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片岡 啓(かたおか けい) データ更新日:2023.09.27

教授 /  人文科学研究院 哲学部門 インド哲学史


大学院(学府)担当

学部担当



ホームページ
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就職実績-他大学
就職実績有, 東京大学附属東洋文化研究所 2001.4-2004.3
オーストリア科学アカデミー 2004.11-2005.3
取得学位
博士(文学)
学位取得区分(国外)
なし
専門分野
インド哲学、インド学、インド宗教、サンスクリット学、仏教学
外国での教育研究期間(通算)
02ヶ年00ヶ月
活動概要
インド亜大陸において3000年にわたって蓄積されてきたインド古典群の中でも、サンスクリット語で書かれた哲学・神学・宗教・思想・解釈学文献を主に扱う。仏教論理学・認識論も含む。「インド哲学」の研究者である。特に聖典解釈学ミーマーンサーの専門家として成果を発表してきた。

インド内外での写本調査、写本に基づくテクストの校訂、訳注研究に基づく思想史研究、さらに、テクストに展開される思想の研究に従事する。サンスクリット会話を通じてインドの伝統的な教学スタイルに精通するとともに、西洋の文献学の手法によりテクストの地道な校訂作業に時間を費やしている。

文部省アジア派遣留学制度による二年のインド留学期間中、ポンディシェリーのN.S.ラーマーヌジャ・タターチャーリヤ教授およびマドラスのJ.ヴェンカタラーマン教授に師事、サンスクリット語ミディアムでの個人指導を通じて、バラモン伝統教学としてのミーマーンサーを親しく学んだ。Michael Coulson Research Fellowとしてオックスフォード大学ウルフソン校滞在中は、A.サンダーソン教授、H.アイザクソン博士(当時)、D.グッドール博士ら専門家が集う中、シヴァ教を中心に多くのサンスクリット文献にあたった。客員研究員としてペンシルヴァニア大学では、言語学・文法学のG.カルドナ教授、インド文学・タントラ密教のH.アイザクソン教授の薫陶を受ける事ができた。またオーストリア科学アカデミーの研究員としてクマーリラ研究に従事する傍ら、E.シュタインケルナー教授をはじめとする仏教論理学・認識論の最前線に居合わせる事ができた。2002年トランシルヴァニア(ルーマニア)、2004年ザコパネ(ポーランド)、2007年ポンディシェリ(インド),2016年フアヒン(タイ)で行われたサンスクリット強化合宿においてはインド哲学部門を担当、イギリス、ドイツ、ハンガリー、ルーマニア、ポーランド、フランス、アメリカ、オランダ、ロシア,イタリア,韓国,中国,日本の若手サンスクリット研究者との交流に指導的な役割を果たした。2011年ジャワ(インドネシア),2013年シェムリアップ(カンボジア),2014年天人峡(北海道),2019年シェムリアップ(カンボジア)で行われた国際サンスクリット合宿(International Intensive Sanskrit Retreat)にも参加している。また、タイ国マヒドン大学主催になる春季の国際研究集会Ratnakara Reading(講師:ハルナガ・アイザクソン教授)には、2017年, 2018年, 2019年に連続参加し、後期唯識についても知見を広げつつある。

現在、九州大学を拠点とし多方面の専門家と密接なコンタクトを取りながら、自身の研究を進めている。地元福岡においては、南アジア学会九州支部の活動、また、宗教研究ネットワーク(現在の西日本宗教学会)に積極的に参加。また、助手を務めた東京大学東洋文化研究所の同僚、研究員を務めていたウィーンのアカデミー現所長ほか同僚と密接にコンタクトを取りながら、自身の研究方向を見定めている。フランス極東学院ポンディシェリ校で行われた国際ワークショップに積極的に参加、シヴァ教研究の最新の成果を吸収するとともに、海外の若手研究者との交流をはかっている。なお極東学院所長のグッドール博士は、2008年、片岡を受け入れ責任者として九州大学に招聘し、福岡・京都・東京の三カ所にてワークショップ・講演会を開催した。京都大学の横地優子准教授、ディワーカル・アーチャーリヤ講師、東京大学の永ノ尾信悟教授との研究協力のもと、シヴァ教研究の最前線について、学内外に広く成果発信を図ることが出来た。また成果については『南アジア古典学』三号に発表した。2009年度は、おなじく片岡を受け入れ責任者としてオックスフォード出身の若手研究者であるワトソン博士(インド哲学、シヴァ教神学の専門家)を九州大学に招聘し、共同研究を行った。成果は『南アジア古典学』五号に発表した。また2011年度は、片岡を受け入れ責任者としてローマ大学の若手研究者であるフレスキ博士(インド哲学、ミーマーンサー聖典解釈学の専門家)を招聘し、共同研究を行った。成果は『南アジア古典学』第七号に発表した。2012年4月ウィーンのオーストリア科学アカデミーにおいて行われた国際アポーハ・ワークショップにおいては、自身が校訂した『論理の花房』「アポーハ章」(Kataoka 2008, 2009)が底本として用いられた。またワークショップ参加にあわせて,アレックス・ワトソン博士と共同で英訳を準備した。成果はウィーンから公刊されている。また、米国ニューメキシコ大学のジョン・テイバー教授との共同研究を進めている。中間的な成果として個別論文を共著で公刊している。また、共著の本が、2021年4月に、オーストリア科学アカデミー出版局より刊行された。オーストリア科学アカデミーのエリーザ・フレスキ博士、アレッサンドロ・グラヘリ博士が主催する国際研究会には、2017年、2018年、2019年と続けて参加している。成果の一部がすでにBloomsburyより出版されている。

思想史の分野においては、これまで、根本経典から復注釈に至る初期ミーマーンサー聖典解釈学史の発展を跡づけてきた。現在は、学派横断的に、聖典解釈学ミーマーンサー、仏教論理学、インド論理学ニヤーヤ、三つ巴の論争における思想発展・展開の跡を追っている。聖典解釈学においては、注釈者シャバラ、復注釈者クマーリラを主対象に据える。その成果は『古典インドの祭式行為論』(山喜房),『ミーマーンサー研究序説』(九州大学出版会),Kumarila on Truth, Omniscience, and Killing (オーストリア科学アカデミー)の三著書に結実している.哲学と同時にインド特有の解釈学・祭式分析にまで関心を持ち、著書・論文にその成果を公表してきた。インド論理学ニヤーヤでは9世紀後半にカシミールで活躍した学匠ジャヤンタを中心にすえ、写本に基づきながら地道に校訂を進めるとともに、同時に和訳を発表してきた。哲学文献のみならず、ジャヤンタの戯曲『宗教の空騒ぎ』の部分和訳も公表しえた。仏教論理学の分野ではミーマーンサーを攻撃批判するダルマキールティの初期文献を中心に、関連する文献を読み進めている。成果としてジネーンドラブッディ作『量集成註』冒頭の和訳を『南アジア古典学』2号に公開しえた。

またこれまでの仏教論理学研究が内的発展の記述に終始していたのに対して,バラモン教との論争・交渉史に注目,聖典解釈学者クマーリラの批判を契機とした仏教側の対応に着目,仏教とバラモン教との論争史を明らかにしつつある.論考は聖典論・仏陀論・意味論・推理論・認識論・論理学と多分野に渡っている.近年では仏教の意味論である「アポーハ論」を,ニヤーヤ学派のジャヤンタの視点から研究している.すでに『論理の花房』の校訂本を作成し,四つの論文で公刊した.また和訳を順次作成し,九大文学部の紀要で発表している.

思想としてはインド古典に展開される創造論・認識論・聖典論・言語哲学・神秘主義・儀礼解釈・行為論・真理論・殺生論を主要テーマとしている。「インドにおける宗教権威」をめぐって論考を発表している。非人為の永遠なるヴェーダ聖典、全知全能なる主宰神、全知なる仏陀といった宗教権威に関連する諸問題について、インドにおける伝統と思弁の葛藤を描き出すことを目指している。

またインド全国に散らばる写本図書館を訪ね、地道にサンスクリット写本調査を続けている。聖典解釈学のサンスクリット写本を中心に、これまでに多くの写本を複写・撮影した。最近では、聖典解釈学のみでなく、論理学・シヴァ教文献にも調査の網を広げている。カルカッタ、ベナレス、アラハバード、ラクナウ、ジャンムー、マドラス、タンジャーブール、マイソール、トリヴァンドラム、カトマンドゥ他の図書館を訪ね、写本複写を蒐集している。これまでにシャバラ注、クマーリラ注、スチャリタ注、ジャヤンタ作『論理の花房』および『論理の蕾』、シャーリカナータ作『無垢眼薬』の校訂テクストを公表した。『東洋文化研究所紀要』にデーヴァナーガリー印字によるサンスクリット原典校訂を発表すると同時に、『哲学年報』(九州大学文学部)においては、対応する和訳を発表している。北はカシミールのシャーラダー文字写本から、南はケーララのマラヤーラム文字写本まで、幅広く資料を扱うよう心がけている。

学部・大学院においてインド哲学史、および、サンスクリット・テクストの講読を担当。インド文学・インド哲学文献に繰り広げられる豊潤な世界を学生と共有しながらインド古典文献の読み方を指導するとともに、次代のインド学・仏教学研究者の養成に携わっている。干潟龍祥(『本生経類の思想史的研究』)、松濤誠廉(『東京大学附属図書館所蔵梵文写本解説目録』)、伊原照蓮、戸崎宏正(『仏教認識論の研究』)名誉教授ら九州大学インド哲学史学科諸先達の伝統を受けながら、同僚の岡野潔教授とともに「写本に基づく文献学」に努めている。岡野が仏教学を片岡がインド学を分担し、いずれも写本に基づきながら仏伝文学からインド論理学まで幅広く仏教文献・サンスクリット文献を渉猟する能力を培う場を提供している。哲学文献のみならず文学も含め幅広くサンスクリット文献の講読ができるよう講読テクストの選択を行っている。文学・論書・タントラの三分野をバランスよく読むよう心がけている。日本学術振興会・特別研究員については,2015-17年にPD一名,2016-17年にDC2一名を受け入れ,2017-19にPD一名とDC一名,2023-25にPD一名を受け入れている.また、2017-19年には、Robert Ho Family Foundation財団の奨学金による韓国人ポスドク研究者を一名、2018-19年には、仏教伝道協会の奨学金を受けてロシア人留学生を一名、2022-2024年には大使館推薦の日本政府国費による香港人留学生を一名、受け入れている.海外からの訪問研究員の受け入れにも積極的に取り組み,2019年度,2023年度に各一名,韓国人研究者を受け入れている.

研究室においては、広島大学インド哲学研究室との共催で毎夏、西日本インド学仏教学会を開催し、研究者の発表・交流の場を設けている。また、2006年に『南アジア古典学』第一号を創刊、岡野潔教授とともに雑誌の編集担当・発刊責任者として、ひとり九州大学に限らず全国のインド学・インド仏教研究者に広く発表の場を提供している。英語著書(2011年オーストリア科学アカデミーより刊行)による印度学仏教学への貢献により,2015年9月19日,日本印度学仏教学会より「鈴木学術財団特別賞」を受賞した。国際的なインド哲学雑誌であるJournal of Indian Philosophyのeditorial boardメンバーであるとともに、Indo Iranian Journal, Philosophy East and West, Journal of American Oriental Societyからの査読依頼も多数こなしている。また、これまでに、Ashok Aklujkar、George Cardona、John Taber教授の記念論集に寄稿している。

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