研究者情報データベース内の全文からキーワード検索を行います。
就職実績有, 2009年7月1日-2012年7月31日 順天堂大学大学院医学研究科産婦人科講座 准教授
近年、胎児組織と同様に、皮膚・筋肉・血液・神経など様々な成体組織にも自己複製能と多分化能を持つ幹細胞の存在が報告されている。 最近、癌組織の中にも、自己複製能と多分化能を持つCancer stem-like cells(CSC)の存在が報告されている。このCSCを含む癌細胞の細胞集団は、含まない細胞集団に比べ、悪性度が高く、腫瘍抵抗性や転移能に関与すると考えられている。
いくつかの組織や癌では、幹細胞マーカーが報告されているが、マーカーが不明な組織および癌組織の幹細胞を同定する手段として、DNA結合色素Hoechst33342で細胞を染色し、UVで励起させた際、450/600nmの波長を暗く発現している細胞集団side population(以下SP細胞)を分離する方法が用いられている。このSP細胞は様々な組織や癌組織で幹細胞として機能することが報告されている。また、SP細胞はATP結合カセット輸送蛋白 ABCG2/Bcrp1を発現していることが知られており、この蛋白の作用でHoechst33342が排出されるのと同じ機構で抗がん剤も細胞から排出されることによりSP細胞は抗がん剤抵抗性になるのではないかと考えられている。
我々は正常子宮内膜にSP細胞が存在し、長期増殖能や腺上皮や間質への分化能を持つ前駆細胞の特徴をもつこと、子宮体癌細胞株Hec1細胞からSP細胞を分離し、その生物学的特性を解析し、分化マーカー発現低下、長期増殖能、自己複製能、運動能亢進、造腫瘍能亢進、多分化能獲得など幹細胞様の性質を持つことを明らかにした。現在子宮体癌SP細胞を用いて、癌幹細胞を標的とした新規治療法の開発を試みている。
また、産婦人科学、女性医学、周産期医学全般にわたり、臨床および基礎研究・臨床研究を行っている。