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井口 千雪(いのくちちゆき) データ更新日:2024.04.09

准教授 /  人文科学研究院 文学部門


著書
1. 井口 千雪, 『三國志演義成立史の研究』, 汲古書院, 2016.03,  第一章~第七章は博士論文に加筆と修正を加えた内容となっており、前言・序章・結語は書き下ろしである。
 元末明初(明の建国は1368年)、戯曲作家の羅貫中によって編まれたとされる『三國志演義』であるが、その執筆プロセス、成立過程、羅貫中の詳しい足跡、執筆に至った動機などは謎に包まれていた。
 序章では、現存する明代版本の体裁・刊行者・刊行経緯・読者層を考察し、当時の『三國志演義』受容の様相、読者層拡大の経緯などを明らかにする。
 次に第一章では、版本間の本文の異同の問題と、素材論の観点から、『三國志演義』の成立史についておおまかな見通しを提議する。
 第二~四章では、現存する早期の版本群の本文を詳細に校勘して、どの本文が「原演義」の様相を残しているのか、それにどのような意図で書き換えが加えられたのかを考証する。特に、これまでの研究で軽視されてきた「劉龍田本」などが、本文変容の過渡期の様相を伝えているという新事実を指摘する。
 第五~七章では、執筆者が何を素材としてこの小説を構成したのか、具体的な執筆プロセスを考察する。『演義』のあらすじは、元の至治年間(1321―1323)に建陽(現福建省南平市建陽区)の虞氏から出版された『全相平話三国志』を概ね踏襲している。また、西晋の陳寿著『三国志』(および東晋末劉宋初・裴松之注を含む)、北宋の司馬光著『資治通鑑』・南宋の朱熹著『資治通鑑綱目』といった史書の記述・文面が多く利用されており、作者が執筆の際にこれらの書物を参考書として用いていたことがうかがわれる。
 結語では、これまで漠然としていた『三國志演義』の成立史について、段階的な成立過程を経ていること、多くの人間が様々な意図を以て手を加え、現在のような形になったと総括する。そして、そのような発展の原動力となった「大衆の読書に対する希求」や書坊の役割について論じる。.

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