九州大学 研究者情報
発表一覧
後 信(うしろ しん) データ更新日:2020.07.23

教授 /  九州大学病院 医療安全管理部


学会発表等
1. Shin Ushiro, IHI-ISQua Session Big System Quality Strategy and Management-How Can We Build Culture of Safety? – “Case-Oriented” Experience on Quality and Safety Improvement in Japan, 36th ISQua Conference, 2019.10, Patient safety measures implemented at institutional levels was described quoting the example of Kyushu University Hospital. .
2. Shin Ushiro, IHI-ISQua Session Big System Quality Strategy and Management-Experiences from Japan on how culture is being addressed at a large system level, 36th ISQua Conference, 2019.10, The history of patient safety projects conducted in Japan at various levels over the last two decade was described..
3. Shin Ushiro, How can we manage novel & high-risk surgery and procedures for patient safety in Japanese University hospital group?, 36th ISQua Conference, 2019.10, In response to serial deadly accident in University hospital, the government issued an directive to obligate them to install a committee to review and follow-up novel procedure and surgery. It is described in detail in the lecture..
4. Shin Ushiro, Yuko Shiima, Zoie Wong , Classification Scheme for Incident Reports of Medication Errors, CSHI-2019-Zoie's conference, 2019.08, 医療安全管理の重要なツールであるインシデント報告は、医療法に基づく医療機関の安全管理の一環として、我が国においても定着している。一方で、報告される件数が多いことや、医療安全を担当する専門の職員を十分に配置できない状況がおおく見られること等から、報告書の分析を効率的かつ効果的に行うことは世界的な課題である。特に医薬品に関するインシデントについて、人工知能を活用した分析システムを開発している。.
5. 後 信, 患者安全における麻酔科医に期待される役割, 日本麻酔科学会 第66回学術集会, 2019.05, 医療の質・安全の国際潮流(世界麻酔医連合の活動等)、インシデント報告の重要性、専門に教育におけるインシデント報告の評価などについて解説した。.
6. 後 信, 患者安全の潮流と脳神経外科医に期待される役割, 日本脳神経外科学会コングレス, 2019.05, 医療の質・安全の国際潮流、インシデント報告の重要性、専門に教育におけるインシデント報告の評価などについて解説した。.
7. 後 信, 患者安全における麻酔科医に期待される役割, 日本麻酔科学会 第66回学術集会, 2019.05, 麻酔科医師が患者安全分野で活動している国際的な実績について解説した。.
8. 後 信, 患者安全の世界的目標と日本が果たすべき役割, 第13回 医療の質・安全学会, 2018.11, 第3回 世界閣僚級患者安全サミットの内容について解説した。.
9. 後 信, 医療の質・安全の確保に関する最近の話題, 日本臨床麻酔学会第38回大会, 2018.11, 患者安全・医療の質向上に関する国際潮流(世界閣僚級患者安全サミット)、ISQua年次学術集会の話題、日本医療昨日評価機構による医療事故情報収集等事業について解説した。.
10. 後 信, 質の高い医療・安全な医療の提供, 国際歯科医療安全機構 第3回学術研修会, 2018.10, わが国における医療の向上のために行われている全国規模の事業、質向上に関する国際潮流について解説した。.
11. 後 信, 医療の質・安全の確保において我が国の消化器外科医に期待される役割, 第73回 日本消化器外科学会総会, 2018.07, わが国における全国規模の院内インシデントレポートシステムの現況、英国NHSにおける医療安全対策について解説した。.
12. 後 信, 医療の質・安全の確保の現状と直面する課題について, 平成29 年度 日本小児外科学会医療倫理講習会 1730-1830(新潟 朱鷺メッセ), 2018.05, 院内インシデントレポートシステムの運用、医療事故調査について解説した。.
13. 後 信, 医療事故の報告・学習システムや無過失補償制度の効果について, 第118回日本外科学会定期学術集会, 2018.04, Incident reporting and investigation system and impact of no-fault compensation system..
14. 後 信, 医療事故、ヒヤリ・ハットの報告と調査, 第28回 日本気管食道学会認定 気管食道科専門医大会, 2018.03, 院内インシデントレポートシステムの運用、医療事故調査について解説した。.
15. 後 信, 医療事故の報告と調査について, 日本耳鼻咽喉科学会 佐賀県地方部会, 2017.12, 院内インシデントレポートシステムの運用、医療事故調査について解説した。.
16. 後 信, 安全管理のあり方, 第56回日本臨床細胞学会秋期大会, 2017.11, 院内インシデントレポートシステムの運用について解説した。.
17. 後  信, 医療事故の報告と調査, 日本外科学会第25回生涯教育セミナー(中国・四国地区), 2017.09, 我が国の全国的な医療事故報告システムの紹介と具体的な医療事故事例、再発防止策の提供や制度の活用例について述べた。.
18. 後 信, 医療事故の報告と調査, 第54回九州外科学会 第54回九州小児外科学会 第53回九州内分泌外科学会 第25回日本外科学会生涯教育セミナー(九州地区), 2017.05, Incident reporting and investigation system..
19. 後 信, 質の高い安全な医療の提供に必要な考え方と医療事故の調査を行う諸制度について, 第34回 日本呼吸器外科学会総会, 2017.05, Principle ideas necesary for medical professionals to provide safer healthcare and current systems on adverse event investigation..
20. 後 信, これからのリスクの高い外科医療の提供, 第117回 日本外科学会 医療リスク2(総論), 2017.04, Provision of high-risk surgery in society with increased interest on patient safety .
21. 後 信, 外科領域の医師に期待される高い医療安全の意識と実践, 第117回 日本外科学会 特別企画, 2017.04, High expectation on raising awareness on patient safety among surgeons.
22. 後 信, 医療事故の収集・分析による再発防止の取り組み, 第105回日本泌尿器科学会総会 卒後研修プログラム, 2017.04, Preventive activity through the nationwide adverse event reporting and learning system.
23. 後 信, 医療安全の国際潮流~海外の医療機関における医療安全対策について~
, 第10回医療の質・安全学会, 2016.11.
24. 後 信, 医療事故情報収集等事業における周術期の医療事故について, 日本麻酔科学会 九州麻酔科学会第54回学術集会, 2016.09, 医療分野の第三者機関である(公財)日本医療機能評価機構では、厚生労働省令等に基づき、2004年から全国規模の医療事故、ヒヤリ・ハット事例の収集事業である医療事故情報収集等事業を運営している。平成27年には周術期関連の事例を含め、医療事故3,600件、ヒヤリ・ハット30,000件が報告された。このように我が国では、思いがけず結果が悪かった事例を外部報告し、その内容や分析の結果を共有する医療安全文化が醸成されつつある。事業の成果として、四半期ごとに技術的テーマを取り上げて分析を行っているが、周術期の医療事故やそれに関連する内容としては、「インスリンに関連した医療事故」「手術中の砕石位に関連した事例 」「血液凝固阻止剤、抗血小板剤投与下での観血的医療行為に関連した医療事故」等がある。具体的には、「インスリンに関連した医療事故」では、「インスリン持続静注の指示を作成する際にインスリン製剤の単位を間違えたことから過量投与となった」事例、「手術中の砕石位に関連した事例 」では、「長時間の砕石位による手術の結果圧挫症候群や腓骨神経麻痺を生じた」事例、「血液凝固阻止剤、抗血小板剤投与下での観血的医療行為に関連した医療事故」では、「手術目的で入院後、ヘパリンの持続注入を行っていたが、前医で処方されていたプラビックスが除かれておらず手術が延期となった」事例等、様々な事例が報告されている。また、毎月提供している、医療安全情報では、「アドレナリンの濃度間違い」「電気メスによる薬剤の引火」「はさみによるカテーテル・チューブの誤った切断」等を取り上げてきた。このほかにホームページ上で、医療事故及びヒヤリ・ハット事例のデータベースを提供しており、事例の検索、閲覧が可能である。本抄録執筆時点で、約6万事例がデータベースに登録されている。データベースを活用し、医療事故事例を報告する際に選択する「関連診療科」として「麻酔科」が選択された事例を検索すると、600事例を超える。先述したテーマ分析のほかにも、周術期に関する個別の事例を検索することにより、 それらの事例や事例発生に至った背景要因、改善策について、様々な知見を得ることができる。講演では、これらの成果の紹介とともに、具体的な事例内容、分析結果から、周術期の医療安全確保のためのチーム医療における、麻酔科医やその他の医療者の役割について考察する。.
25. 後 信, 臨床細胞検査等における医療安全について, 日本臨床細胞学会講演, 2016.05, 日本医療機能評価機構が平成16年度に開始した医療事故情報収集等事業は、法令に基づく医療事故報告制度である。同事業では、全ての診療領域における手術や検査、投薬、医療機器等に関する様々な種類、及びヒヤリ・ハット事例から死亡事例までの様々な程度の事例の情報が報告されている。それらの医療事故やヒヤリ・ハット事例を包括的に取り扱うために、同事業では、情報収集、分析、改善策の提示や周知に関し、いくつかの特徴的な方法を開発、運用してきた。
医療事故の報告件数は毎年増加しており、現在、年間3,000件を超えている。これは運営の原則である非懲罰性や匿名性が効果的に機能しているものと考えている。次に情報収集に関しては、Web上のシステムに入力して報告するシステムを開発、運用している。そ内容は、選択項目のほかに、記述項目として、「医療行為の目的」「事例の概要(何が起きたか)」「背景・要因(なぜ起きたか)」「改善策(どのように改善するか)」等である。演者が所属する九州大学病院では、事例が発生すると、診療科や部署・部門と医療安全管理部とが事例について調査、分析しながら院内向けの報告書を作成する。その過程では指導医や専門医が関与することが多く、また、医療安全管理部との間で何度もやり取りが繰り返される。その内容を評価機構のフォーマットに当てはめて同事業に報告している。同事業では、報告された事例に関する疑問、質問がある場合、Webシステムを通じて医療機関に照会して追加情報を収集している。また原因となった業務環境や情報システムなどを確認するために、訪問調査も行っている。さらに、医療機関で医療事故調査報告書が作成された場合などはWebシステム上で追加情報を報告できる仕組みになっている。このように情報を収集、補充し、分析の基盤となるデータベースを充実している。
分析の方法として、数量的な分析とともに、質的な分析としてテーマを設定した分析を行っている。例えば、「カリウム製剤の急速静注に関する事例」「インスリンに関する事例」「放射線治療の照射部位の間違いに関連した事例」など様々な技術的なテーマを取り上げてきた。そして、情報提供の方法として、報告書や年報の他に、毎月1回の頻度で、分かりやすいイラストや表を用いた医療安全情報を提供している。また、報告書や医療安全情報として提供するとともに、報告された事例を匿名化したデータベースも提供している。アンケート調査によると、それらの成果は、特に医療安全情報を中心に参加医療機関から好感されている。また、成果を活用しやすいように、Webのホームページに様々な工夫を凝らしている。
講演では、医療事故情報収集等事業の運営において蓄積された方法や、成果の知見について解説する。
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26. 後 信, 医療事故調査制度の問題点 
, 日本麻酔科学会 第63回学術集会, 2016.05.
27. 後 信, 内服薬処方箋の記載方法標準化の普及啓発状況に関する研究(厚生労働科学研究 土屋班)
, 厚生労働科学研究「内服薬処方せんの記載方法標準化の普及状況に関する研究」研究報告会, 2016.03.
28. SHIN USHIRO, Country Experiences/Initiatives: National, Subnational or Institutional Patient Safety Incident Reporting and Learning SystemA report from Japan, WHO Inter-regional Consultation Conference in Colombo, Sri Lanka , 2016.03.
29. 後 信, 医療事故情報収集等事業と産科医療補償制度の特徴や成果と相互関係について, 日米医学セミナー, 2016.02.
30. 後 信, がん治療と医療安全について, 第14回 九州消化器外科学会学術講演会, 2016.02.
31. SHIN USHIRO, Reporting and Learning Systems- A Case for ProgressNationwide adverse event reporting system and relevant systems, patient safety infrastructures, in Japan, Inter-Regional Technical Consultation on Best Practices in Patient Safety and Quality of Care, 2016.02.
32. 後 信, 医療安全ことはじめ~医療事故調査制度における原因分析と再発防止と関連する諸制度について~
, 日本医療マネジメント学会 第9回宮崎県支部学術集会, 2015.12.
33. 後 信, 医療事故情報収集等事業における原因分析、再発防止、成果の周知について, 第77回日本臨床外科学会総会, 2015.11.
34. 後 信, 医療事故情報収集等事業における原因分析、再発防止、成果の周知について, 第10回 医療の質・安全学会, 2015.11.
35. 後 信, 医療事故情報収集等事業における原因分析、再発防止、成果の周知について, 第63回日本職業・災害医学会学術大会抄録, 2015.11, 日本医療機能評価機構が平成16年度に開始した医療事故情報収集等事業は、法令に基づく医療事故報告制度である。同事業では、全ての診療領域における手術や検査、投薬、医療機器等に関する様々な種類、及びヒヤリ・ハット事例から死亡事例までの様々な程度の事例の情報が報告されている。それらの医療事故やヒヤリ・ハット事例を包括的に取り扱うために、同事業では、情報収集、分析、改善策の提示や周知に関し、いくつかの特徴的な方法を開発、運用してきた。
医療事故の報告件数は毎年増加しており、現在、年間3,000件を超えている。これは運営の原則である非懲罰性や匿名性が効果的に機能しているものと考えている。次に情報収集に関しては、Web上のシステムに入力して報告するシステムを開発、運用している。そ内容は、選択項目のほかに、記述項目として、「医療行為の目的」「事例の概要(何が起きたか)」「背景・要因(なぜ起きたか)」「改善策(どのように改善するか)」等である。演者が所属する九州大学病院では、事例が発生すると、診療科や部署・部門と医療安全管理部とが事例について調査、分析しながら院内向けの報告書を作成する。その過程では指導医や専門医が関与することが多く、また、医療安全管理部との間で何度もやり取りが繰り返される。その内容を評価機構のフォーマットに当てはめて同事業に報告している。同事業では、報告された事例に関する疑問、質問がある場合、Webシステムを通じて医療機関に照会して追加情報を収集している。また原因となった業務環境や情報システムなどを確認するために、訪問調査も行っている。さらに、医療機関で医療事故調査報告書が作成された場合などはWebシステム上で追加情報を報告できる仕組みになっている。このように情報を収集、補充し、分析の基盤となるデータベースを充実している。
分析の方法として、数量的な分析とともに、質的な分析としてテーマを設定した分析を行っている。例えば、「カリウム製剤の急速静注に関する事例」「インスリンに関する事例」「放射線治療の照射部位の間違いに関連した事例」など様々な技術的なテーマを取り上げてきた。そして、情報提供の方法として、報告書や年報の他に、毎月1回の頻度で、分かりやすいイラストや表を用いた医療安全情報を提供している。また、報告書や医療安全情報として提供するとともに、報告された事例を匿名化したデータベースも提供している。アンケート調査によると、それらの成果は、特に医療安全情報を中心に参加医療機関から好感されている。また、成果を活用しやすいように、Webのホームページに様々な工夫を凝らしている。
講演では、医療事故情報収集等事業の運営において蓄積された方法や、成果の知見について解説する。.
36. 後 信, 医療事故調査制度における原因分析と再発防止及び関連諸制度について
, 日本心臓血管麻酔学会第20回学術大会, 2015.10, 医療の提供にあたり、現在は質を重視し、さらにその中でも安全を特に重視する時代である。そこで、約10年前から、医療界や医療機関の中に、医療安全を確保するための仕組みの整備がなされてきた。医療機関単位では、医療安全を担当する職員の配置、職員の研修、インシデント・アクシデントレポートの収集と分析、改善などが行われている。大学医学部では、医学生に対する教育プログラムの中で、医療安全に関する教育や演習が行われている。また、全国的に有害事象を収集・分析する事業として、医療事故やヒヤリ・ハットの報告制度(医療事故情報収集等事業)や、産科医療補償制度(無過失補償・原因分析・再発防止)が(公財)日本医療機能評価機構により運営されている。さらに、本年10月には、医療事故調査制度の開始が予定されている。これらの仕組みが、それぞれの対象領域をカバーし、特色ある原因分析を行って、再発防止の知見を様々な媒体を作成して全国に周知している。医療現場では、自施設で経験する有害事象に限りがあること、また、重大な事象であってどの医療施設でも発生しうる要因を有する事例は依然として多く報告されていることから、他施設で発生した多くの事例を分析するそれらの諸制度の成果を活用することが、重大な医療事故を防止するために今後一層求められる。
医療事故情報収集等事業は、法令に基づき2004年に開始した、大学病院や国立病院機構の病院を中心とした全国規模の有害事象報告制度である。様々な診療領域の死亡・非死亡事例が毎年多く報告されている。Webやデータベースの技術を駆使して、年間3,000件を超える医療事故情報と30,000件を超えるヒヤリ・ハット事例を取り扱っている。そして、定期的な報告書や年報の他に、毎月提供しているアラートである医療安全情報や、ホームページで報告事例を公表している事例データベースなどの成果を作成している。海外からも関心が寄せられている。
産科医療機補償制度は、分娩に関連して重度脳性麻痺となった事例を対象とし、平成21年に開始された制度である。すなわち、診療領域が限定されている点が特徴のひとつである。また、医療行為に関する我が国初の大規模な無過失補償を行っていることと、補償対象となった各事例に詳細な原因分析を行い、その報告書を分娩機関と家族に送付していることが特徴である。平成21年の運用開始依頼、これまでに1,000件を超える補償がなされ、そのうち600件を超える事例に原因分析報告書が作成されている。医学的評価を含む詳細な分析を行い、報告書を家族にも送付することから、事業開始前後、紛争の増加を懸念する意見もあったが、6年が経過した現在、脳性麻痺事例の損害賠償請求件数や、産婦人科の訴訟件数は増加しておらず、むしろ減少している。
本年10月には、医療事故調査制度が開始される。現在の準備状況を考慮すると、予定される医療事故調査制度は様々な課題を抱えたまま運用開始となることが想定される。医療事故情報収集等事業や産科医療補償制度は、運営の中で蓄積されてきた多くの知見が、医療事故調査制度において参考になると考えられる。
講演では、それぞれの制度の特徴やカバーする領域、他の制度との関係について解説し、我が国の医療安全を確保する諸制度を俯瞰するとともに、最も重要である、医療現場における知見の活用について考察したい。.
37. SHIN USHIRO, Application of knowledge gained through adverse event reporting system and no-fault compensation/peer-review system to new peer-review system on clinical death case in Japan, 32nd International Conference of the International Society for Quality in Health Care,, 2015.10.
38. SHIN USHIRO, The Status Quo of the Web-based Nationwide Adverse Event Reporting System in Japan, International Forum on Quality and Safety in Healthcar, 2015.09.
39. SHIN USHIRO, A new peer-review system on clinically accidental death case in Japan “How does it relate to JQ’ projects on patient safety? ”
, Taichung Patient Safety Study Group, 2015.09, Japan Council for Quality Health Care (JQ) has carried nationwide adverse event reporting system and no-fault compensation/peer-review system for profound cerebral palsy. In those programs, adverse event is investigated, analyzed and eventually gives rise to a report on the individual case basis though the degree of detail and elaboration varies among reports. Thereafter, piles of those reports are subjects to compiling a report for prevention.
Through the years, JQ has built up knowledge to operate those systems and generate a preventive measures and educational materials for prevention of adverse event.
Along with the operation of those systems, Japan has faced another specific challenge which is how to investigate cause of accidental death case not only for relieving conflict between medical institution and bereaved family but for generating preventive measures and avoiding prosecution process. Trial project for studying feasibility of the new system specific to accidental death case funded by the ministry of health, labour and welfare in which clinical death case was investigated has been conducted by Japan Medical Safety Research Organization, a neutral third body like JQ, for nearly ten years. With the knowledge which has accumulated in the project, the Japanese government is planning to launch a new peer-review system on accidental patient death based on Health Service Law on October 1, 2015. 1300-2000 death cases are annually expected to be subjected to the new system.
According to the framework of the new system illustrated in the law, enforcement ordinance and notice, workflow of the system is described as follows. Accidental death case defied as “Medical accident” in the Health Service Law should be reported to the Japan Medical Safety Research Organization, a recently registered third body as an operating organization, thereafter, the in-house investigation is conducted. On completion of the investigation, the medical institution should explain the outcome of the investigation to bereaved family through verbal explanation and/or documentary explanation. The investigation report should be sent to the third body. The third body receives investigation reports from medical institutions all over Japan, create knowledge to spread to medical institutions for prevention by studying common nature of cause of similar cases.
The question of how to successfully operate the new system in terms of investigation and prevention can be answered on the basis of knowledge created by JQ's projects. With regard to the in-house investigation report, the law only describes that the medical institution should conduct investigation to elucidate cause of the case. There is neither standard form for the investigation report nor procedure which should be common among investigations.
Therefore, the idea of referring to the investigation report which has been compiled for seven years in the Japan obstetric compensation system could be effective for envisioning the standard report in terms of form and procedure to compile a report in the new system. The obstetric compensation system has an intensive peer review in which expert groups review and eventually compile a peer-review report of individual cases. Approximately seven hundred reports have been completed and delivered to both families and childbirth facilities so far.
Furthermore, the planned scheme for prevention in the new system is quite similar to the one carried out in the JQ's adverse event reporting system. Specifically, it is similar to collect cases, study common nature among similar cases, crafts and distributes written documents and alerts for the reference of medical professionals on the frontline of medicine.
The reporting system collected 3,194 accident and 29,736 incident reports in 2014 under the condition of anonymity from 1,399 medical institutions accounting for 16% of Japanese hospitals. JQ published annual/quarterly reports and monthly alerts as planned in 2014 for recurrence prevention. It should be stressed that web-based reporting and analyzing system developed in JQ has enabled to efficiently deal with a great number of cases reported from entire medical specialties.
The new peer-review system will begin on Oct 1. JQ’s adverse event reporting system and no-fault compensation/peer-review system has fostered two different methodologies to cover entire adverse event for prevention.
They surely provides with ideas which enable the new system to be operated efficiently and effectively.
In the lecture, the idea of how to introduce the knowledge fostered in those two projects to the new peer-review system, in other words, the plausible answer to the question “How does the new system relate to JQ's projects?” will be presented.
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40. SHIN USHIRO, Japan Obstetric Compensation System-No-fault compensation / causal analysis and prevention of recurrence-, 第11回 ICMアジア太平洋地域会議・助産学術集会, 2015.07.
41. 後 信, 産科医療補償制度の実績と医療安全の確保における効果ついて
, 第51回 日本周産期・新生児医学会, 2015.07, 1.はじめに

(公財)日本医療機能評価機構が平成21年に創設し、運営している産科医療補償制度は、無過失補償と原因分析・再発防止の機能とを併せ持つ我が国初の制度である(図1)。本稿では、産科医療補償制度の実績や現況及び医療安全の確保における効果について述べる。

2.産科医療補償制度創設の経緯と現況について

1)制度設立の背景
産科領域の紛争の中でも、脳性麻痺に関するものは、その原因が不明であることが多く、産科医にとって負担となっているとされる。通常の妊娠・分娩の結果、仮死状態で出生したり、出生時の所見では必ずしも重症ではなかったにも関わらず、その後神経学的な障害が顕在化し、重度脳性麻痺となったりした事例などでは、家族の思いも複雑となり紛争化することがあるとされる。そこで、産科医療補償制度の創設について、産科医、日本医師会、自由民主党などの主体が検討を進め、平成21年に評価機構を運営組織とする本制度が創設された。

2)医療事故の調査を行う制度としての位置づけ
 平成27年10月に、医療法に基づく医療事故調査制度が創設された。当該制度における医療事故とは、医療に起因する(疑いを含む)予期しない死亡または死産であり、過失の有無を問うていない。死亡事例以外の事例も多く存在することから、当該制度は我が国で発生する医療事故事例の一部を取り扱う制度である。このほかに、非死亡事例やヒヤリ・ハット事例も含めて院内で調査した結果を収集する制度として医療事故情報収集等事業がある。さらに、産科医療補償制度が重度脳性麻痺の調査を行っている。このように、医療事故の調査に関し全国的ないくつかの制度が平行して運営されており、そのひとつが産科医療補償制度である。

3)制度の加入率
平成27年6月末時点の加入率は、全分娩機関の99.9%と、大変高い加入率を達成している。

4)審査から補償の流れと補償対象の範囲
①審査の流れ
被険者である分娩機関が評価機構に対して補償申請を提出し、審査委員会で補償対象の可否を検討する。補償対象と決定されれば、保険金(補償金)の支払いが開始される。
また、分娩機関に損害賠償責任がある場合は、補償金と損害賠償金の調整が行われる。
②補償対象の範囲
(ア) 一般審査基準
在胎週数、出生体重、重症度の基準から構成されている。平成27年から基準が見直され、同年及びそれ以降生まれの児には、見直し後の在胎週数や出生体重の基準が適用されている。
(イ) 個別審査基準
 臍帯動脈血pH値が7.1未満であることや、所定の徐脈のパターンを認めることが基準となっている。
(ウ) 除外基準
先天性の要因や、新生児期以降の要因による脳性麻痺は補償対象とはならない。

5)審査の実績等
①補償対象事例
これまでに、1,725件の申請に対し1,371件が補償対象となり、速やかな補償金の支払いが行われている。補償対象となった事例は、原因分析が行われ、これまでに713件の原因分析報告書が作成された。
②補償の水準
 補償対象となった場合は、看護・介護を行う基盤整備のための準備一時金として600万円を給付し、またこの他に、補償分割金として、総額2,400万円を分割して20歳まで定期的に給付している。このように補償金の総額は3,000万円である。

6)原因分析の流れと考え方、実績
①原因分析の流れ
原因分析は、分娩機関から診療録や助産録、その他のデータや記録を提出していただき、評価機構の原因分析委員会部会において行っている。現在、報告書案を作成する作業を行うために、6つの部会を設置している。報告書が基本的に同じ考え方や構成で作成されるように、マニュアルを整備している。部会で審議された報告書案は、次に本委員会で審議され、承認の可否が決定される。
②原因分析の考え方
ア)前方視的分析および後方視的分析の視点の重要性
原因分析報告書の作成あたっては、標準化され、相互に比較可能な報告書を作成するため、その目的や、作成にあたっての基本的な考え方が重要である。原因分析報告書は、責任追及を目的とするのではなく、「なぜ起こったのか」など原因を明らかにするとともに、同じような事例の再発防止を提言する報告書である。報告書は児・家族,国民,法律家などから見ても分かりやすく、かつ信頼できる内容となるように作成する。分析に当たっては、分娩経過注の要因とともに、既往歴や今回の妊娠経過など分娩以外の要因も検討を行う。医学評価に当たっては検討すべき事象の発生時に視点を置き、その時点で行う妥当な分娩管理等は何であったかという前方視的分析を行う一方で、既知の結果から振り返る後方視的分析も行い、再発防止に向けて改善に繋がると考えられる課題があれば,それを指摘することとしている。これらの2つの視点、つまり、前方視的分析と後方視的分析を混同せずに報告書を作成することが特に重要である。この点は、医療事故調査制度における院内事故調査の報告書を作成する際にも参考になると考えられる。
③原因分析報告書の構成
報告書の構成は、1.はじめに、2.事例の概要、3.脳性麻痺の原因、4.臨床経過に関する医学的評価、5.今後の産科医療向上のために検討すべき事項、6.関連資料、となっている。このうち、「4.臨床経過に関する医学的評価」は前方視的分析を行い、「5.今後の産科医療向上のために検討すべき事項」は後方視的分析を行っている。
④医学的評価に用いる用語
「4.臨床経過に関する医学的評価」において、後方視的分析を行う際には、医学的評価のレベルに合わせた用語をリスト化している。これを用いることにより、標準化された記述が可能になるとともに、再発防止や産科医療の質の向上に向けた課題を見出す際に、低いレベルの評価がなされることが多い技術や判断などを取り上げることによって、より正確な課題抽出が可能になる。
⑤原因分析報告書作成の実績
平成27年6月末現在、審議件数は713件であり、その結果、承認が484件、条件付き承認(修正があるものの、改めて審議する必要はなく委員長預かりとなった報告書)が227件、保留(審議未了となった報告書)が2件となっている。
⑥原因分析報告書に関するアンケート
詳細な原因分析を行った報告書を分娩機関と家族に送付している。報告書をどのように受け止めているか、アンケート調査を実施した。保護者の回答では、「原因分析報告書の内容について理解出来ましたか。」「家族からの疑問・質問に対する回答」は、わかりやすい回答でしたか。」「原因分析が行われたことは良かったですか。」などの質問に対しておおむね好感する回答が得られた。その中で、原因分析が行われことが「とてもよかった。」「まあまあよかった。」と回答した理由として最も多かったのは、「第三者により評価が行われたこと。」であった。このように、第三者評価は一定の評価を得ていると考えられた。また、原因分析が行われことが「あまりよくなかった。」とした回答が24%あったがその理由として最も多かったのは、「結局原因がよくわからなかったこと。」であった。この点は、医学、助産学の限界を示しているものと考えられる。

7)再発防止活動の流れ
個別の原因分析報告書を体系的に整理・蓄積して分析し、再発防止を図り、産科医療の質の向上につなげていくこととしている。具体的には、個々の事例の妊産婦の基本情報、妊娠経過、分娩経過、新生児期の経過、診療体制等の情報をもとに数量的・疫学的な分析を行うことや、原因分析報告書の記載に基づいた重度脳性麻痺の原因の集計、胎児心拍数モニタリング、分娩・陣痛促進剤の使用、急速遂娩、新生児蘇生などの診療行為および分娩機関における設備や診療体制、わが国における産科医療体制等についてテーマを設定して分析している。このうちテーマ分析部分では、個別の原因分析報告書における「医学的評価」部分を分析し、「新生児蘇生について」「胎児心拍数モニタリングについて」「妊娠高血圧症候群について」等のテーマに関し、低い評価がなされた技術的な内容などを取りまとめている。例えば、妊娠高血圧症45事例の分析では、「尿中蛋白量の評価方法として随時尿による評価しか行わなかったことは一般的でない」「妊娠高血圧症候群であり、胎児の発育不全兆候が認められた時に、ノンストレステストなどにより、健常性の確認を行わなかったことは、一般的でない。」等の指摘が行われたことから、これらを整理してまとめている。
また、同様に、個別の報告書における「再発防止及び産科医療の質の向上に向けて」部分の分析を取りまとめ、それを踏まえて提言を作成している。例えば、先述した妊娠高血圧症候群の事例では、「血圧の頻回の測定や、尿蛋白の確認検査を行うことが望まれる。」「胎児心拍数モニターにおいて、基線細変動の減少や、変動一過性徐脈、軽度遅発一過性徐脈が認められているが、認識されていないので、判読を正確にするための勉強会の開催や、研修会への参加が望まれる。」などの改善策が提言されていることから、これらを整理してまとめている。これらにより、分娩機関は、重度脳性麻痺の事例において、今後の課題となるどのような評価がなされ、改善策が提言されたか、複数の事例について学ぶことができる。そして、それらを踏まえ、産科医療関係者に対して、「「 産科医療補償制度の原因分析・再発防止に係る診療録・助産録および検査データ等の記載事項」を参考に診療録等を記載する。」「特に、異常出現時の母児の状態、および分娩誘発・促進の処置や急速遂娩施行の判断と根拠や内診所見、新生児の蘇生状況については詳細に記載する。」といった提言や、学会・職能団体に対して、「診療録等の記載は、産科医療の質の向上を図るために重要であることから適切に記載することについて、普及啓発することを要望する。といった要望がなされている。再発防止に関する報告書のほかに、分娩機関向けのリーフレット、妊産婦向けのリーフレット、再発防止委員会からの提言を取りまとめた提言集、脳性麻痺事例の胎児心拍数陣痛図を分析した教材、などを作成、提供している。

8)産婦人科領域の紛争の傾向
 本制度は、紛争の防止や産科医療の質の向上を目的とした制度である。そこで、脳性麻痺事例の損害賠償件数を調査したところ、減少傾向にある可能性があり、少なくとも急増する状況はみられていない。また、最高裁判所医事関係訴訟委員会が公表している「医事関係訴訟事件の診療科目別既済件数」をみると、全診療科の件数は2006年以降減少傾向にあるが、その内訳としての「産婦人科」の件数は、一層顕著な減少傾向を示している。

3.おわりに
平成21年に開始された産科医療補償制度は、5年後の見直しを経て、平成27年1月に見直し後の補償対象範囲の基準の運用を開始した。また、原因分析、再発防止の活動は継続的に進んでおり、報告書のほかに教材の作成も行っている。このように、制度の見直しを踏まえ、安心・安全な医療を推進するための仕組みとして、本制度を一層よいものとなるように発展させて行くことが課題である。.
42. 後 信, 医療安全の推進における産科医療補償制度の役割について
, 第72回九州連合産婦人科学会・第66回九州ブロック産婦人科医会, 2015.06, 1.はじめに

医療の安全を確保するための方法論として、思いがけず結果が悪かった事例に学ぶことが挙げられる。そこで、医療機関ではヒヤリ・ハット事例の収集や原因分析による再発防止活動を実践している。また、紛争を抑制するための方法論として、専門家による患者と医療者の間の対話の促進や、ADR、無過失補償などが挙げられる。(公財)日本医療機能評価機構が平成21年に創設し、運営している産科医療補償制度は、無過失補償と原因分析・再発防止の機能とを併せ持つ我が国初の制度である。本項では、産科医療補償制度の実績や現況、そして医療安全の推進において果たしてきた役割について述べる。

2.産科医療補償制度創設の経緯と現況について

1)制度設立の背景
産科領域の紛争の中でも、脳性麻痺に関するものは、その原因が不明であることが多く、産科医にとって負担となっているとされる。この状況は、国内外において共通に観察されている。脳通常の妊娠・分娩の結果、仮死状態で出生したり、出生時の所見では必ずしも重症ではなかったにも関わらず、その後神経学的な障害が顕在化し、重度脳性麻痺となったりした事例などでは、家族の思いも複雑となり、紛争化することがあるとされる。そこで、産科医療補償制度の創設について、産科医、日本医師会、自由民主党などの主体が検討を進め、平成21年に評価機構を運営組織とする本制度が創設された。

2)制度の加入率
本制度は民間の制度であるために、分娩機関の加入は任意である。しかし、先述した経緯があり、産科医等の分娩に従事する医療者の議論が元になって創設の機会を得た制度であることから、関係団体や行政機関から、加入促進について熱心なご協力をいただき、平成27年5月19日時点の加入率は、全分娩機関の99.9%と、大変高い加入率を達成している。

3)審査から補償の流れと補償対象の範囲
①審査の流れ
被険者である分娩機関が評価機構に対して補償申請を提出し、審査委員会で補償対象の可否を検討する。補償対象と決定されれば、保険金(補償金)の支払いが開始される。
また、分娩機関に損害賠償責任がある場合は、補償金と損害賠償金の調節が行われる。
②補償対象の範囲
(ア) 一般審査基準
在胎週数、出生体重、重症度の基準から構成されている。平成27年から基準が見直され、同年及びそれ以降生まれの児には、見直し後の在胎週数や出生体重の基準が適用されている。
(イ) 個別審査基準
 臍帯動脈血pH値が7.1未満であることや、所定の徐脈のパターンを認めることから構成されている。
(ウ) 除外基準
先天性の要因や、新生児期以降の要因による脳性麻痺は補償対象とはならない。

4)審査の実績など
①補償対象事例
これまでに、1,326件の申請に対し1,126件が補償対象となり、速やかな補償金の支払いが行われている。補償対象となった事例は、原因分析が行われ、これまでに614件の原因分析報告書が作成された。
②補償対象外の事例
 審査の結果、これまでに約300件が補償対象外と判定された。その内訳として最も多いものは、個別審査基準を満たさない事例である。具体的には、臍帯動脈血pHが7.1以上で、胎児心拍数モニターも所定の徐脈を認めないものである。このほかに、両側の広範な脳奇形といった先天性要因や、実用歩行が可能なため重症度の基準を満たさない事例などが補償対象外となった。
③申請促進の周知
 制度開始初年である平成21年生まれの児については、平成26年末に満5歳の誕生日を迎えた。本年は、平成22年生まれの児が、順次申請期限を迎えている。申請期限を過ぎたために、補償が受けられないことがないように、周知媒体の作成、配布や施設訪問など、全国的な周知活動を行っている。
④補償の水準
 補償対象となった場合は、看護・介護を行う基盤整備のための準備一時金として600万円を給付し、またこの他に、補償分割金として、総額2,400万円を分割して20歳まで定期的に給付している。このように補償金の総額は3,000万円である。

5)原因分析の流れと考え方、実績
①原因分析の流れ
原因分析は、分娩機関から診療録や助産録、その他のデータや記録を提出していただき、評価機構の原因分析委員会部会において行っている。現在、報告書案を作成する作業を行うために、6つの部会を設置している。それぞれの部会が事例を分担し、補償対象者数の推計値である、年間約400~500件の原因分析に対応しなければならない。一つの部会の構成は産科医が部会長を含め9人、小児科医が2人、助産師が1人、弁護士が2人の14人構成となっている。医療系委員の役割は医学的評価を行うことであり、弁護士の委員の役割は、報告書がわかりやすい内容になるように意見することや、事例の論点整理を行うことである。報告書が基本的に同じ考え方や構成で作成されるように、マニュアルを整備している。そこでとりまとめられた報告書案が本委員会で審議され,承認の可否が決定される。
②原因分析の考え方
ア)前方視的分析および後方視的分析の視点の重要性
原因分析報告書の作成あたっては、標準化され、相互に比較可能な報告書を作成するため、その目的や、作成にあたっての基本的な考え方が重要である。原因分析報告書は、責任追及を目的とするのではなく、「なぜ起こったのか」など原因を明らかにするとともに,同じような事例の再発防止を提言する報告書である。報告書は児・家族,国民,法律家などから見ても分かりやすく、かつ信頼できる内容となるように作成する。分析に当たっては,分娩経過注の要因とともに,既往歴や今回の妊娠経過など分娩以外の要因も検討を行う。医学評価に当たっては検討すべき事象の発生時に視点を置き,その時点で行う妥当な分娩管理等は何であったかという前方視的分析を行う一方で,既知の結果から振り返る後方視的分析も行い,再発防止に向けて改善に繋がると考えられる課題があれば,それを指摘することとしている。これらの2つの視点、つまり、前方視的分析と後方視的分析を混同せずに報告書を作成することが特に重要である。
③原因分析報告書の構成
報告書の構成は、1.はじめに、2.事例の概要、3.脳性麻痺の原因、4.臨床経過に関する医学的評価、5.今後の産科医療向上のために検討すべき事項、6.関連資料、となっている。このうち、「4.臨床経過に関する医学的評価」は前方視的分析を行い、「5.今後の産科医療向上のために検討すべき事項」は後方視的分析を行っている。
④医学的評価に用いる用語
「4.臨床経過に関する医学的評価」において、後方視的分析を行う際には、医学的評価のレベルに合わせた用語をリスト化している。これを用いることにより、標準化された記述が可能になるとともに、再発防止や産科医療の質の補償に向けた課題を見出す際に、低いレベルの評価がなされることが多い技術や判断などを取り上げることによって、より正確な課題抽出が可能になる。

⑤報告書の公表
承認された報告書は、再発防止や産科医療の質の向上のため、個人情報が特定できないように十分配慮した上で、原因分析報告書の概要をホームページに公表する。また、個人情報や個別医療機関情報をマスクしたものは、当機構が定めた手続きを経ることにより、請求者に開示される仕組みとしている。
⑥原因分析報告書作成の実績
平成27年2月末現在、審議件数は641件であり、その結果、承認が430件、条件付き承認(修正があるものの、改めて審議する必要はなく委員長預かりとなった報告書)が210件、保留(審議未了となった報告書)が1件となっている。
⑦原因分析報告書に関するアンケート
詳細な原因分析を行った報告書を分娩機関と家族に送付している。報告書をどのように受け止めているか、アンケート調査を実施した。保護者の回答では、「原因分析報告書の内容について理解出来ましたか。」「「家族からの疑問・質問に対する回答」は、わかりやすい回答でしたか。」「原因分析が行われたことは良かったですか。」などの質問に対しておおむね好感する回答が得られた。その中で、原因分析が行われことが「とてもよかった。」「まあまあよかった。」と回答した理由として最も多かったのは、「第三者により評価が行われたこと。」であった。このように、第三者評価は一定の評価を得ていると考えられた。また、原因分析が行われことが「あまりよくなかった。」とした回答が24%あったがその理由として最も多かったのは、「結局原因がよくわからなかったこと。」であった。この点は、医学、助産学の限界を示しているものと考えられる。

6)再発防止活動の流れ
個別の原因分析報告書を体系的に整理・蓄積して分析し、再発防止を図り、産科医療の質の向上につなげていくこととしている。具体的には、個々の事例の妊産婦の基本情報、妊娠経過、分娩経過、新生児期の経過、診療体制等の情報をもとに数量的・疫学的な分析を行うことや、原因分析報告書の記載に基づいた重度脳性麻痺の原因の集計、胎児心拍数モニタリング、分娩・陣痛促進剤の使用、急速遂娩、新生児蘇生などの診療行為および分娩機関における設備や診療体制、わが国における産科医療体制等についてテーマを設定して分析している。このうちテーマ分析部分では、個別の原因分析報告書における「医学的評価」部分を分析し、「新生児蘇生について」「胎児心拍数モニタリングについて」「妊娠高血圧症候群について」などのテーマに関し、低い評価がなされた技術的な内容などを取りまとめている。例えば、妊娠高血圧症45事例の分析では、「尿中蛋白量の評価方法として随時尿による評価しか行わなかったことは一般的でない」「妊娠高血圧症候群であり、胎児の発育不全兆候が認められた時に、ノンストレステストなどにより、健常性の確認を行わなかったことは、一般的でない。」などの指摘が行われたことから、これらを整理してまとめている。
また、同様に、個別の報告書における「再発防止及び産科医療の質の向上に向けて」部分の分析を取りまとめ、それを踏まえて提言を作成している。例えば、先述した妊娠高血圧症候群の事例では、「血圧の頻回の測定や、尿蛋白の確認検査を行うことが望まれる。」「胎児心拍数モニターにおいて、基線細変動の減少や、変動一過性徐脈、軽度遅発一過性徐脈が認められているが、認識されていないので、判読を正確にするための勉強会の開催や、研修会への参加が望まれる。」などの改善策が提言されていることから、これらを整理してまとめている。これらにより、分娩機関は、重度脳性麻痺の事例において、今後の課題となるどのような評価がなされ、改善策が提言されたか、複数の事例について学ぶことができる。そして、それらを踏まえ、産科医療関係者に対して、「 産科医療補償制度の原因分析・再発防止に係る診療録・助産録および検査データ等の記載事項」を参考に診療録等を記載する。」「特に、異常出現時の母児の状態、および分娩誘発・促進の処置や急速遂娩施行の判断と根拠や内診所見、新生児の蘇生状況については詳細に記載する。」といった提言や、学会・職能団体に対して、「診療録等の記載は、産科医療の質の向上を図るために重要であることから適切に記載することについて、普及啓発することを要望する。といった要望がなされている。再発防止に関する報告書のほかに、分娩機関向けのリーフレット、妊産婦向けのリーフレット、再発防止委員会からの提言を取りまとめた提言集、脳性麻痺事例の胎児心拍数陣痛図を分析した教材、などを作成、提供している。

7)産婦人科領域の紛争の傾向
 本制度は、紛争の防止や産科医療の質の向上を目的とした制度である。そこで、本制度の保険の引き受けを行っている損害保険会社のご協力により、脳性麻痺事例の損害賠償件数を調査した。その結果、制度が創設された2009年や、制度の創設が決定され準備を行っていた期間である2007~2008年、制度開始後の2009~2011年の推移をみると、減少傾向にある可能性があり、少なくとも急増する状況はみられていない。また、最高裁判所医事関係訴訟委員会が公表している「医事関係訴訟事件の診療科目別既済件数」をみると、全診療科の件数は2006年以降減少傾向にあるが、その内訳としての「産婦人科」の件数は、一層顕著な減少傾向を示している。

3.おわりに
平成21年に開始された産科医療補償制度は、5年後の見直しを経て、平成27年1月に見直し語の補償対象範囲の基準の運用を開始した。また、原因分析、再発防止の活動は継続的に進んでおり、また、報告書のほかに教材の作成も行うなど、発展している。このように、見直しの過程を経ながら、安心・安全な医療を推進するための仕組みとして、本制度を一層よいものとなるように発展させて行くことが課題である。.
43. 後 信, 医療事故、ヒヤリ・ハット事例の収集・分析と活用による医療安全の向上について, 医療の質・安全学会第9回学術集会, 2014.11, 医療事故情報収集等事業の情報収集と再発防止のための情報発信の方法を述べる。.
44. 後 信, 医療事故の収集、原因分析と再発防止への活用の取り組み
, 第52回日本医療・病院管理学会, 2014.09, 医療事故情報収集等事業と産科医療補償制度における、医療塩子事例の原因分析再発防止のための成果物の作成方法と周知方法を解説する。.
45. 後  信、掛地吉弘、 馬場秀夫、前原喜彦, 不活性型TGF-b結合タンパク(LTBP-1)の癌間質における存在様式とその意義, 第41回日本癌治療学会総会, 2003.10.
46. 後 信、増田隆明、徳永えり子、沖 英次、掛地吉弘、馬場秀夫、前原喜彦、桑野信彦, 癌の進展と癌間質における不活性型TGF-beta結合タンパク(LTBP-1)の関係, 第62回日本癌学会総会, 2003.09.
47. 後  信、増田隆明、沖 英次、渡邊雅之、掛地吉弘、馬場秀夫、前原喜彦, 不活性型TGF-β結合タンパク( LTBP-1)の癌間質における存在様式とその意義, 第14回消化器癌発生学会総会, 2002.09.

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