九州大学 研究者情報
発表一覧
安田 章人(やすだ あきと) データ更新日:2018.06.15

准教授 /  基幹教育院 人文社会科学部門


学会発表等
1. 安田章人, 研究紹介, 八王子東高等学校講演会, 2017.11, 現在の研究内容とともに、高校生に対して今後の進路選択の参考になるように、これまでの経験について紹介をおこなった。.
2. 安田章人, スポーツハンティングとはなにか?-狩猟を通して、人間を考える, 伊丹北高等学校講演会, 2017.11, スポーツハンティング(Sport hunting)とは、なんでしょうか?人間が野生動物を狩猟する目的とは、肉や皮などを手に入れるためだけではありません。仲間と獲物を協働して捕らえること、誰も獲ったことのない種類や大きな獲物を手に入れること、都会の喧噪を離れ、愛銃を持ち自然のなかで入ることなどに楽しみを感じ、狩猟をおこなっている人もいます。スポーツハンティングとは、特にこの娯楽性を主目的とした狩猟のことです。
スポーツハンティングは、アフリカを筆頭とした経済的に貧しい発展途上国でおこなわれています。そして、そこに生息する珍しい野生動物を手に入れようと、先進国から裕福なハンターたちがやってきます。彼らによってもたらされる莫大な観光収益は、途上国の重要な外貨獲得源になっているとも言われています。
しかし、「スポーツハンティングは、楽しみのために野生動物を殺すことである」と聞いて、どのように感じましたか?「残酷だ」と眉をひそめた人も多いでしょう。実際、欧米諸国を中心に、スポーツハンティングに対する反対運動もおこっています。
それでは、我々はスポーツハンティングをやめるべきでしょうか?それとも推進すべきでしょうか?「娯楽のための狩猟」を事例に、我々人間という存在について考えてみたいと思います。
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3. 安田章人, 「スポーツハンティングの『公共化』と『私有』:カメルーンと南アフリカ共和国の事例」, 「野生生物と社会」学会, 2017.11, スポーツハンティングとは、レクリエーショナルハンティング(recreational hunting)や、トロフィーハンティング(Trophy hunting)とも呼ばれ、娯楽観光とトロフィーの獲得を主な目的とした狩猟である。アフリカ大陸は、植民地時代からスポーツハンティングのメッカとされ、現在も毎年18,000人以上のハンターが、主に欧米諸国からやってくる。
なかでも、南アフリカ共和国は、アフリカ諸国のなかでもっとも多くのハンターの来訪を受ける、アフリカ最大のスポーツハンティング産業国である。また、カメルーンは、西・中央アフリカのなかでは、最大規模のスポーツハンティング観光を推進しており、サバンナ性と森林性の両方の野生動物を狩猟できる国として有名である。
しかし、この2つの国では、スポーツハンティング観光を取り巻く事情は大きく異なっている。具体的には、スポーツハンティングの規模とシステム、土地所有形態、周辺村落との距離などである。では、90年代以降、住民参加型保全モデルが台頭したことは、両国のスポーツハンティング観光にどのような影響を与えたのか。本発表では、それぞれの地域でのスポーツハンティングの実態と、地域社会との関係について報告する。
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4. 安田 章人, 「南アフリカ共和国におけるスポーツハンティング」, 日本アフリカ学会 第54回大会, 2017.05, 本発表は、南アフリカ共和国におけるスポーツハンティングの実態を明らかにし、カメルーンにおける事例との比較をおこない、スポーツハンティングにおける持続可能性を考察することを目的とする。
南アフリカ共和国では、カメルーンとは異なり、①私有地において、フェンスで囲まれた閉鎖空間でスポーツハンティングがおこなわれ、②動物ごとにかかる料金を支払うのみで狩猟をおこなうことができることが明らかとなった。また、カメルーンの事例と同様に、③地域住民による「密猟」が土地所有者との間でコンフリクトとして問題視されていた。
南部アフリカでのスポーツハンティングは、持続可能な利用を基盤としており、いくつかの事例で成功しているとされる(Adams and Hutton 2007)。しかし、Ranch内の野生動物は果たして「野生」なのかという疑問とともに、カメルーンと同様に、密猟による地域住民との軋轢が生じていることから、社会的な観点を含めた持続可能性に対する考察が必要であると考えられる。.
5. 安田 章人, アフリカにおけるスポーツハンティングと地域社会の『持続可能性』, 「野生生物と社会」学会 第22回大会, 2016.11, アフリカ大陸の「発見」以来、世界中の人びとが、アフリカ大陸に生息する様々な野生動物に魅了されている。それは、カメラをもったサファリ観光客だけではなく、ライフルをもったハンターも、である。スポーツハンティング、いわゆる娯楽観光を主目的とした狩猟は、北米や中央アジア、ヨーロッパなどでもおこなわれているが、特にハンターたちに、今も昔も「メッカ」とされているのが、アフリカ大陸である。世界的な狩猟者団体であるSafari Club Internationalの会員の1/3が、1年から1年半の間に1度は、スポーツハンティングのためにアフリカを訪れているという(Jackson 1996)。現在、アフリカ諸国のうち、半数以上の国でスポーツハンティングが公式におこなわれ、それらの国々に、主に欧米諸国から毎年1万8500人以上のハンターが訪れる(Lindsey et al. 2007)。
しかし、植民地時代において入植したヨーロッパ人や近代的な銃を手に入れた現地の人びとの手によって、大領の野生動物が狩猟され、いくつかの種が絶滅あるいは激減した。1900年に、アフリカに生息する野生動物の保全を考える世界会議が初めて開催されて以来、人類は、過去の反省のもと、野生動物を絶滅させずに保全利用する方策を模索し、実践してきた。そして、現在、スポーツハンティングは、「血なまぐさい、時代遅れな娯楽」という批判にさらされつつも、「狩猟規則や捕獲枠などによって管理されたスポーツハンティングは生態的な持続可能性を保障し、それによって生み出される経済的便益は地域の経済発展の原動力と住民による保全活動へのインセンティブとなる」という評価を受けている。
しかし、スポーツハンティングが地域社会に与える影響とは、このような肯定的なものだけであろうか。「スポーツハンティングによって野生動物は絶滅しないし地元の人々はお金をもらって幸せ」というユートピアは、現場ではどれほど実現し、人々に共有されているのか。本発表では、まずカメルーンおよび南アフリカ共和国でのスポーツハンティングの実態を紹介し、野生動物保全/保護および地域社会にもたらす功罪を指摘する。そのうえで、人と野生動物の関係における「持続可能性」に関する議論に資することを目的とする。

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6. 安田 章人, 「『獣害問題と地域社会』~狩猟を通して考える人と野生動物の関係~」, 福岡ロータリークラブ, 2016.10, 近年、イノシシやシカなどの野生動物が引き起こす問題、いわゆる獣害問題に注目が集まっている。人と野生動物の軋轢とも言えるこの問題は、農作物や植林への食害、列車や車との衝突、咬傷事故など、多岐にわたっている。農作物被害に関して、たとえばイノシシによる被害額は、2014年度には全国で50億円以上にのぼり、福岡県内では約4億円に達している。
では、なぜ獣害問題は、近年、深刻化しているのか。これには2つの原因があると思われる。
第一に、被害を起こす野生動物の数が増えたことである。イノシシとシカは、1978年から2014年にかけて、それぞれ生息地を1.7倍と2.5倍に拡大している。これは、温暖化によって積雪量が減少し、栄養状態がよくなったという自然的要因と、過疎高齢化による農山村の低下という人為的要因が考えられる。
第二に、人が獣害問題を問題として深刻に受け取るようになったことである。明治期の乱獲が起こって以降、人々はイノシシやシカは奥山の生き物という認識をもってきた。このような認識をもつ現代の人々は、野生動物が人里に接近している状況を異常事態とみなし、獣害問題として深刻視していると考えられる。
獣害問題に対しては、侵入防止柵の設置、狩猟者の新規獲得、有害鳥獣捕獲による捕獲頭数の増加、ジビエ(野生鳥獣の肉)の消費促進といった対策が、行政を中心にとられている。
しかし、獣害問題には、「増えているから獲る。もったいないので食べる」という対策のみでは、解決が難しいと思われる。なぜならば、獣害問題の原因は、野生動物の数が増えたということだけではなく、人々の意識や心の問題でもあるためである。野生動物とその問題には、多様な主体がかかわっている。農業者、狩猟者、農協、猟友会、市、県、国、認定事業者として捕獲をおこなう企業、そして研究者などが挙げられる。獣害問題を社会的問題としてとらえるならば、このような多様なファクターが、地域社会にとって野生動物とはどのような存在なのか、どのように今後付き合っていくのかということを、中長期的かつ俯瞰的にも考える必要があると思われる。
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7. 安田 章人, 「『猪』観を考える:獣害問題の現場から」, マルチスピーシーズ人類学研究会, 2016.10, 猪は、古くから人間の生活圏と近い場所に生きる大型哺乳類である。近年、猪による農業被害や人的被害が、いわゆる獣害問題として問題視されている。そのなかで、猪は人間に危害を与える危険生物として認識されている一方で、ウリボウ(猪のコドモ)をキャラクター化したり、愛玩する事例もみられる。こうした人間の猪に対する多面的な見方は、狩猟者や農業者にも確認することができる。しかし、獣害問題の現場において猪と対峙する人びとと、都市部に住みメディアを通してしか猪との関係をもたない人びとの間には、同じ種間関係であっても異質性があるように思われる。本報告では、現場性に着目し、人と猪の関係をひもとくことを試みる。.
8. 安田 章人, 「野生動物との共存に迫る!」~狩猟を通して考える、人と野生動物の関係~, サイエンスカフェ@ふくおか, 2016.07, 最近、「獣害」や「ジビエ」という言葉を新聞やテレビで目にしませんか?
日本では、「増えすぎた」と言われるイノシシやシカが農作物を荒らすなど、いわゆる野生鳥獣問題が深刻化しています。
しかし、世界に目を向けると、野生動物の減少はいまだに切実で、危機に瀕する動物をどのようにして護るのかが議論されています。
われわれは、どのようにして野生動物と共存していけばよいのでしょうか?
この難題の鍵となる「狩猟」を通して、みなさんと考えたいと思います。.
9. 安田 章人, 「野生動物管理のための猟区がもつ可能性と課題-北海道・占冠村における猟区設定過程と地域社会の関係に対する分析から―」
, 環境社会学会 第53回大会, 2016.06, 近年、北海道において、エゾシカの個体数が急増しており、農林業被害や交通事故などの増加により人間社会との軋轢が深刻化している。このような軋轢に対して、近年、野生動物を食料資源だけでなく、娯楽観光やトロフィー(角などの狩猟記念品)の獲得を主たる目的としたレクリエーショナル・ハンティングのための狩猟資源として利用しようとする動きがある。そして、エゾシカと狩猟活動を科学的に管理し、「狩猟資源活用システム」(伊吾田 2008)を担う制度として注目されているのが、猟区である。
本報告では、2014年9月に猟区が設定された占冠村を事例に、猟区の設定過程および、猟区が持つ可能性と評価、そして村と地域住民の猟区に対する見解を明らかにし、自然資源管理の社会的側面に対する考察をおこなうことを目的とする。
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10. 安田 章人, 「カメルーンにおけるスポーツハンティング その光と影」, 筑後川水問題研究会, 2016.04, カメルーンにおけるスポーツハンティングが地域社会にもたらす社会的影響および、娯楽のために野生動物を狩猟することに対する倫理的考察について、講演を行った。.
11. Akito Yasuda, Recreational hunting in Cameroon:“Meat” or “Poison” for local community, Vth International Wildlife Management Congress, 2015.07, Recreational hunting is one of the oldest known tourism activities using wildlife. Leader-Williams (2009) defined it as the hunting where the hunter or hunters pursue their quarry for recreation or pleasure. Some researchers have suggested that controlled recreational hunting can benefit the development of local communities in Third world, thereby promoting the protection of wildlife resources as well as both ecological and economic sustainability. However, important debates remain regarding the social impacts of conservation and tourism on local communities.
This presentation aimed to introduce a social impact of recreational hunting on local community in Cameroon. Approximately two years of fieldwork, mainly based on interviews and observations, showed that recreational hunting in North Province, Cameroon generated tax revenues more than safari in National parks did. A part of economical benefits shared with local communities as profit sharing and employment opportunities. However, the local inhabitants were affected by regulations of their rights to use natural resources. Moreover, some villages experienced forced migration because of the beginning of hunting tourism in this area.
Recreational hunting brings to local community not only positive impacts such as profit sharing and employment opportunity, but also negative one as control of the livelihoods of local people and forced migration. Even if recreational hunting can play an important role in community conservation and wildlife management with its great economic benefit, the independence of local people and their connection with wildlife should be considered to re-conceptualize "Sustainability".
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12. 安田 章人, 狩猟と獣害 カメルーン, NPO法人アフリック・アフリカ特別講演/写真展「自然とともに生きる -アフリカにおける生業と生活-」, 2015.06, カメルーンにおける野生動物利用の実態と、それにともなう社会・文化的事象について説明し、人と野生動物の関係についての考察をおこなった。.
13. 安田 章人, 「護るために殺す? アフリカにおけるスポーツハンティングと地域社会」, 日本アフリカ学会第52回学術大会, 2015.05, [URL],
悠然とサバンナを歩くゾウ、アカシアの葉をはむキリン、咆哮を轟かすライオン。「アフリカの魅力的な野生動物を、一度は生で見てみたい」と思っている方も多いのではないでしょうか。また、こうした野生動物の保護は、半世紀以上前から声高に叫ばれてきました。
アフリカの野生動物を、どのようにして「護る」のか。 近年、その方法として注目されているのが、野生動物を娯楽のために「殺す」、スポーツハンティングという観光活動です。しかし、「護ること」と「殺すこと」は、どう両立するのでしょうか。また、そのスポーツハンティングが地域社会に与える影響とはどのようなものでしょうか。
本発表では、アフリカ中央部・カメルーン共和国の北部を事例に、スポーツハンティングと野生動物保全の関係、そして地域社会との関係について紹介します。そこから、アフリカにおける自然と人との共生の道について、みなさんと考えたいと思います。
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14. 安田 章人, 人と○○との関係を追い求めて, 第67回九大祭, 2014.11, 第67回九大祭特別講義「アフリカ研究へのいざない─自然と人間の関わりあいに学ぶ─」において発表した。これまで10年間にわたっておこなってきたカメルーンでのフィールドワークをもとにした研究活動の成果を、一般市民や学生にもわかりやすく説明し、アフリカ研究の魅力を伝えた。.
15. 安田 章人, スポーツハンティングに対する是非の判断―簡易講義を通した大学生の意識変化調査―, 「野生生物と社会」学会第20回大会, 2014.11, スポーツハンティング、いわゆる娯楽観光を主目的とした狩猟に対して、多くの人が否定的な感情をもつと思われる。しかし、スポーツハンティングには、経済や生態系に対して好影響を与えうるという肯定的な側面もある。また、スポーツハンティングをおこなう人が自分にとって親しい人か否かは、その是非を判断するうえで重要な因子となると考えられる。そこで本研究は、つぎの2点を検討することを目的とする。第1に、スポーツハンティングの肯定的および否定的な側面がその是非の判断に与える影響について、第2に、回答者にとって親しい人および知らない人がスポーツハンティングをおこなうそれぞれの場合を比較したときの、その是非の判断の変化量の差異である。われわれは、2つの大学において大学生178名に対して、スポーツハンティングに関する解説と、スポーツハンティングをおこなうことに対する是非を問うアンケートを交互におこなった。その結果、スポーツハンティングの肯定的な側面を知ることによって、それを容認する傾向が認められた。その傾向は、回答者が男性である場合、そして「知らない人がスポーツハンティングをおこなう」場合に顕著にあらわれた。.
16. 安田 章人, 護るために殺す?アフリカにおけるスポーツハンティングの「持続可能性」と地域社会-, ヒトと動物の関係学会月例会, 2014.10, カメルーンにおけるスポーツハンティングが地域社会にもたらす社会的影響および、娯楽のために野生動物を狩猟することに対する倫理的考察について、講演を行った。.
17. 安田 章人, Recreational hunting in Africa: “Meat” or “Poison” for local community
, XVIII ISA (International Sociological Association) World Congress of Sociology2014, 2014.07, Recreational hunting is one of the oldest known tourism activities using wildlife. Leader-Williams (2009) defined recreational hunting as the hunting where the hunter or hunters pursue their quarry for recreation or pleasure. Same as in colonial period, hunters, mainly from Europe and U.S.A., range over hill and dale in developing country to obtain trophy of big game and their pleasure.
Some researchers have suggested that controlled recreational hunting can benefit the development of local communities, thereby promoting the protection of wildlife resources as well as both ecological and economic sustainability. However, important debates remain regarding the social impacts of conservation and tourism on local communities.
This presentation aimed to introduce a social impact of recreational hunting on local community in Cameroon. Approximately two years of fieldwork, mainly based on interviews and observations, showed that recreational hunting in North Province, Cameroon generated tax revenues of approximately 0.9 million US dollars in 2009/2010, that is, 200 times as large as than safari in National parks did in the same year. A part of economical benefits shared with local communities as profit sharing and employment opportunities. However, the local inhabitants were affected by regulations of their rights to use natural resources. Moreover, some villages experienced forced migration because of the beginning of hunting tourism in this area.
Recreational hunting brings to local community not only positive impacts such as profit sharing and employment opportunity, but also negative one as control of the livelihoods of local people and forced migration. Even if recreational hunting can play an important role in community conservation and wildlife conservation with its great economic benefit, the independence of local people and their connection with wildlife should be considered to re-conceptualize "Sustainability".
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18. 安田 章人, アフリカ各国のゾウ害問題との比較検討:カメルーン, NPO法人アフリック・アフリカ設立10周年記念イベント「アフリカゾウとの共生をめざす『ハッピーハニーチャレンジ』-タンザニアゲストが語る獣害問題の現場」, 2014.06, NPO法人アフリック・アフリカ設立10周年記念イベント「アフリカゾウとの共生をめざす『ハッピーハニーチャレンジ』-タンザニアゲストが語る獣害問題の現場」として、カメルーンにおける像による農作物被害と観光狩猟の関係について、一般市民を対象に講演をおこなった。.
19. 安田 章人, カメルーン・北部州における遊牧系フルベによる放牧とスポーツハンティングをめぐるコンフリクト, 日本アフリカ学会第53回学術大会, 2014.05, 本発表では、カメルーン北部州における遊牧系フルベによる生業活動と、欧米人によるスポーツハンティング観光の対立の動向について報告する。
カメルーン北部および北西部では、遊牧系フルベあるいはプル(Puru)、そしてボロロ(Mbororo)と呼ばれる牧畜民が遊牧生活を営んでいる。カメルーン北部に住んでいる遊牧系フルベは、ジャフン(Jaafun)というサブグループに分類され、隣国ナイジェリアのカノ(Kano)周辺に住んでいたが、19 世紀にカメルーン北部へ移住したとされる(Pelican 2008)。
カメルーン北部州の西部にあるX村周辺には、乾季になると、水場と草を求めて、ウシを連れた遊牧系フルベがやってくる。2012年2月時点でX村周辺には、約15人の青年が数十頭のウシとともに、村周辺のサバンナで宿営していた。また、2002年頃からは、この地域にナイジェリアからの遊牧系フルベも流入するようになった。
一方、2000年にカメルーン政府によって、X村を含む約4万haがスポーツハンティングをおこなうための狩猟区に設定され、2009年にスペインからの観光事業者によって賃貸された。しかし、2009年12月から2014年2月現在までの間に、遊猟客が訪れたのは、わずか2回にとどまっている。
これは、遊牧系フルベによる放牧とスポーツハンティングが対立しているためである。ウシの群れは野生動物を駆逐してしまうほか、ウシペストなどの病気を野生動物に感染させる。また、遊牧系フルベは家畜を守るために、ライオンなどの肉食獣を射殺したり毒殺したりしている。
こうした遊牧系フルベとスペイン人観光事業者による土地をめぐる対立は、年々深刻化している。2014年2月の調査では、遊牧系フルベ自身が組織した団体が狩猟区内に、放牧地であることを主張する看板をたてていたことを確認した。また、この組織は、知事に大金を供与し、放牧地であることを認めさせているという聞き取りが得られた。この結果、狩猟区を管轄する省庁と、地方行政機関を管轄する省庁間の対立に発展しているという。また、遊牧系フルベは、国連により先住民に認定されており(Pelican2008)、今後、遊牧民による生業活動と、欧米人による観光活動をめぐる対立は、国内および国際的事情を含んだものへと発展する可能性があると考えられる。.
20. 安田 章人, 護るために殺す?-アフリカにおけるスポーツハンティングの「持続可能性」と地域社会, 環境社会学会第48回大会, 2013.12, 本報告は、カメルーン北部州におけるスポーツハンティング(娯楽観光のための狩猟)と地域社会の関係の実態を、「持続可能性」、「科学の権力性」、「植民地支配」、「経済的便益」、「主体性」というキーワードから分析することによって、野生動物保全をとりまく課題について考察することを目的とする。
スポーツハンティングとは、中世西洋社会において萌芽し発展したのち、植民地支配とともにアフリカにも導入された歴史をもつ活動である。現代において、娯楽観光のために野生動物を狩猟するスポーツハンティングは、「血なまぐさい時代遅れな娯楽」という批判にさらされている。しかし、一方で、「狩猟規則や捕獲枠などによって管理されたスポーツハンティングは生態的な持続可能性を保障し、それによって生み出される経済的便益は地域の経済発展の原動力と住民による保全活動へのインセンティブとなる」という評価を受けている。「護るために殺す」とは、「『持続可能性』を念頭に、野生動物を護り(保全し)、地域社会を護る(発展させる)ために、野生動物を観光目的で殺す」という論理である。
こうした文脈において、スポーツハンティングがおこなわれている地域に住む人々への社会的影響とは、概ね肯定的に捉えられている。それは、雇用機会や公共設備の恵与や利益分配という経済的便益の付与によるものである。しかし、スポーツハンティングが地域社会に与える影響とは、このような肯定的なものだけであろうか。「スポーツハンティングによって野生動物は絶滅しないし地元の人々はお金をもらって幸せ」というユートピアは、現場ではどれほど実現し、人々に共有されているのか。そして、「生態的な持続可能性と経済的な豊かさを保障する」とされるスポーツハンティングは、人と野生動物との共存をめぐる問題のための理想的な解決策なのであろうか。
本発表は、カメルーン北部州のA、X、Y村を事例として、スポーツハンティングが地域社会に与える影響を実証的に論じることで、スポーツハンティングにおいて謳われる「持続可能性」と「護るために殺す」という論理を問い直すことを目的とする。
カメルーン北部州におけるスポーツハンティングは、フランスによる委任統治時代以降、欧米の富裕層によって今日までおこなわれてきた。独立以降も、カメルーン政府は、 サファリに比べて300倍以上もの多額の税収をもたらすスポーツハンティングを、北部州に生息する野生動物管理のための資金供給源として重要視する政策をとってきた。その結果、スポーツハンティングによる税収は増額し、北部州におけるスポーツハンティングは自然保護行政を支える柱、そして政府およびヨーロッパからの観光事業者にとってのビジネスとして活発化していた。
A村の住民は、農耕、狩猟、漁労、採集を中心とした自然資源に、特に、日々のタンパク源として野生獣肉に強く依存していた。同時に、狩猟禁忌や民間説話、儀礼を通して、野生動物との間に精神・文化的な関係を築いていた。スポーツハンティングがおこなわれることによって、A村の人々の一部は、キャンプでの雇用によって現金収入を得るほか、狩猟区の借地料の分配を享受していた。しかし、雇用機会の恵与や借地料の分配は、A村の人々の間に等しく与えられていなかった。一方で、A村の住民による生業活動、特に狩猟区内外における狩猟は、政府と観光事業者によって極端に制限され、違法行為として逮捕と罰金による制裁が課せられていた。これに対して、農耕民であるA村の住民は不満や苦境を語り、逮捕される危険を冒しつつ、生活のために密猟活動をおこなっていた。これに対して、近年導入された「住民参加型保全」の論理に沿った政策が進められることによって、住民に対する利益分配などの拡充が進展していた。しかし、「地域住民による資源利用は非持続的である」という見解を根拠に、政府およびヨーロッパからの観光事業者による住民に対する生業制限は固持されたままであった。
X村およびY村では、2009年に狩猟区がスペインからの観光事業者に賃借され、スポーツハンティングによる観光開発がおこなわれようとしていた。 しかしX村の住民は、賃借した観光事業者の存在だけでなく、自分たちが住んでいる土地が狩猟区に設定されたことさえ知らされていなかった。そして、観光事業者が、その地域を歴史的に統治してきた王(ラミド)に要請することによって、好猟場とされた地域にあった2つの村は強制的に移住させられた。その結果、「義務」を意味し、「支配に対するあきらめ」という名前を冠したY村が誕生していた。この地域の狩猟区設定と賃借の過程の背景には、王(ラミド)、臣下(ワキリ)、村長(ジャウロ)という伝統的な権力構造が、観光開発および野生動物保全政策に利用されていた。
カメルーン北部州の狩猟区に住む住民にとって、スポーツハンティングが活発化し、身近になることで、「持続可能性」という「新しい」言説によって、狩猟制限や強制移住など、「古い」植民地主義的な制限が「新たに」彼(女)らの生活に押しつけられていた。それは、「護るために殺す」という論理に則すると、スポーツハンティングが殺していたものは、野生動物だけではなく、地域住民の主体性と生活基盤そのものを「殺していた」といえる。つまり、スポーツハンティングと地域社会の実態を分析することによって、その裏側には、植民地時代の「支配」や「開発」という看板は外されたものの、現代における「自然保護」や「持続可能性」という看板に掛け替えられただけであり、帝国主義的あるいは植民地主義的な様相は依然として現存することが明らかとなった。
現代のスポーツハンティングは、一部の研究者や政府によって、 野生動物保全と地域開発を両立させ、生態的な持続可能性と経済的豊かさを実現し、ユートピアを創造するものとみなされていた。ところが、カメルーン北部州の狩猟区に住む人々は、「科学の権力性」を孕んだ「持続可能性」、娯楽のための狩猟がもつ権力性、そして植民地時代から続くヨーロッパとアフリカおよび地域社会内の歴史的権力支配構造からなる、容易には抜け出せない重層的かつ複雑な状況に陥っていた。つまり、カメルーン北部州において、スポーツハンティングとは、偏重した「持続可能性」と重い歴史の「桎梏」という「邪気」を帯び、地域住民の生業や主体性、人々と野生動物の「かかわり」を斬り刻み、あるいは斬り落とし、彼(女)らをユートピアならぬ、ディストピアへと陥れた「魔剣」であったといえる。そのため、野生動物の保全管理における「持続可能性」において、これまでの生態学的・経済的な観点とともに、地域住民の生活実践や地域社会の歴史と内実に対する観点の必要性であると考える。
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21. 安田 章人, 野生動物管理と地域社会のインタラクション:北海道占冠村を事例に, 「野生生物と社会」学会第19回大会, 2013.11, 人が自然と共存していくうえで、「利用」や「保護」などを通じた自然資源管理の重要性は広く認識されている。また、自然資源管理の当事者として地域社会が位置づけられ、あるいは期待されることも多い。
しかし、そもそも、地域社会にとって自然資源管理の意義は決して自明のものではない。それが管理制度と社会の齟齬を生む原因にもなる。そのため往々にして、野生動物や森林、河川、湖沼など、生態系を資源として「利用」あるいは「保護」し「管理」する概念や方法は、それが存在する地域社会の外から持ち込まれることになる。
もちろん、地域社会がローカルな自然資源管理と切り離されてきたような、生態系や社会の現代的な歴史的な変化を踏まえれば、「外から持ち込まれるもの」そのものが悪いわけではない。しかし、それが地域社会の文脈、いわば地域社会におけるこれまでの「自然との付き合い方」のなかに位置づけることができなければ、地域社会が自然資源を利用し、持続的に管理する当事者となるのは難しい。また、そもそもの生態系と社会の変化によって生じている問題を解決することにつなげることも難しくなるだろう。
たとえば、増えすぎたシカやイノシシを「利用」するために、「ジビエ」として食肉利用することが全国的に進められている。ではこうして、ある種類の野生動物の身体を「利用」することは、地域社会にそれまであった「自然との付き合い方」とどのように すり合わせができ得るのだろうか。
こうした問題は、狭い意味での「野生動物管理」にだけ生じることではない。広い意味の自然資源管理全般において、それをいかにしてローカルな地域社会の文脈に埋め戻すことができるのかが、地域社会が持続的な管理の当事者となるかどうかのカギを握っている。そこで、本セッションでは、野生動物に限定せず、広く自然資源管理と地域社会の関係に注目し、それらを様々な地域で実証的に研究や実践を行ってきた報告をもとにして、自然資源管理と地域社会の関係性についての見取り図をつくるとともに、今後の展望について参加者とともに検討したい。
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22. 安田 章人, 『資源』、そして『敵』としての野生動物 カメルーン北部におけるスポーツハンティングと獣害対策の事例から, 「野生生物と社会」学会第19回大会, 2013.11, 野生動物とは、時として人々の生活に損害をもたらす「敵」であるとともに、スポーツハンティング、いわゆる娯楽のための観光狩猟における「資源」としてとらえることができる。本発表では、同じくスポーツハンティングによる観光活動の推進と、獣害対策の展開がみられる北海道の事例をとりあげつつ、カメルーン北部におけるグローバルな観光および野生動物保全行政と、地域社会における生業活動の関係を分析したい。それによって、外部社会とのインタラクションを含めて、野生動物と地域社会の関係のあり方について検討したい。.
23. 安田 章人, アフリカで『狩る』―娯楽のための狩猟の現状と地域社会―, 第1回狩猟サミット, 2013.10, どこまでも広がるサバンナ。地平線を覆うヌーの大群。アカシアの葉をはむキリン。
巨体を揺らすアフリカゾウ。咆哮するライオン。豊富な自然と動植物を有するアフリカ。
「野生動物の王国」であるアフリカで、一度は狩猟をしてみたいと思ったことはありますか?
植民地支配以来、アフリカは、西洋人にとってスポーツハンティングのメッカと
なってきました。その姿はいまも変わっていません。
そして、主に欧米からのハンターによるスポーツハンティングと、
そこに住む人々との関係は、多様に変化してきました。
アフリカでのスポーツハンティングはどのように生まれ、現在、どのように
おこなわれているのか?そして、地域社会との関係は?
写真やモノ(なにかはお楽しみです)をまじえ、これまで2年間、アフリカ中央部・
カメルーン共和国でおこなってきた調査結果をもとに、ご紹介いたします。.
24. Akito Yasuda, The Concept of Sustainability and the Social Influences of Sport Hunting on the Livelihoods of Local People: A Case Study of Bénoué National Park, Cameroon., Perspectives on human-nature relationships in Africa: Interrelations between epistemology and practice, 2012.09.
25. 安田 章人, 『マイナス』からの地域環境問題の解決―カメルーン北部における野生動物とスポーツハンティングをめぐって―, 総合地球環境学研究所・地域環境知プロジェクトキックオフ・地域環境学ネットワークシンポジウム, 2012.09.
26. Akito Yasuda, The village named "obligation": forced migration of local people for sport hunting in North Province, Cameroon, Society and Natural Resources, The 18th International Symposium on Society and Resource Management, 2012.06.
27. 安田 章人, 『護るために殺す?』-アフリカにおけるスポーツハンティングの課題と可能性-, ヒトと動物の関係学会第18回学術大会, 2012.03.
28. 安田 章人, スポーツハンティングがもたらす光と影-住民参加型保全、倫理的批判、そして地域社会-, 野生生物保護学会第17回大会, 2011.10.
29. 安田 章人, スポーツハンティングと住民参加型保全, 日本アフリカ学会第48回学術大会, 2011.05.
30. Akito Yasuda, The concept of sustainability and the social influences of sport hunting on the livelihoods of local people: A case study of Bénoué National Park, Cameroon, Society and Natural Resources, The 16th International Symposium on Society and Resource Management, 2010.06.
31. 安田 章人, アフリカにおける野生動物保全・管理について-スポーツハンティングの現場から-, 野生物保護学会青年部会 グリーンフォーラム3, 2010.05.
32. Akito Yasuda, The impacts of sport hunting on the livelihoods of local people: A case study of Bénoué National Park, Cameroon, コンゴ盆地森林居住民の文化と現代的課題, 2010.03.
33. 安田 章人, スポーツハンティングによる野生動物資源開発と地域住民-カメルーン共和国ベヌエ国立公園地域を事例として-, 平成21年度みんぱく若手研究者奨励セミナー, 2009.11.
34. Akito Yasuda, The Impact of Sport Hunting on the Local People in North Province, Cameroon, International Symposium Biological Conservation and Local Community's Needs Lessons from Field Studies on Nature-Dependent Societies, 2009.02.
35. 安田 章人, アフリカにおけるスポーツハンティングが内包する問題―「持続可能性」と地域住民―, 野生生物保護学会第14回大会, 2008.11.
36. Akito Yasuda, The significance of sport hunting in conservation policy and impact on the livelihood of the local people: A case study of Bénoué National Park, Cameroon, International Workshop Re-conceptualization of wildlife conservation: toward resonatable action for living people, 2008.08.
37. 安田 章人, 護るために殺す?―スポーツハンティングの可能性と問題―, 環境社会学会第37回セミナー, 2008.06.
38. 安田 章人, カメルーン北部州ベヌエ国立公園地区における自然保護計画と地域住民の関係―スポーツハンティングに関する依存と対立―, 生態人類学会 第11回研究大会, 2006.03.
39. 安田 章人, カメルーン共和国北部州、ベヌエ国立公園における野生動物をめぐる地域住民と狩猟区の関係, 日本アフリカ学会 第42回学術大会, 2005.05.

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