員.
2019.04~2019.12, 『中国文学論集』第48号, 国内, 編集委員長.
2019.04~2019.12, 『中国文学論集』第48号, 国内, 査読委員.
2018.04~2019.03, 中国古典小説研究, 国内, 査読委員.
2018.04~2019.12, 『中国文学論集』第47号, 国内, 編集委員長.
2018.04~2019.12, 『中国文学論集』第47号, 国内, 査読委員.
2017.04~2017.12, 『中国文学論集』第46号, 国内, 編集委員長.
2017.04~2017.12, 『中国文学論集』第46号, 国内, 査読委員.
その他の研究活動
海外渡航状況, 海外での教育研究歴
西安外国語大学, China, 2009.08~2010.07.
受賞
2020年度日本中国学会賞, 日本中国学会, 2020.10.
第三十四回東方学会賞, 東方学会, 2015.11.
第二十二回蘆北賞奨励賞, 橋本循記念会, 2012.11.
研究資金
科学研究費補助金の採択状況(文部科学省、日本学術振興会)
2018年度~2023年度, 若手研究, 代表, 明代武官を中心とした社会的異種階層間の文学的交流の研究.

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