九州大学 研究者情報
研究者情報 (研究者の方へ)入力に際してお困りですか?
基本情報 研究活動 教育活動 社会活動
片山 勉(かたやま つとむ) データ更新日:2024.04.08

教授 /  薬学研究院 臨床薬学部門 生命薬学


学部担当



電子メール *Internet Explorerではメールアドレスが表示されないため、他のWebブラウザ(Chrome、Safari等)をご利用ください。
ホームページ
https://kyushu-u.elsevierpure.com/ja/persons/tsutomu-katayama
 研究者プロファイリングツール 九州大学Pure
http://bunsei.phar.kyushu-u.ac.jp/
分子生物薬学分野の紹介。内容は、教官・学生名、研究概要、卒業生進路、博士学位論文題目、主要研究業績リスト。 .
電話番号
092-642-6641
FAX番号
092-642-6646
就職実績-他大学
就職実績有, Stanford University, School of Medicine, Department of Biochemistry (Postdoc. 1990.10-1993.5)
Gerorgetown University, Medical Center, Deparment of Biochemistry and Molecular Biology (Postdoc. 1993.6-1994.3)
取得学位
理学博士
学位取得区分(国外)
なし
専門分野
分子生物学、生化学、分子遺伝学
外国での教育研究期間(通算)
03ヶ年06ヶ月
活動概要
研究活動:
 細胞が増殖するためには、染色体複製を1回だけ行ってゲノムを正確に2倍化する必要がある。この1回性複製を維持制御する分子機構の解析を主テーマとして研究している。1回性複製は、染色体上の複製開始点で起る複製開始反応が、細胞周期1周につきただ1回だけ、起るように制御することによって成立する。
 私は、大腸菌では、複製開始反応に必要なDnaA蛋白質が、DNA上にロードしたDNAポリメラーゼのあるサブユニットによって不活性化されることを見出している(Cell, 1998; EMBO J., 1999; EMBO J., 2001)。この制御システムを制御的DnaA不活性化機構(RIDA; Regulatory inactivation of DnaA)と命名した。RIDAは染色体複製システムによる自律的(フィードバック型)抑制制御によって、1回性複製が維持されることを意味している。近年、RIDAの基本原理は、酵母からヒトまでの真核細胞にも保持されていることが明らかになった。さらに、私は、細胞周期で複製開始を起こさせるためDnaA蛋白質を再活性化させる分子機構をも解明し、DARS(DnaA-reactivatng sequence)システムと命名した(Genes Dev., 2009)。並行して、複製開始複合体の解析も進め、新たな複合体形成メカニズムを解明するなど(Genes Dev., 2007)、ここ数年で格段の展開を達成した。
 現在、RIDAおよびDARSシステムを調節する分子機構、複製開始複合体の分子機構、染色体と細胞分裂との共役機構(DNA複製チェックポイント制御など)などを研究している(Mol. Microbiol., 2010; JBC 2011等)。RIDA、DNA複製チェックポイント制御系は、原理的には、細胞性生物には進化的に広く保存されているので、分子機構の共通原理や多様性をさらに明らかにする必要がある。DARSシステムも、ゲノム解析からは、多くの真正細菌に保持されていることが示唆されている。また、これらの研究過程から得られた成果や新たに構築した実験系を利用して、共同研究として、蛋白質構造解析や新規抗菌剤開発を志向した研究も行ってきた。
 さらに、前述のように、染色体DNAの複製開始反応には、高次で複合的なタンパク質多量体の形成、および、タンパク質複合体の機能的構造変化がキーとなっている。大腸菌では最少限、DnaAタンパク質1種のみが複製起点oriC上で高次複合体を形成することにより、開始反応が引き起こされる。oriCを含むDNAを用いて試験管内で複製開始反応を再構成することもできる。よって大腸菌のシステムには、このキー反応の原理解明にとても有利な条件が備わっている。開始反応過程では、通常、溶液中ではモノマー(単量体)であるATP結合型DnaAタンパク質がoriC上で機能的多量体を形成する。上述のように、私は、このoriC-DnaA多量体(複製開始複合体)の構造機能解析を進め、複製開始反応の分子メカニズムの解明に挑戦している。まず、私は、複製開始複合体において、ATP結合を認識するDnaAアミノ酸残基の同定に成功した。これに基づき、ATP依存的に複製開始が起こるメカニズムをすでに提案している。次に、oriC内には親和性の異なる複数のDnaA結合部位があり、DnaA分子の共同的結合の制御に関わっている。我々が見いだした新規DnaA結合因子DiaAタンパク質は、oriC上での低親和性部位へのATP-DnaA装着を補助し、ATP-DnaA多量体形成を促進する役割をもつことがわかった。さらに、形成されたoriC-ATP-DnaA複合体中では2重鎖DNAの開裂(局所的1本鎖化)反応が起こる。最近、2重鎖開裂(1本鎖DNAとの結合)反応に特異的に必要とされるDnaAアミノ酸残基の同定にも成功した。加えて、開始複合体の全体構造の解析も進め、これまでの説と異なる、新たな複製開始複合体のモデルを提案し、複製開始反応のメカニズムを解明しつつある(JBC 2005; 2007; 2008, 2009; NAR 2012等)。以上の研究は、これまでと全く異なる作用機序を持つ、新たな抗菌剤、抗がん剤の開発のシーズとして画期的なものといえる。
 
参考文献:
片山 勉(2009)大腸菌の染色体複製開始制御機構、蛋白質核酸酵素、54巻、4号、343-349頁
片山 勉(2008)イニシエーターDnaA蛋白質による大腸菌染色体複製開始機構、細胞工学、27巻、10号、974-978頁
Katayama, T. et al. (2010) Regulation of the replication cycle: Conserved and diverse regulatory systems for DnaA and oriC,
Nature Rev. Microbiol. 8(3):163-170

教科書:Genes VII (2004) B. Lewin著(RIDAについて記載されている)

教育活動:
基礎生物学演習、生命薬学I、分子遺伝学、システム分子生物学、生物薬学実習:核酸の構造と機能、卒業研究指導、細胞複製システム論、生命薬学総論、大学院生の研究指導

社会連携活動:製薬企業との共同研究、九州大学薬学部公開講座(平成11,15年度)、論文審査

九大関連コンテンツ

pure2017年10月2日から、「九州大学研究者情報」を補完するデータベースとして、Elsevier社の「Pure」による研究業績の公開を開始しました。