九州大学 研究者情報
研究者情報 (研究者の方へ)入力に際してお困りですか?
基本情報 研究活動 教育活動 社会活動
谷 文都(たに ふみと) データ更新日:2024.04.15



大学院(学府)担当

理学府 化学専攻 構造有機化学講座

学部担当

理学部 化学科 化学 学部4年生の卒業研究指導


電子メール *Internet Explorerではメールアドレスが表示されないため、他のWebブラウザ(Chrome、Safari等)をご利用ください。
ホームページ
https://kyushu-u.elsevierpure.com/ja/persons/fumito-tani
 研究者プロファイリングツール 九州大学Pure
http://tajigen.cm.kyushu-u.ac.jp/
所属研究室のホームページ .
就職実績-他大学
就職実績有, 東京農工大(非常勤講師)、
福岡大学(非常勤講師)、
大分大学(非常勤講師)、
甲南大学(非常勤講師)
就職実績-民間機関等
就職実績有, 東洋紡績株式会社
1992年4月より1995年10月まで
取得学位
博士(理学)
学位取得区分(国外)
なし
専門分野
有機化学
ORCID(Open Researcher and Contributor ID)
0000-0002-9166-2127
外国での教育研究期間(通算)
00ヶ年00ヶ月
活動概要
様々な芳香環を縮環させることにより構築される特異なπ電子系を有する新しい機能性有機化合物の合成に取り組んだ。そのような機能性有機化合物を合成する基本骨格の代表例として、ナフタレンジイミド(NDI)およびペリレンジイミド(PDI)などの芳香族イミド類が挙げられる。NDIやPDIは、電子アクセプター、n型半導体、可視領域の発色団および超分子構造体の構成要素などとして、多くの注目を集めている。一方、NDIよりも拡張されたπ電子系を持つテトラセンジイミド(TDI)も優れた電子・光物性が期待されるが、合成方法が限られているために、その報告例は非常に少ないのが現状である。そこで、ナフタレンの構造異性体である10π電子系のアズレンをTDIの周囲に4個縮環させ、π電子系が大きく拡張された新しいTDI誘導体(TA-fused TDI:Tetraazulene-fused TDI)を設計し、効率良く合成することに成功した(Chem Plus Chem, 2016)。TA-fused TDIは以下のような優れた特性を有する。1)800から1400 nmの近赤外領域における光吸収、2)狭いHOMO-LUMOギャップ(約0.9 eV)、3)4段階の可逆な還元が可能、4)大きな二光子吸収断面積(2080 GM @950 nm)、5)n型半導体特性(1.7×10-4 cm2V-1s-1)などである。また、1,1’ービアズレン骨格から構成されるヘリセン構造がチオフェンと融合した分子を合成し、光学活性化合物として得た。その一電子酸化反応によって生成した、空気中でも安定なカチオンラジカルを固体として単離し、結晶構造解析にも成功した。光学活性なヘリセンのラジカル種の報告例は極めて少なく、上記の安定ラジカルは高い独自性を有していると言える。以上の結果からわかるように、アズレンが縮環した特徴的な拡張π電子系を有する有機化合物は興味深い電子・光物性を備えることが明らかとなり、今後の展開が期待される。

大きなπ電子系を高次に制御して、配列させることによって、形成される空間の構築と物性評価の研究を行っている。カーボンナノチューブが特異な物性を示すことに触発されて、ナノスケールのチューブ状の集合体(構造体)を合成化学の手法を用いて、構築することが盛んに行われている。また、チューブ状構造体は、物理学や化学の分野だけでなく、生物学の分野においても見られ、チューブリンというタンパク質が形成するチューブ状構造は、細胞内で、物質の輸送を担っている。つまり、チューブ状構造は、物理学(カーボンナノチューブ)、化学(合成分子チューブ)、生物学(チューブリン)という科学全般に亘る普遍的かつ非常に重要な構造モチーフであるといえる。小分子を構成単位として、チューブ状集合体を作る化学的手法はいくつかあるが、最も代表的なものは、剛直な環状分子に自己集合を媒介する置換基を導入して、環状分子を積層する方法である。一方、ポルフィリンやフラーレンは大きなπ電子系を持つ多機能な分子として知られ、超分子化学の分野でビルディング・ブロックとしてしばしば用いられている。そこで、ポルフィリンを構成要素とするチューブ状集合体を構築し、フラーレンとの複合化を目指した。ポルフィリンやフラーレンを含むナノチューブは、それらの電子的、光化学的特性を活用した機能性の高いナノチューブを与えることが期待される。一般的に言うと、大きなπ電子系を高次に制御して、配列させることによって、形成される空間は特異な性質を備え、新規の電子状態や機能発現の場を産み出す。その一つの具体例として、ポルフィリンから形成されるチューブ状集合体がフラーレンを取り込み、1次元に配列させる空間(チャネル)を提供することを実証した。高次に配列制御された有機π電子空間は、基礎的な学術的見地から応用面まで大きな重要性と可能性を秘めており、この分野の研究に主に合成化学的手法を用いて携わっている。フラーレン類は、適度な還元電位と電子移動反応での再配列エネルギーが小さいこと、また三次元的に広がったπ電子系に由来する高い電子移動度をもつことから、電子アクセプターあるいはn型有機半導体として、有機太陽電池や分子エレクトロニクスの材料への展開が期待されている。これらの応用のためには、フラーレン類の精密な配向制御が求められるが、フラーレン類の秩序性高い配列制御は容易ではなく、特に無置換のフラーレンの場合は困難である。われわれは、この問題を解決するためのひとつのアプローチとして、ホスト・ゲスト化学の手法を用いる方法を検討してきた。自己集合性の官能基を導入したホスト分子は、秩序性の高い集合体を与える。次に、ホスト分子とフラーレンの複合体においても、同様の自己集合を起こさせると、ホスト分子の組織体のなかにフラーレンが配列されている複合化集合体が形成され、結果としてフラーレンの配列制御が実現される。本研究では、このような集合体として、ナノチューブ構造に注目し、その内部空間にフラーレンを直線的に配列させることを目標にした。小分子の自己集合によって、ナノチューブ構造をつくる方法として、最も簡便なのは、剛直な環状分子に自己集合性の官能基を導入して、積み重ねる方法である。そこで、われわれは、フラーレンに対する高い親和性を示すポルフィリンの環状二量体を用いることとし、さらに自己集合性の官能基として、ポルフィリンの二つのメソ位にピリジル基を導入した。さらに、ポルフィリンは、可視部に強い光吸収をもち、励起状態は電子ドナー性を有することから、本研究のポルフィリンナノチューブ中にフラーレンを精密に配列させた集合体は、ポルフィリンからフラーレンへの光誘起電荷分離状態の生成と電荷輸送の両方が効率よく進むことが期待される。この二つのプロセスは、高効率の光電変換デバイスのための最も重要な条件であり、本研究の複合化集合体は光電変換デバイスの基盤材料としての可能性を有しているといえよう。環状ポルフィリン二量体(Cyclic Porphyrin Dimer : CPD)のニッケル錯体(Ni2-CPD)およびフリーベース体(H4-CPD)とフラーレン類(C60, C70, PCBM ([6,6]-Phenyl-C61-butyric acid methyl ester), Li+@C60など)からなる複合体の集積構造および光・電子物性について検討してきた。C60やPCBMを包接した複合体の結晶構造において、ポルフィリンのナノチューブ中でフラーレンを直線的に配列させることができた。また、同じ二量体のフリーベース体のC60やC70との複合体では、フラーレンのジグザグ配列が得られた。これらの複合体の結晶では、秩序性高いフラーレンの配列に由来する高い電荷移動度を実現することができた。また、ポルフィリンからフラーレンへの光誘起電子移動(電荷分離)も観測され、とくに、電子アクセプター性が高いリチウムイオン内包フラーレンの複合体では、サブミリ秒にも達する非常に長寿命の電荷分離状態が実現できた。現在、精密な分子デザインに基づいて、フラーレンへのより高い親和性と自己集合ナノチューブ形成能力を有する新しい環状ポルフィリン二量体を合成し、フラーレンとの複合体の超分子構造や物性を調べている。さらに、高分子材料や無機材料との融合によって、デバイス構築へと展開する試みも始めている。

酸素分子を2電子還元することにより高原子価の酸化種を生成し、各種の有機化合物に一原子酸素を添加する酸化反応を触媒するチトクロームP-450の活性中心は1)鉄ポルフィリンにチオレートが軸配位する、2)酸素分子結合側に水素結合ネットワークを有する、という特徴的な構造をしている。普遍的に存在する酸素分子を酸化剤とし、副生成物は水だけという非常にクリーンな反応であり、かつ飽和炭化水素、ステロイド等を基質とする位置・立体選択性の非常に高い酸化反応である。現在の化学的知見では、全く再現できない極めて優れた触媒反応系であり、将来、高度な分子認識を供う有機合成を開拓する上で規範となるものである。しかし、この酵素による酸素分子活性化等の機構には未だ不明な点が多くある。酵素活性中心の構造的特徴1、2)を考慮に入れた精密な分子設計に基づく合成モデル錯体を用いて、酸素分子活性化の機構を解明する研究を行っている。

これらの研究には理学府化学専攻の大学院生も参画しており、研究活動と平行してそれらの大学院生の研究指導を担っている。

九大関連コンテンツ

pure2017年10月2日から、「九州大学研究者情報」を補完するデータベースとして、Elsevier社の「Pure」による研究業績の公開を開始しました。