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鷲崎 俊太郎(わしざき しゅんたろう) データ更新日:2023.11.22

准教授 /  経済学研究院 産業・企業システム部門 産業システム


著書
1. 鷲崎 俊太郎, 近世都市の土地市場と不動産経営, 岩波書店, 深尾京司・中村尚史・中林真幸編『岩波講座 日本経済の歴史』第2巻近世,岩波書店,2017年,第3章「農業と土地用益 経済成長と社会的安定の相克」における第2節を担当,176-187, 191-192頁, 2017.08, 本著では,主として数量的把握を中心とした近世都市の土地市場と不動産経営を概観し,とくに江戸を事例とした町屋敷の賃貸・売買市場,および家質(近世都市の土地不動産を抵当にとって地貸・店貸経営の収益を基準に利息を取る金融業)をめぐる抵当史上の存在と関係を述べている。
 これまでの研究・分析の結果,町屋敷売買システムの形成は,江戸の不動産市場へ多様な投資資金を誘導させ,抵当市場との連動による売買市場を活性化させたと考えられる。また,土地資産の流動化という観点においても,町人のほか,地借・店借層や江戸近郊の百姓層が江戸の土地市場へ町屋敷を所有すべく参入し,他方でそれを容易に処分して退出していた。
 ただし,広域的な地方居住者が江戸の土地市場に参入したわけではなく,土地市場の空間的限界が大きく立ちはだかっていたのも,また事実である。この点は,同じ要素市場であっても,労働市場とは全く異なっていた。
 江戸の土地市場は,今日の証券化のように,小口資金を呼び込む仕組みを欠いていたため,近世の資産市場としての限界が生じていたが,他方で,「持込家質」という手段が町屋敷購入者の自己資金準備率を軽減させる役割も果たしていた。
 町屋敷経営の収益率は,貸付や家質の利子率と比べて低利だったが,一般の大名貸が幕府法定の保護を得られなかったのに対して,町屋敷の所有権である沽券や,沽券を担保とする金融は,大坂-江戸間に弁済の相違こそあれ,町奉行所に保護されていた。したがって,利回りの差は幕府司法保護の有無によるリスク・プレミアムによって説明することができると考えている。.
2. 鷲崎俊太郎訳, マリー・コンテ=ヘルム「戦後の日英投資関係」,杉山伸也・ジャネット・ハンター編『日英交流史4経済』所収, 東京大学出版会, 303~332頁, 2001.06.

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