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中野 幸二(なかの こうじ) データ更新日:2024.04.19

准教授 /  工学研究院 応用化学部門 機能物質化学講座


大学院(学府)担当

工学府 応用化学専攻 分子情報システム

学部担当

工学部 応用化学科 機能物質化学クラス

その他の教育研究施設名



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電話番号
092-802-2890
FAX番号
092-802-2890
取得学位
博士(工学)
学位取得区分(国外)
なし
専門分野
分析化学
ORCID(Open Researcher and Contributor ID)
0000-0002-4860-5389
外国での教育研究期間(通算)
01ヶ年00ヶ月
活動概要
  電気化学、ナノサイエンス、バイオをキーワードに、従来の枠組みに囚われない分析化学について研究しています。

 ある物質が手許にあるとき、自然科学の立場からは、その中に含まれる元素や分子の種類・量が情報であるといえます。これを知るために、試料に光などのエネルギーを与えてその応答を観測したり、他の物質と反応させて都合の良いかたちに誘導したりする方法がとられますが、これは、分子レベルでの情報変換と位置づけることができます。電気化学の原理を利用した分析法は、このようなプロセスが電極(トランスデューサ)表面で一段階に起こる点が特徴です。トランスデューサの表面にいろいろな工夫を盛り込むと、例えば体温計を使うような簡単な操作で、複雑な試料のなかから望みの情報だけを把握するといった芸当もできるようになります。この意味で、最近は化学センサといった呼び名が定着しています。

 バイオセンサは、バイオ高分子の働きを積極的に利用した化学センサの一種です。酵素やタンパク質は、特定の分子を認識して結合したり、あるいは反応させたりすることができます。これをトランスデューサに組み合わせて利用すると、相手の分子を選択的に測定できるセンサができます。一方タンパク質のなかには、特殊な反応を促進したり(触媒といいます)、相手の分子と強力に結合したりするものがあり、これらの性質を上手く利用して、バイオセンサをつくる試みが行われています。さらにDNAやRNAなどの核酸、あるいはオリゴ糖についても研究が進むなか、これらのバイオ高分子を使ったセンサが開発されています。

 一方、最近のナノサイエンスの発展、なかでも走査プローブ顕微鏡の発明によって、原子や分子を直接観察して、物質の性質を原子的な尺度で解明することが可能になりつつあります。例えば、プローブ(探針)をピンセットのようにして原子や分子を意のままに動かしたり、プローブで物質の表面をスクラッチするとか、あるいはケミカルに反応させたりするなど、ナノの世界での基礎研究や応用も始まっています。このような「ナノテク」を化学センサやバイオセンサに適用することで、計測・評価の分野でも新しい研究のパラダイムが生まれるものと期待されます。このような観点から、いろいろなバイオ高分子に注目して、次のようなバイオセンサ・バイオデバイスの研究を行っています。

1. DNAバイオセンサ・遺伝子センサ
 核酸(DNA)は生命の遺伝情報を司る重要な物質です。また核酸そのものに加えて、他の分子との反応も遺伝現象と密接な関連があります。核酸によるプローブ表面の修飾という考え方をベースに、薬物や変異原性物質に対するバイオセンサ、特定の遺伝情報を担う遺伝子の電気化学計測について研究しています。さらに、走査電気化学顕微鏡イメージングを利用することで遺伝子分析のハイスループット化にも成功しています。

2. タンパク質修飾電極とバイオエレクトロケミストリ
 ほとんど全ての生命現象はタンパク質や酵素の働きによるものです。またその多くは、化学の立場からは酸化還元反応であるといえます。これに焦点を当てた研究がバイオエレクトロケミストリです。その一環として、タンパク質や酵素をプローブ表面に固定化した系で基礎研究を行い、バイオセンサへの応用に成功しました。最近では、固定化したタンパク質や酵素を1分子レベルで解像して観察することにも成功し、これらがトランスデューサ表面で大変秩序だった状態にあることを明らかにしました。

3. 電気伝導性DNAマテリアルとナノ・バイオ分析化学
 科学技術振興機構「さきがけ」プロジェクト研究として取り組みました。私たちは、DNA二重らせんの周囲を取り巻くようにredox性分子を配置・固定することで電気特性を劇的に改善できることを発見しました。実験は、原子間力顕微鏡を使って1分子レベルでDNAを観察し、このとき、局所領域で電流-電圧曲線を測定するものですが、単一のDNAレベルで約4 キロオームの抵抗率が達成できています。最近ではDNAデンドリマーやポリへドロン構造など、これまでにないDNA超分子構造体の開発に成功しています。従来は夢物語にすぎなかったDNAベースのナノサイズ分子素子が現実になりつつあります。

4. 化学合成タンパク質、人工核酸、および核酸酵素の創出と応用
 糖尿病の治療に用いられているインスリンだけでなく、比較的低分子量のペプチドが持つ特殊な薬効が注目を集めています。バイオ分析化学では、生物組織から酵素やタンパク質を抽出したり、あるいはタンパク質発現系を利用して改変体を作らせたりして、分析に用いられています。これに対し、私たちの戦略は、生物に頼るのでなく化学合成法を使って自在に合成することです。これまでに、細胞膜レセプタ(化学物質などに対する受容体)の機能部位を抜き出して合成し、匂い物質センシングに応用しました。最近では、カプサイシン(唐辛子の辛み成分)に対する世界初の人工ホスト分子を報告しています。また、タンパク質関連では最小のペルオキシダーゼであるマイクロペルオキシダーゼの完全合成に成功しました。さらに、代表的な人工核酸であるペプチド核酸と、マイクロペルオキシダーゼなど酵素触媒作用を持つペプチドのワンポッド合成にも成功し、モノリシックなペプチド核酸酵素ーPNAzymeを世界に先駆けて提案しました。最近では、ピロール(Py)とイミダゾール(Im)がアミド結合で結ばれたPy-Imポリアミドを用いる核酸の分子認識にも研究が展開しています。

5.カーボン量子ドットを用いる蛍光バイオセンシング・バイオイメージング
 炭素原子がつくるナノ材料として、フラーレン(サッカーボール分子)、ナノチューブ、あるいはグラフェン(シート状物質)が知られています。最近になり、数ナノメートルの不定形粒子が仲間に加わりました。カーボン量子ドットは強い蛍光性を示すので、これを蛍光センシングやイメージングに応用する研究をしています。

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