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市橋 隆自(いちはし りゆうじ) データ更新日:2023.11.27

准教授 /  農学研究院 環境農学部門 森林環境科学


学会発表等
1. 市橋 隆自, 冷温帯樹木とつる植物の茎通導・水利用の季節性, 日本生態学会, 2022.03, 温帯生つる植物の通導・水利用の特性、特に冬期の寒冷に対する反応は、つる植物の世界的な地理分布パターンにも深く関わる重要形質と目されているが、情報は極めて少ない。本研究ではつる植物の通導特性を探る第一歩として、九州大学宮崎演習林に優先する樹木9種 [環孔材種:ミズナラ、クリ。散孔材・根圧種(春の展葉前に幹に開けた穴から水滲出を確認):ミズキ、ミズメ、ヒメシャラ、アカシデ、コハウチワカエデ。散孔材・根圧未確認種:ブナ、ホオノキ]、つる植物4種(環孔材種:フジ、ツルウメモドキ。散孔材・根圧種:サルナシ、マツブサ)を対象に、茎切片の通導度と、茎基部の樹液流速の測定を行い、その季節変化の様子を解析した。

夏期の茎通導度(specific conductivity)は、樹木では2~6 kg s-1 m-1 MPa-1の範囲であったが、つる植物の環孔材種は30 kg s-1 m-1 MPa-1前後、散孔材種は80 kg s-1 m-1 MPa-1前後と、極めて高い値を示した。つる植物は遠位の葉面積が大きいため、葉面積あたりの値を計算すると、環孔材つる植物では樹木と同程度、散孔材・根圧つる植物種では2倍程度となり、樹木との差は小さくなった。冬期(2月初旬)、つる植物と散孔材樹種は通導機能をほぼ完全に失っていた一方、散孔材樹種の多くは、夏期の50%以上の通導機能を維持していた。展葉期(5月)、樹木・つる植物とも環孔材種では未だ通導度が低かった(夏期の10~20%程度)一方、その他の種では、夏期と同様の通導機能を示した。樹液流の測定からも同様の季節変化の様子が確認された。以上、これまでのところ、夏期の高い茎通導度など、つる植物に共通する特徴が見つかる一方、寒冷に対する反応において、環孔材的に当年の導管のみに通導を頼るか、展葉前に根圧を用いて通導を回復させるかという、異なる対処の仕方が樹木とつる植物の双方に存在することが明らかになった。.
2. 市橋隆自, 木本性つる植物の蒸散特性:森林の水・炭素動態への影響, 第22回九州大学演習林研究発表会, 2020.01.
3. Ryuji Ichihashi, Effects of thinning on canopy transpiration of a dense Moso bamboo stand, Long-term monitoring for forest environment under the changing climate, 2019.12.
4. 市橋隆自, 木本性つる植物の蒸散特性:森林の水・炭素動態への影響, 日本生態学会, 2019.03.
5. 明坂将希,菱拓雄,市橋隆自,田代直明,榎木勉,鍛冶清弘,長慶一郎,山内康平,緒方健人,佐々木寛和,扇大輔,村田秀介, 九州山地において標高に沿った樹木の分布パターンの変化を制限する要因:微地形と土壌特性が及ぼす影響, 第21回九州大学演習林研究発表会, 2018.12.
6. 菱拓雄,鍜冶清弘,長慶一郎,山内康平,緒方健人,佐々木寛和,扇大輔,村田秀介,明坂将希,市橋隆自,榎木勉,田代直明, 宮崎演習林全域におけるトビムシ群集の多様性調査〜標高・地形・土壌・植生の影響〜, 第21回九州大学演習林研究発表会, 2018.12.

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