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加河 茂美(かがわ しげみ) データ更新日:2020.09.25

教授 /  経済学研究院 国際経済経営部門 国際経済分析


主な研究テーマ
循環型社会経済システムの環境経済評価
キーワード:循環型社会経済システム
2000.04.
持続可能な消費行動分析
キーワード:持続可能な消費
2002.04.
国際貿易とエネルギー・環境の関係分析
キーワード:国際貿易、環境
2004.04.
従事しているプロジェクト研究
消費行動分析・生産性分析・サプライチェーン分析を統合した産業エコロジーの構築
2018.04~2022.03, 代表者:加河茂美, 九州大学経済学研究院
2015 年にパリで国連気候変動枠組条約第21 回締約国会議(COP21)が開催され、京都議定書に代わる新たな地球温暖化問題の国際的枠組みとしてパリ協定が採択された[1]。2008年の国際金融危機による景気停滞によって一時的にCO2排出量は減少したものの、2010年以降の景気回復によって世界のCO2排出量は増加傾向を示している[2]。地球温暖化の緩和のためにはその主な要因である人為起源のCO2の排出削減が急務となっている[3]。CO2削減に向けての方策は様々考えられるが、(1)消費行動、(2)生産技術、(3)サプライチェーンという3つの視点にたって、有効な排出削減政策を提案・導入することが決定的に重要である。
消費行動に関して、最新のIPCC報告書でも指摘されているように、私達の消費行動やライフスタイルがCO2排出の増加に大きな影響を及ぼしている[3]。特に、自動車や家庭用エアコンなどの耐久消費財は私達の生活に広く普及しているという点、化石燃料を直接間接的に多量に消費する点で無視できない要素であり、それらの耐久消費財の生産・消費利用・廃棄リサイクルに付随するライフサイクルCO2排出量の推定についての研究がこれまでに多く為されてきた[4, 5, 6]。しかしながら、これらの既存研究[4, 5, 6]の問題は、消費者の買い替え行動メカニズムを完全に無視しており、当該の需要政策がライフサイクルCO2排出量に与える影響を推計できないということである。そこで本研究では、日本を研究対象にして、近年急速に発展している最適な消費者行動に基づく耐久財(特に、自動車)の動的離散選択モデル[7, 8, 9]の推定を行い、新製品の補助金制度やその他の製品制度(例えば、車検制度等)の導入・変更・廃止が新製品の生産と消費、旧製品の廃棄リサイクルに与える影響を特定化するだけでなく、それらの動態が耐久財起源のライフサイクルCO2排出量に与える影響を推計し、需要政策が温暖化緩和に果たす役割を定量的に明らかにする。
 エコカー補助金制度のような需要政策を通して製品ライフサイクル全体を通して大きな排出削減効果が見込めるかどうかは疑問である。その場合には、その人的・金銭的な資源を別の技術政策等に充てる必要がある。耐久消費財の最終需要に着目した需要政策だけでなく、特に排出集約的な中間財の生産技術(金属生産やセメント生産等)に着目した政策効果に期待するのが自然である。こうした化石燃料を大量に利用・消費する排出集約的な産業は、エネルギー効率性や生産効率性を高めることでCO2排出量を削減できる可能性がある[3]。金属産業のエネルギー効率性や生産効率性に関する重要な研究として、Lin et al. [10]、Morfeldt et al. [11]、Fujii et al. [12]がある。Lin et al. [10]は中国国内の金属産業に属する50 の企業を対象に、Morfeldt et al. [11]はヨーロッパ諸国を対象としてエネルギー効率性の変化を分析した。
 このように、“当該国”や“当該産業”に着目したエネルギー効率性の変化に関する研究は数多く存在する。各国の景気状況に左右されやすい需要政策とは違い、技術効率性向上や技術移転などを通した排出削減政策は、気候変動緩和に向けた国際的な枠組みの上でガイドランが作成しやすい政策オプションである。“当該産業” (例えば、金属産業)の技術改善は、“当該国”そして“当該技術”によって生産される製品(例えば、金属製品)に付随するライフサイクルCO2排出量の削減のみならず、その製品を中間財として利用して生産される製品(例えば、自動車)に付随するライフサイクルCO2排出量の削減に貢献する。また当該部門の技術改善は、輸入品の投入改善にもつながり、海外での排出移転量の削減に貢献する。従来の効率性研究では、ミクロ・メゾレベルでの個別部門の効率性向上による技術改善がこの製品ライフサイクルに与える影響を分析できない[13]。
 そこで本研究では、生産効率性分析として幅広く利用されているデータ包絡分析法(Data Envelopment Analysis: DEA)[14]とライフサイクル産業連関分析法[15]を統合することを世界で初めて試みる。これによって、各国の産業連関表上の特定の産業部門・商品技術部門を意思決定主体(Decision Making Unit: DMU)として捉えることによって得られる生産フロンティアがどのような形状をしているのか、そして経済的、環境的に見て非効率的な生産活動をしている部門が何であるのか、そしてそれらの非効率的な部門の効率性を向上させることによってその部門に付随するライフサイクルCO2排出量がどの程度削減できるのか、その削減ポテンシャルが各国のパリ協定での削減目標[1]に果たす役割がどの程度であるか実証的に明らかにする必要がある。本研究では、特に世界経済を牽引している耐久財(特に、自動車)の最終需要政策の影響を受けやすいかつ排出集約的な金属産業等の中間財産業をDMUとしてターゲットとする。そして、最終需要政策と技術政策(生産効率性向上政策)の双方を通した複合的な排出変化分析を行うことにより、より包括的な温暖化政策を提言する。
 前述したような需要政策(エコカー補助金、車検制度等)を通して最終需要構造(自動車需要、ガソリン需要など)が変化する一方で、前述した技術政策を通して中間財産業の技術改善が進み、結果的に、耐久財(例えば、自動車)に付随する世界全体のライフサイクルCO2排出量は減少するかもしれない。特に、各国の自動車生産はグローバルなサプライチェーンを有しており[6]、こうした政策に伴う需要変化と技術変化と同時に、自動車のグローバルサプライチェーンネットワーク全体を考慮した世界全体のライフサイクル排出量の推計が決定的に重要となる[6]。そこで本研究では、これらの需要変化と技術変化の要素を世界多地域産業連関表[16, 17, 18]の中の最終需要ブロックと中間投入ブロックにそれぞれ組み込むことによって、政策効果を加味した包括的なライフサイクル産業連関分析モデルを開発する。開発されたライフサイクル分析モデルから経済ネットワーク解析法へと展開する。

【参考文献】
[1] United Nations Framework Convention on Climate Change (UNFCCC), http://unfccc.int/meetings/paris_nov_2015/meeting/8926.php, 2015.
[2] Peters et al. (2012) Nature Climate Change 2: 2–4.
[3] Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC) (2014) Climate Change 2014: Mitigation of Climate Change, Cambridge University Press.
[4] Lenski, et al. (2010) Environmental Research Letters 5: 044003.
[5] Kagawa et al. (2011) Environmental Science & Technology 45: 1184–1191.
[6] Kagawa, et al. (2013) Global Environmental Change 23: 1807–1818.
[7] Rust (1987) Econometrica 55: 999–1033.
[8] Chevalier and Goolsbee (2005) The Quarterly Journal of Economics 124: 853–1884.
[9] Rapson (2014) Journal of Environmental Economics and Management 68: 141–160.
[10] Lin et al. (2014) Energy Policy 72: 87–96.
[11] Morfeldt et al. (2014) Energy Efficiency 7: 955–972.
[12] Fujii et al. (2010) Environment and Development Economics 15: 485–504.
[13] Sueyoshi et al. (2017) Energy Economics 62:104–124.
[14] Charnes et al. (1978) European Journal of Operational Research 2: 429–444.
[15] Suh (ed.) (2009) Handbook of Input-Output Economics in Industrial Ecology, Springer, the Netherlands.
[16] Lenzen et al. (2012) Nature 486: 109–112.
[17] Dietzenbacher et al. (2013) Economic Systems Research 25: 71–98.
[18] Wood et al. (2015) Sustainability 7: 138–163.
[19] Kagawa et al. (2015) Journal of Industrial Ecology 19: 10–19.
[20] Nishijima (2016) Journal of Environmental Management 181: 582–589.
[21] Kagawa, et al. (2015) Global Environmental Change 35: 486–496.
[22] Liang et al. (2016) Environmental Science & Technology 50: 1330–1337.
[23] Hanaka et al., (2017) Energy Economics, Forthcoming.
[24] Kagawa et al., (2013) Social Networks 35: 423-438..
研究業績
主要著書
主要原著論文
主要総説, 論評, 解説, 書評, 報告書等
主要学会発表等
学会活動
所属学会名
国際産業連関分析学会
環太平洋産業連関析学会
経済統計学会
環境経済・政策学会
日本LCA 学会
学協会役員等への就任
2020.04~2022.03, 環境経済・政策学会, 理事.
2012.04~2014.03, 環境経済・政策学会, 理事.
2008.04~2010.03, 環太平洋産業連関分析学会, 運営委員.
学会大会・会議・シンポジウム等における役割
2019.03.05~2019.03.07, 第14回日本LCA学会研究発表会, 実行委員長.
2018.11.02~2018.11.04, 環太平洋産業連関分析学会第29回(2018年度)大会, 討論者.
2017.06.19~2017.06.23, 25th International Input-output Conference, 座長(Chairmanship).
2017.03.01~2017.03.03, 第12回日本LCA学会研究発表会, 座長(Chairmanship).
2016.10.21~2016.10.23, 環太平洋産業連関分析学会第27回(2016年度)大会, 討論者.
2016.07.03~2016.07.08, 24th International Input-output Conference, 座長(Chairmanship).
2014.09.13~2014.09.14, 環境経済・政策学会2014年大会, 討論者.
2014.11.15~2014.11.16, 環太平洋産業連関分析学会第25回(2014年度)大会, 討論者.
2014.07.14~2014.07.18, 22nd International Input-output Conference , 座長(Chairmanship).
2013.07.09~2013.07.12, 21st International Input-output Conference , 座長(Chairmanship).
2013.10.26~2013.10.27, 環太平洋産業連関分析学会第24回(2013年度)大会, 討論者.
2012.11.20~2012.11.23, The 10th International Conference on EcoBalance, 座長(Chairmanship).
2012.03~2012.03, 第7回日本LCA学会研究発表会 , 座長(Chairmanship).
2011.11, 環太平洋産業連関分析学会第22回(2011年度)大会, 座長(Chairmanship).
2011.10, 日本経済学会2011年度秋季大会, 討論者.
2011.09, 環境経済・政策学会2011年大会, 討論者.
2011.06, 19th International Input-output Conference , 座長(Chairmanship).
2011.03, 第6回日本LCA学会研究発表会, 座長(Chairmanship).
2010.06, 環太平洋産業連関分析学会第21 回(2010 年度)大会, 討論者.
2010.06, 18th International Input-output Conference, 座長(Chairmanship).
2007.03, 第2回日本LCA学会研究発表会, 座長(Chairmanship).
2006.10, 環太平洋産業連関分析学会第17回大会, 討論者.
2007.07, 16th International Input-output Conference, 座長(Chairmanship).
2008.02, 第3回日本LCA学会研究発表会, 座長(Chairmanship).
2008.11, 環太平洋産業連関分析学会第19回大会, 座長(Chairmanship).
2016.10.03~2016.10.06, The 9th International Conference on EcoBalance, 2016, 実行委員.
2016.07.04~2016.07.08, 2016 International Input-Output Meetings, プログラム委員.
2015.07, 2015 International Input-Output Meetings, プログラム委員.
2014.10, The 11th International Conference on EcoBalance, 2014, 実行委員.
2013.07, 21st International Input-Output Conference 2013, 共同実行委員長.
2010.11, The 9th International Conference on EcoBalance, 2010, 実行委員.
2011.03, 第6回日本LCA学会研究発表会, 実行委員.
2010.06, 2010 International Input-Output Meetings, プログラム委員.
2006.07, Intermediate Input-Output Meetings 2006 on Sustainability, Trade & Productivity,, 組織委員、学術委員.
2007.11, 環太平洋産業連関分析学会第18回(2007年度)大会, プログラム実行委員.
2009.07, 2009 International Input-Output Meetings, プログラム委員.
2010.03, 第5回日本LCA学会研究発表会, 実行委員.
学会誌・雑誌・著書の編集への参加状況
2019.08, Journal of Environmental Management, 国際, Associate Editor.
2018.11, The Annals of Regional Science, 国際, 編集委員.
2007.03, Economic Systems Research, 国際, 編集委員.
2019.01, Energies, 国際, 客員編集長.
2014.10, Journal of Industrial Ecology, 国際, 客員編集長.
2014.08, Environmental Economics and Policy Studies, 国際, 客員編集長.
2005.12, Economic Systems Research, 国際, vol.17, no.4の特集号のゲストエディター.
学術論文等の審査
年度 外国語雑誌査読論文数 日本語雑誌査読論文数 国際会議録査読論文数 国内会議録査読論文数 合計
2018年度 15        15 
2017年度 10        10 
2016年度 24        24 
2015年度 10        10 
2014年度 14      15 
2013年度 15        15 
2012年度 32      33 
2011年度 17      20 
2010年度 10      15 
2009年度 10      16 
2008年度     13 
2007年度    
2006年度 11      15 
2005年度     14 
受賞
リチャード・ストーン卿賞, 国際産業連関分析学会, 2011.06.
レオンチェフ記念賞, 国際産業連関分析学会, 2007.07.
The Bronze Poster Award, The 9th International Conference on EcoBalance, 2010, 2010.11.
研究資金
科学研究費補助金の採択状況(文部科学省、日本学術振興会)
2020年度~2024年度, 基盤研究(A), 代表, 消費行動分析・効率性分析・サプライチェーン分析を統合した二酸化炭素排出評価.
2020年度~2024年度, 基盤研究(A), 分担, 社会の価値を内包した持続可能な発展の重層的ガバナンス.
2016年度~2021年度, 基盤研究(A), 分担, アジアのバリューチェーンを通じたPM2.5による健康被害の発生メカニズムの解明.
2014年度~2017年度, 基盤研究(A), 代表, 国際貿易ネットワーク解析を通した二酸化炭素排出評価に関する研究.
2011年度~2013年度, 基盤研究(C), 代表, スペクトラルグラフ理論を利用した二酸化炭素排出構造の国際比較分析.
2009年度~2010年度, 若手研究(B), 代表, スペクトラルグラフ理論に基づく汚染クラスターの構造分解分析.
2007年度~2008年度, 若手研究(B), 代表, 乗用車の買い替え行動の環境経済分析.
2005年度~2006年度, 若手研究(B), 代表, 産業廃棄物・一般廃棄物処理の所得乗数分析.
2013年度~2015年度, 基盤研究(B), 分担, 消費者責任論に基づく環境・資源管理分析モデルの開発と長期予測への応用.
2010年度~2012年度, 基盤研究(B), 分担, 金属資源利用・散逸時間経路及びその温暖化ガス排出の廃棄物産業連関分析.
2008年度~2010年度, 基盤研究(C), 分担, 環境資源勘定を用いた地域木質系バイオマス資源の戦略的利用・管理ツールの開発.
2007年度~2008年度, 萌芽研究, 分担, ライフサイクル思考に基づいた社会資本整備の環境性能評価手法の再構成
.
2005年度~2005年度, 基盤研究(C), 分担, 素材産業をプラットホームとした再生可能エネルギー・資源の創成.
2005年度~2007年度, 基盤研究(B), 分担, 二国間産業構造改革と貿易政策変化による京都議定書達成可能性の検討.

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