九州大学 研究者情報
総説一覧
久場 隆広(くば たかひろ) データ更新日:2023.11.22

教授 /  工学研究院 環境社会部門 水・資源循環システム学


総説, 論評, 解説, 書評, 報告書等
1. 久場 隆広, 安価で高効率なセシウム吸着剤としての賦活化竹炭・木炭・汚泥溶融スラグの開発, 2019年度 大学研究助成 技術研究報告書 公益財団法人 JFE 21世紀財団、pp.187-201, 2020.01, [URL], 本研究は、プラズマ処理のような新たな賦活化手法を検討すると同時に、Cs+を吸着除去した賦活化竹炭・木炭を焼却処理することで、最終処分される放射性廃棄物の減容化を目指すものである。また、ゼオライトを表面に形成させることで、Cs+吸着能の高い下水汚泥溶融スラグを開発するものである。ここでは、以下の3つの成果について紹介する。
(1) 大気圧非平衡プラズマ処理が竹炭および活性炭のCs⁺吸着能に及ぼす影響
(2) 賦活化木炭のCs⁺吸着能とその焼却時の減容化率及びCs⁺回収率について
(3) 下水汚泥溶融スラグを用いて合成したゼオライトによるCs⁺吸着能について.
2. 久場隆広, 年会学生ポスター発表賞 (ライオン賞) の表彰報告, 日本水環境学会, 2017.06, [URL].
3. 久場 隆広, 下水道資源を利活用するための技術と社会システムに関する調査検討に関する小委員会
下水道資源の利活用に資する技術開発促進検討業務 報告書
「3.4 セシウム吸着剤としての下水汚泥溶融スラグの利活用」
, 土木学会環境工学委員会, 2018.03,  本研究では、下水汚泥溶融スラグに対して熱アルカリ処理を施すことで、Cs+吸着能が向上するメカニズムを明らかにした。
1) 熱アルカリ処理により、賦活化スラグの表面に細孔構造が形成され、同時に、比表面積が増加する。また、ゼオライト相 (X型ゼオライト、Y型ゼオライト、ソーダライトなど) が形成されることを明らかにした。
2) 初期濃度が10~100 mg-Cs+/lの範囲では、賦活化スラグの吸着率の低下はほとんど観察されず、98%程度であった。最大Langmuir吸着容量は52 mg-Cs+/g-slag程度であり、未処理スラグの3~4倍程度に向上した。pHが4以上の条件下では、5分程度で吸着平衡に達した。
3) 汚泥溶融スラグは、ゼオライト形成のための安価なSi源、Al源となり得る。天然の粘土系およびゼオライト系の吸着材の持つCs+吸着能に匹敵する人工ゼオライトを形成し得る可能性が示された。.
4. 久場 隆広, 下水道資源を利活用するための技術と社会システムに関する調査検討に関する小委員会
下水道資源の利活用に資する技術開発促進検討業務 報告書
「3.4 セシウム吸着剤としての下水汚泥溶融スラグの利活用」
, 土木学会環境工学委員会, 2017.03, 本研究では、下水汚泥溶融スラグの成分および磁性分離能、賦活化処理の際の条件、共存イオンがCs+吸着能に及ぼす影響を実験的に検討した。
1) 成分の異なる5種類の下水汚泥溶融スラグを用いてCs+吸着実験を行うことで、スラグ成分の違いによるCs+吸着能への影響について検討した。その結果、成分の異なるスラグを同じ条件下で賦活化処理を施すことで、全てのスラグの単位質量当たりのCs+吸着量が大幅に増加した。これは、スラグ表面を熱アルカリ処理することで、その表面の一部にゼオライトが形成されるためである。しかしながら、スラグ中のSiとAlの比率、また、SiとAlに対するCaの含有量が、形成されるゼオライトの量や質に影響を及ぼし、吸着量に差が生じた。
   スラグ中に含まれるFe2O3の含有量が同程度であったとしも、その種類により磁石での分離率が異なる。α- Fe2O3を多く含むスラグは磁石での分離率が低いものと思われる。Cs+吸着後に磁石でスラグを回収することが困難なものもあった。一歩、γ- Fe2O3多く含むと考えられるスラグではCs+吸着能も高く、かつ、磁性分離も可能であった。
2) スラグAを用いて、様々な条件下で熱アルカリ処理を施した後にCs+吸着実験を行い、スラグの表面処理条件がCs+吸着能に及ぼす影響について検討した。その結果、スラグAに熱アルカリ処理を施すことで、単位質量あたりCs+吸着量は大幅に増加し、最大のもので吸着量が約18 [mg/g] に達した。この増加の要因は、熱アルカリ処理によってスラグ表面にゼオライトが生成されたためであると推察された。また、スラグAについては、熱アルカリ処理の際にSiO2添加量を変化させても、Cs+吸着量への影響は小さった。しかしながら、NaOH濃度を増加させると、Cs+吸着量は増加し、NaOH濃度が1 [mol/L] の時に吸着量が大幅に増加した。加熱温度120℃と80℃で熱アルカリ処理を施したスラグのCs+吸着量を比較すると、120℃で処理したスラグの吸着量が相対的に大きかった。スラグAについては、加熱温度120℃、NaOH濃度1 [mol/L] の条件下で賦活化処理を施すことで、約18 [mg/g] のCs+吸着能が得られた。
3) Cs+溶液中 (初期Cs+濃度10 mg/L、0.075 mmol/L) に陽イオンを共存させた条件下で吸着実験を行い、共存する陽イオンがCs+吸着に及ぼす影響について検討した。その結果、他の陽イオンがモル濃度比で1~10倍程度添加された場合、Cs+吸着率は90%以上となった。しかしながら、モル濃度比で100倍となるように過剰に陽イオンを添加した場合、Cs+吸着は阻害された。特に、K+による阻害で吸着率は約50%に、NH4+による阻害で吸着率が約59%に低下した。実際の廃水や水環境中の陽イオンの種や存在量によっては、Cs+吸着能の低下を考慮する必要がある。.
5. 久場 隆広, 下水道資源を利活用するための技術と社会システムに関する調査検討に関する小委員会
下水道資源の利活用を推進するための調査検討業務 報告書
「3.4 Heatphos法による下水汚泥からのリン回収 ~熱抽出されたポリリン酸によるMAP形成~」
, 土木学会環境工学委員会, 2016.03, 活性汚泥から抽出したPoly-PにMAP 法を適用した場合のMAP 形成能を実験的に検討し、以下の結論を得た。
1) 薬剤添加によって白いフロック状の沈殿物が生じた。沈殿物を光学顕微鏡で観察したところ、多数の結晶物が確認された。また、MAP 形成後に加熱処理水に残留するT-P、NH4+-N、Mg 濃度を測定した結果、顕著な減少が全ての成分で生じていたため、結晶物はMAP であると判断した。そのMAP がポリリン酸から形成されたものであるかを調べるため、各溶液に残留するPi、 Poly-P 濃度を測定し、MAP 形成前の濃度と比較した結果、Poly-P の大幅な減少が確認された。そのため、Poly-PからのMAP 形成が可能であることが明らかとなった。
2) Poly-PのMAP 形成能を評価するため、Piの割合が多い溶液とPoly-Pの割合が多い溶液のT-P 回収率、Mg 回収量を比較したところ、Poly-Pの割合が多い溶液の方がT-P 回収率が約7% 高く、Mg 回収量が1/ 2 程度少ない結果となった。したがって、活性汚泥からPoly-Pを抽出することは、リン回収率を向上させ、同時に、マグネシウム薬剤の添加量削減に有効である。.
6. 久場 隆広, 排水からの農業資源および電気エネルギーの回収に関する研究, 土木学会環境工学委員会、「都市のグリーンイノベーションの実現に向けた新たな下水道システムの構築に関する調査業務」小委員会, 2012.03, 1)研究テーマ名(仮で結構です)
「排水からの農業資源および電気エネルギーの回収に関する研究」

2)キーワード
 高度下水処理、リン回収・循環資源化、ヒートフォス法、濃度差発電

3)目的
 富栄養化防止の観点から下水の高度処理が進められているが、それに加えて、下水に含まれる農業資源として有望な物質を回収することによって、下水道を介して都市とそれを支える農業地域間での農業肥料資源を循環化させることも、今後、求められるに違いない。様々なリンの回収法が提案されており、当研究室ではヒートフォス法に注目しているが、様々な金属イオンなどが溶解している実排水の場合には、効率的なリン資源の回収の上ではまだまだ多くの課題が残されている。
 資源の回収に加えて、安価で簡易な下水の高度処理技術が開発されれば、下水などからの電気エネルギー回収が可能な新規の技術開発にもつながる。
 本研究では、下水の高度処理と同時に農業資源の回収のための要素技術の開発・改良や、濃度差発電に必要となる下水の高度処理技術と云った要素技術の開発を目指す。

4)方法(詳細な内容は結構ですが、どのような情報、実験、現地調査などをもとに研究を行うか)
・事例研究、資料解析(糸島地域および福岡都市圏でのリンの回収・循環化の状況調査とその評価。液肥の利用などの福岡県大木町の取り組みの調査など。)
・ヒートフォス法によるポリリン酸回収率の改善手法の検討(福岡市西部水処理センター余剰汚泥を用いた九大学内での室内実験)
・濃度差発電に必要となる下水高度処理技術の検討(まみずピア (海水淡水化施設) に設置されている濃度差発電プラントからのサンプル分析・調査研究、福岡市西部・東部・西戸崎・和白水処理センター内の各種高度処理施設からのサンプル分析・調査研究、コスト試算)

5)期待される成果
・リン鉱石の埋蔵量がゼロである我が国において、農業資源としてのリンの下・排水からの回収・資源化ポテンシャルの解明
・都市とそれを支える農業地域間での農業資源の循環を促進するための下水道システムの新たな役割の提案
・濃度差発電に必要な下水の高度処理技術の開発

6)スケジュール
最終年度の本調査業務では、(1)ジルコニウム担持竹炭によるリン回収の可能性、(2)ヒートフォス法による実下水からのポリリン酸回収・農業資源化の効率化、および、(2)濃度差発電システムに要求される下水高度処理のコスト試算、を行う予定である.
7. 久場隆広・井芹寧・ハオ愛民, 『大井貯水池に発生したアオコの原因究明とその発生抑制について』受託研究成果報告書
, 2012.03.
8. 久場隆広, 下水道を介した農業資源・エネルギーの回収に関する研究, 土木学会環境工学委員会, 2011.03.
9. 久場隆広(分担翻訳)、大垣眞一郎 監訳委員会委員長, 『水再生利用学 ~持続可能社会を支える水マネジメント~』、「第19章 再生水の工業利用」, 技報堂出版、pp.863-913, 2010.11.
10. 久場隆広, 下水道を介した農業資源・エネルギーの回収に関する研究, 土木学会環境工学委員会, 2010.03.
11. 久場隆広, 汚泥発生量抑制型高度下水処理システムからのリンの回収技術の開発, 土木学会環境工学委員会, 2009.03.
12. 久場隆広, 『道路排水が水環境に与える影響の実地調査とその影響評価手法の開発』報告書, 社団法人九州地方計画協会 公益事業支援事業, 2008.04.
13. 久場隆広, 汚泥発生量抑制型高度下水処理システムからのリンの回収技術の開発, 土木学会環境工学委員会, 2008.03.
14. 久場隆広, 『閉鎖性水域の富栄養化防止のための高効率窒素・リン同時除去法による下水処理』報告書, 21世紀COE, 2007.12.
15. 久場隆広, 書評「活性汚泥モデル ─ ASM1, ASM2, ASM2d, ASM3 ─」(国際水協会・生物学的廃水処理の設計および運転を支援するための数学モデルに関するタスクグループ 編集  味埜俊 監訳), 水環境学会誌, Vol.28、No.7?、2005, 2005.07.
16. T. KUBA・M. van Loosdrecht・J.J. Heijnen, Delft STOWA report: Biological Phosphate Removal under Denitrifying Conditions, NOVEM No.351230/1110 & STOWA (Foundation for Water Research) - RIZA (Institute for Inland Water Management and Waste Water Treatment) No.RWZI 2000-3234/5, 1996.01.
17. T. KUBA・M. van Loosdrecht・J.J. Heijnen, Delft final report: Biological Phosphorus Removal from Waste Water by Anaerobi-Anoxic or Anaerobic-Aerobic Sequencing Batch Reactors, NOVEM (Netherlands Agency for th Environment and Energy) No.51120/1610, 1992.01.

九大関連コンテンツ

pure2017年10月2日から、「九州大学研究者情報」を補完するデータベースとして、Elsevier社の「Pure」による研究業績の公開を開始しました。