九州大学 研究者情報
研究者情報 (研究者の方へ)入力に際してお困りですか?
基本情報 研究活動 教育活動 社会活動 病院臨床活動
神田橋 忠(かんだばし ただし) データ更新日:2023.11.27





ホームページ
https://kyushu-u.elsevierpure.com/ja/persons/tadashi-kandabashi
 研究者プロファイリングツール 九州大学Pure
電話番号
092-642-5888
取得学位
医学博士
専門分野
麻酔・蘇生学、周術期管理医学、周術期循環制御医学、医療情報学
活動概要
研究:
2004年に九州大学病院 手術部助手に採用されて以降、当院にて手術を施行される患者の周術期の安全に寄与する管理方法の検討を行ってきた。
●周術期における患者の安全な循環・および体液管理に関する検討:
・新たに導入された技術であるレーザーによる前立腺切除手術システムにおいて、使用する灌流液の変更に伴って患者に生じうる合併症に違いがあることが分かってきたため、その合併症を未然に回避、または症状軽減のために必要とされる輸液の種類を検討した。
・心臓血管外科手術においては、周術期の心機能評価のために心拍出量測定は欠かすことのできないモニターと考えられるが、現在はそれを連続的に測定することができる。しかしながら、従来使用されてきた冷水注入法による測定も同時に施行されている。冷水注入のためには氷水が必須であるが、感染予防の観点からは氷水の準備は望ましくない。そのため、常温水を注入することでも臨床的に妥当な測定結果を得られることを実証した。これは現在の当院手術室で標準的に施行されている方法となっている。
・周術期においては、可能な限り多くのモニタリングを行う方が患者の安全な管理に寄与しうることは自明であるが、反面、モニターには侵襲性の高いものも多く、モニタリングそのものが患者の安全を阻害する可能性があることもまた事実である。心臓血管外科手術において近年開発された低侵襲の心拍出量測定モニターが、患者の急激な循環変動に追随して、臨床的に妥当な患者状態評価に寄与しうるかどうかの検討を行った。この結果の妥当性は現在では広く知られており、低侵襲な周術期患者管理に大きく寄与している。
・心臓血管領域に問題を抱える患者は必ずしも心臓血管外科手術のみを受けるわけではない。そのような場合にいかに安全に患者管理を行うかは、現在においても議論のある部分であり、今の常識が後年覆されることは珍しくなく、新たな知見が得られた際にはガイドラインの改定が行われる。米国のガイドラインが改訂された場合にもいち早くそれを本邦の医師に周知するのも、患者安全に広く寄与するものであり、これまでも複数回米国ガイドラインの紹介を行ってきている。
・循環系の特殊合併症を有していても、それがガイドラインに十分な記載のない症例も存在する。大量出血が予想されるまれな疾患を併発している患者の循環を管理する方針に関して、これまで帝王切開術、肝臓移植術、後腹膜腫瘍摘出術などを検討・実施してきた。
・大血管手術において、しばしば術後に痙攣様の不随意運動を認めることがあり、一過性のものや、持続的に発生して恒久的な障害を残してしまうものなどさまざまである。そのため、そのリスク因子の検討や予防法、早期発見と対処法の創出は周術期の患者安全に大きく寄与することが考えられ、現在も継続して手術室でその検討を行っている。
・非可逆的心機能障害を抱える患者に対する心臓移植療法はすでに十分確立されてはいるものの、ドナーの数が極めて限られるため、必要とする患者のすべてが希望する時期に移植手術を受けられるわけではない。そのため、「つなぎ」の医療として左心補助装置植え込み術が開発され、これまで当院でも数多くの患者が当該手術を施行され、移植待機となっている。心機能が極めて重篤な状態である患者に行う手術のため、その安全な周術期管理には特に注意を払う必要がある。日に日に技術向上する補助装置に見合った形での周術期管理方針の改善を図っている。
・腎臓移植手術においては、移植臓器再灌流時に適切な前負荷と血圧が重要であるが、それをいかにして実現するかに関しては一定の方針がなかった。そのため、当時の移植外科のリーダーと協力し、術前の患者状態評価に基づく輸液・輸血・体液管理、および手術中の目標血圧とその実現方法に関して方針を検討・立案・実施して、満足する成果を上げた。この方針は現在の手術室においても基本的に受け継がれている。

●薬剤投与における誤薬や合併症、および請求漏れを一元的に回避するシステムの検討:
・手術室では数多くの薬剤が使用されており、その大半が静脈内投与である。そのため、誤薬は時として患者に重篤な合併症を引き起こすことが危惧される。しかしながら、投薬は極めて切迫した緊急性のある状況で行われることも多く、わずかな時間のロスも患者生命の危機に直結する懸念があるため、ダブルチェックなどが十分に行えていないのが現状である。患者の安全を広く担保しつつ、投薬に関する効率よい周術期管理を実施するためにはシステム的な対応が最も確実と考えられる。そのため、今使用した薬剤の種類を自動的に判読し、その内容を視覚・聴覚に強く訴えうるシステムの構築を目指している。薬剤アンプルの自動判定システムは実現できており、誤薬を予防するために薬剤ラベルの印刷システムや、現在使用中の自動麻酔記録との連携の技術的可否についても確認はできた。今後は音声情報としてもこれを出力することで、システム画面を視認できない位置にいるそのほかの医療従事者にも薬剤の種類が伝わり、疑似的なダブルチェックシステムとして機能することができるかどうかを検討する予定である。また、読み取ったアンプル情報を維持システムと連携することにより、現在一部は手入力となっている薬剤請求の自動化も見込むことができると期待する。

2010年 九州大学病院 メディカル・インフォメーションセンターに配置替えとなり病院情報システムの開発・メンテナンス業務にも携わっている
●九州大学病院情報システムプロジェクト
・2010年よりメディカル・インフォメーションセンターに所属し、プロジェクトに参加。
・2013年、ベンダー変更を伴う病院情報システム更新プロジェクトの中心的メンバーの一人として参画し、大きなトラブルなく導入・稼働を成功させた。現在もシステム障害の監視やユーザーからの要望の取りまとめなどを行って、必要と思われる改修を検討、病院情報システムベンダーに指示している。
・2015年、副センター長就任
・2019年1月更新の新病院情報システムプロジェクト責任者として円滑な更新・稼働を実現し、その後も新たな機能追加に関して詳細な要件定義等の検討を行っている。
・2020年9月に発生した九大病院診療部門システムトラブルに際し、各診療科担当者とそれぞれのベンダーを交えて現状の把握と解決策を検討・提示、早期の業務継続とデータ復旧を概ね実現した

教育:
手術室管理と医療情報管理の双方を熟知するものとして、それぞれの分野に関する学生指導を行っている。
・手術室における患者安全管理・評価項目に関する学生教育。
・麻酔科所属の初期研修医および専攻医に対する、安全な周術期管理方針の検討と立案に関する教育。
・手術室内に導入されているIT機器の紹介と、その活用方法の現状の紹介に関する学生講義。
・侵襲医学分野を担当し、手術侵襲と生体防御バランスを図る周術期管理医学における術前評価の内容とその重要性に関する講義。

九大関連コンテンツ

pure2017年10月2日から、「九州大学研究者情報」を補完するデータベースとして、Elsevier社の「Pure」による研究業績の公開を開始しました。