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循環器における生体反応の制御の観点から、各種の病態(動脈硬化症、腫瘍、糖尿病など)における血栓形成や血管新生、細胞相互作用について血管細胞生物学的な解明を目指している。
これまでに、動脈硬化巣の血栓原性の解析で、動脈硬化血管壁の外因系血液凝固による過凝固状態を明らかにし、壁内へのフィブリンの染み込みや、抗線溶因子であるリボプロテイン(a)の局在から、線溶能(フィブリン溶解能)の後退も証明した。また、重篤な血栓性疾患として知られる播種性血管内凝固(DIC)の発生機序について、LPS誘発DICモデルとして、ウサギShwartzman反応(感染症末期のLPS血症に極めて類似)を解析し、同様に外因系血液凝固の重要性と、その充進にIL-1β.IAが関与しうる事を明らかにした。また、新たな血栓治療薬としての外因系凝固の阻害剤である組織因子経路インヒビタ−(TFPI)の可能性を示唆した。
この他、血管内皮細胞機能の一つとして、血管新生に注目し、内臓の低酸素と潰瘍性病変に続発する血管壁内血管新生は、動脈硬化血管壁の破綻の原因ともなり、血管壁の障害、修復機序、とりわけ動脈硬化の発生進展、血栓形成への深い関与を提言した。また、センダイウイルスの膜融合活性を利用したHVJリポソーム遺伝子導入術を利用した実験を試行中で、現在モデル動物の構築に成功している。今後、病態発生の解明や、新たな予防法、治療法の開発に道を開くべく意欲的に研究をすすめている。
さらに、VEGFが胎盤の血管形成に、視力低下に関わる糖尿病性の網膜内血管新生に重要な役割を果たす事を明らかにし、c-jun、c-fosなどの転写因子やステロイドが、その発現調節に関与している事を示している。
血液凝固因子を前駆体タンパクから成熟タンパクへと変換するプロセッシング酵素として単離したウサギ肝臓ミクロソ−ムメタロエンドベブチダ−ゼについては、cDNAクローニングを行いその構造を明らかにし、その局在より、生理活性ペプチドの代謝に関わる全く新規のメタロエンドペプチダ−ゼである事を明らかにし、器官の発生や成熟や病態にかかわる生理活性ペブチドの活性制御の新たなる経路を示唆し、腫瘍の増殖など、先の血管新生や遺伝子導入など、基礎から治療応用を視野に入れた総合的な研究教育への展開を計ろうとしている。