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安野 広三(あんの こうぞう) データ更新日:2023.06.22



主な研究テーマ
線維筋痛症患者のクラスター分析
キーワード:クラスター分析,線維筋痛症
2021.01~2024.01.
慢性疼痛と養育、家族機能
慢性疼痛の認知行動療法
キーワード:慢性疼痛、養育、家族機能、認知行動療法、マインドフルネス
2011.04~2016.03.
慢性疼痛の認知行動療法の効果予測因子の同定
キーワード:慢性疼痛、認知行動療法、予測因子、マインドフルネス
2016.10~2021.03.
従事しているプロジェクト研究
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 種々の症状を呈する難治性疾患における中枢神経感作の役割の解明と患者ケアの向上を目指した複数疾患領域統合多施設共同疫学研究
2020.04~2023.03, 代表者:小橋 元, 獨協医科大学 公衆衛生学講座, 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業(日本)
基礎疾患の有無によらず、原因不明で難治性の種々の症状の背景要因の一つとして、中枢神経の感作状態が考えられている。すなわち、様々な中枢神経への不快な外部刺激の繰り返しにより、中枢神経が感作され、痛みの増強や広範囲の慢性難治性の疼痛をはじめとする、様々な身体症状や精神症状が引き起こされるという概念である。このような病態で起こる症状は中枢性感作症候群(central sensitization syndrome: CSS)といわれ、慢性難治性片頭痛,線維筋痛症,慢性疲労症候群,化学物質過敏症,過敏性大腸症候群、重症レストレスレッグス症候群などの一部に関与していると考えられている。CSSの診断は今のところ、2012年に英語版、2017年に日本語版が開発された自記式調査票(central sensitization inventory: CSI)によるが、客観的な標準基準(ゴールデンスタンダード)がないことから、その妥当性の検討が困難となっている。申請者らは2017年度より、CSSが関与しうる疾患に関して、多くの関連学会や多職種が横断的に連携するオールジャパン体制の研究班を組織し、CSSについての国内外の現状についてのシステマティック・レビューを行い、共通する症状等についてCSIを用いたデータの収集・分析を試みた。その結果、我が国においても慢性難治性片頭痛,線維筋痛症,筋骨格系疼痛障害患者、特に重症者や疼痛増悪者においてはCSSの関連が大きいこと、そして一般集団においても約4%にCSSを有する者が存在することを明らかにし、学会等を通じた普及・啓発活動を行ってきた。本研究においては、前研究期間で得られた研究基盤をさらにスケールアップする形で、①CSSの疾患概念の確立、②疫学的特徴の解明、③危険要因の探索、④連携体制の構築による患者への理解と啓発への対策を行う。.
研究業績
主要著書
1. 「慢性の痛み診療・教育の基盤となるシステム構築に関する研究」研究班, 慢性疼痛治療ガイドライン, 真興交易医書出版部, 121-123, 2018.03.
主要原著論文
1. 安野広三,岩城理恵,村上匡史,藤本晃嗣,田中佑,早木千絵,須藤信行,細井昌子, Chronic Pain Acceptance Questionnaire 日本語版 (CPAQ-J)の作成と信頼性・妥当性の検討, 慢性疼痛, 41, 1, 83-90, 2022.12, 【背景】「慢性疼痛のアクセプタンス」は慢性疼痛の理解や治療のための重要な概念とされている。その測定にはChronic Pain Acceptance Questionnaire が最も使用されている。本研究の目的はCPAQ日本語版(CPAQ-J)の作成,その妥当性の検討であった。
【方法】慢性疼痛患者243 人を対象とし,CPAQ-J および痛みの強度,機能障害,不安,抑うつ,痛みの破局化,生活の質,生活満足度につき回答してもらった。
【結果】CPAQ-J はスクリープロット,主因子法により英語原版と同様の2 因子構造を示し,十分な内的整合性(Cronbach α係数0.83)と再検査信頼性(級内相関係数0.88)が示された。また,痛み
の強度,機能障害,不安,抑うつ,痛みの破局化,生活の質,生活満足度と有意な関連を認めた。
【結論】本研究でCPAQ-J は我が国の慢性疼痛患者において,十分な信頼性と妥当性が示された。.
2. Kozo Anno, Mao Shibata, Toshiharu Ninomiya, Rie Iwaki, Hiroshi Kawata, Ryoko Sawamoto, Chiharu Kubo, Yutaka Kiyohara, Nobuyuki SUDO, Masako Hosoi, Paternal and maternal bonding styles in childhood are associated with the prevalence of chronic pain in a general adult population: the Hisayama Study, BMC PSYCHIATRY, 10.1186/s12888-015-0574-y, 15, 181, 2015.07, Background: Previous research has suggested that extraordinary adverse experiences during childhood, such as
abuse, are possible risk factors for the development of chronic pain. However, the relationship between the
perceived parental bonding style during childhood and chronic pain has been much less studied.
Methods: In this cross-sectional study, 760 community-dwelling Japanese adults were asked if they had pain that
had been present for six months or more. They completed the Parental Bonding Instrument (PBI), a selfadministrated
questionnaire designed to assess perceived parental bonding, and the Patient Health Questionnaire-9
to assess current depressive symptoms. The PBI consists of care and overprotection subscales that are analyzed by
assigning the parental bonding style to one of four quadrants: Optimal bonding (high care/low overprotection),
neglectful parenting (low care/low overprotection), affectionate constraint (high care/high overprotection), and
affectionless control (low care/high overprotection). Logistic regression analysis was done to estimate the
contribution of the parental bonding style to the risk of chronic pain, controlling for demographic variables.
Results: Compared to the optimal bonding group, the odds ratios (ORs) for having chronic pain were significantly
higher in the affectionless control group for paternal bonding (OR: 2.21, 95 % CI: 1.50-3.27) and for maternal bonding
(OR: 1.60, 95 % CI: 1.09-2.36). After adjusting for depression, significance remained only for paternal bonding.
Conclusion: The results demonstrate that the parental bonding style during childhood is associated with the
prevalence of chronic pain in adults in the general population and that the association is more robust for paternal
bonding than for maternal bonding..
主要総説, 論評, 解説, 書評, 報告書等
1. @安野広三, 慢性疼痛患者に対する認知行動療法, 体育の科学,杏林書院, 2020.10, 現在,慢性疼痛に対する治療として認知行動療法が推奨される選択肢のひとつとなっており,欧米ではすでに多くの施設で実践されている.わが国においては痛み診療の現場で関心が高まっているが,まだその知識や技術が広く普及しているとはいえない.本稿では慢性疼痛に対する認知行動療法について,その背景にある理論モデル,実際の内容につき概説する.
主要学会発表等
1. @安野広三、@村上匡史 、#藤本晃嗣 、#田中佑 、@柴田舞欧、@須藤信行、@細井昌子, 線維筋痛症の発症年齢による臨床像の違いの検討, 第51回日本慢性疼痛学会, 2022.02, 【目的】線維筋痛症は一般的には中年期以降の発症が多いとされている。しかし、臨床的には比較的若年発症の症例も存在する。両群の臨床像は必ずしも同様ではないことを臨床的には経験するが、実証的に検討した報告は少ない。本研究では、両群の臨床的重症度、背景にある心理特性を比較した。
【方法】対象は、2019年7月から2021年3月まで九州大学病院心療内科で演者が初診を担当した女性の線維筋痛症19名。発症年齢が36歳未満(9名)とそれ以上(10名)の2群に分けた。初診時に臨床的重症度として、痛みの強さ(Brief Pain Inventory)、身体機能障害(Pain Disability Assessment Scale)、経過中の車椅子の使用または起立不能な期間の有無、不安・抑うつ症状(Hospital Anxiety and Depression Scale)、睡眠障害(Pittsburgh Sleep Quality Index)、心理特性として完璧主義(Multidimensional Perfectionism Cognition Inventory)、失感情症(Toronto Alexithymia Scale)、自尊心(Rosenberg自尊感情尺度)を評価し、各スコア、割合を比較した。
【結果】36歳未満発症群は、それ以上の年齢での発症群に比べ、車椅子の使用または起立不能な期間を有する割合が有意に高く(88.9% vs 20.0%, P【考察】線維筋痛症を比較的若年で発症した患者群は、中年期以降に発症した群に比し、起立不能となるほどの機能障害をきたす頻度が高く、背景に完璧主義の関与があることが示唆された。.
2. @安野広三, 「コロナ禍における慢性の痛みとの付き合い方」コロナ禍における人とのかかわりの変化と慢性疼痛への影響, 第50回日本慢性疼痛学会 , 2021.03, なし.
3. @安野広三, 心療内科における慢性疼痛診療の実際と問題点, 第60回日本心身医学会九州地方会, 2021.01, 近年、慢性疼痛に対する心理社会的治療介入の重要性が認識されている。特に標準的な認知行動療法やマインドフルネスの有用性が多くの研究で示されている。しかし、実臨床ではこれらの介入法の適用は必ずしも容易ではないことをしばしば経験する。これらの介入の前提として、治療者と協働関係を築き、自身の認知や情動、行動に意識的な気付きを向け、それらの問題点について回避なく向き合うことが必要となる。人生早期の主に養育者との間で形成される基本的な対人関係の構え(愛着スタイル)、自身にとって苦痛をともなう内的体験に触れないように組織化された心理的構造(パーソナリティ特性)、情動についての表象化・言語化する能力(失感情傾向)などに難しさを抱えているなどの群では、そもそもこれらの前提が成り立たない。そのため、このような患者群の心理社会的な治療介入においては愛着、パーソナリティ特性、情動の意識化などへの対応を主眼に置いた取り組みから始めなければならないことも少なくない。ところが、これらの要因の多くは人生早期に形成されているため、自身でそのあり様について意識することも難しく、しかも強固な安定性があるため、それらへの気付きや変化をもたらす援助は相当の時間と労力と技術が必要となる。このように一概に慢性疼痛患者といっても、背景にある精神病理の水準はさまざまなレベルの患者群が混在していると考えられるが、これまでの慢性疼痛診療・研究の領域では、そういう観点からの議論は十分されていない。今後、慢性疼痛患者の背景にある精神病理の水準を評価し、それぞれの水準にあった適切な介入法を選択するという方向性を洗練させることができれば、患者、治療者にとって大きな利益がもたらされる可能性がある。今回、慢性疼痛患者群の背景にある精神病理の水準という観点について先行研究、我々の臨床経験も踏まえて考察する。.
4. @安野広三, 「高齢者の疼痛評価と管理」心理社会的要因の評価, NeP Academy, 2020.09, なし.
5. 安野広三,細井昌子,早木千絵,西原智恵,柴田舞欧, 岩城理恵,須藤信行, 慢性疼痛に対するマインドフルネスに基づく介入の効果予測因子:予備的研究, 第59回日本心身医学会総会, 2018.06, 目的)近年、慢性疼痛患者に対するマインドフルネスに基づく介入の有用性が示されている。しかし、介入効果の予測因子については現在のところ十分に検討されていない。今回、マインドフルネスに基づく介入を慢性疼痛群に実施し、介入前の心理社会的因子と介入による効果の関連について検討した。
方法)対象は九州大学病院心療内科で集団マインドフルネスプログラムを実施した慢性疼痛患者27名。アウトカムを痛みの強さ、機能障害、抑うつ症状とし、介入前の心理社会的因子として年齢、性別、痛みの強さ、機能障害、抑うつ症状、痛みの破局化、痛みの受容、失感情傾向を測定した。各アウトカム変数の介入前後の変化量を目的変数、介入前の心理社会的因子を説明変数として、重回帰分析を行った。
結果)痛みの強さのより大きな改善は介入前のより強い痛み、より低い失感情傾向と関連していた。機能障害のより大きな改善は介入前のより強い痛みの破局化、より低い失感情傾向と関連していた。抑うつ症状のより大きな改善は介入前のより高い年齢、より低い機能障害、より高い抑うつ症状、より低い失感情傾向と関連していた。
結語)慢性疼痛患者群におけるマインドフルネスに基づく介入の効果は、介入前の痛みの強さ、機能障害、抑うつ、破局化、失感情傾向が予測因子となる可能性がある。.
6. 安野広三, 慢性の痛みにおけるマインドフルネス, 第47回日本慢性疼痛学会, 2018.02.
7. 安野広三,細井昌子,早木千絵,西原智恵,柴田舞欧,岩城理恵,須藤信行 , 愛着スタイル別の線維筋痛症の割合 ―その他の慢性疼痛患者との比較-, 第57回日本心身医学会九州地方会, 2018.01.
学会活動
所属学会名
日本内科学会(総合内科専医、指導医)
日本消化器内視鏡学会(専門医)
日本心療内科学会(専門医)
日本心身医学会(専門医)
日本消化器病学会
日本慢性疼痛学会
Internaitonal Association for the study of pain
学協会役員等への就任
2017.03~2021.02, 日本慢性疼痛学会, 評議員.
2015.11~2021.10, 日本心身医学会, 代議員.
学会大会・会議・シンポジウム等における役割
2023.03.10~2023.03.11, 第52回慢性疼痛学会, 事務局長.
2016.12.03~2016.12.04, 第21回日本心療内科学会総会・学術大会, 座長(Chairmanship).
学術論文等の審査
年度 外国語雑誌査読論文数 日本語雑誌査読論文数 国際会議録査読論文数 国内会議録査読論文数 合計
2023年度    
2022年度       30  30 
2020年度     13  15 
2019年度
受賞
第37回九大心療内科同門会・研究奨励賞, 九州大学心療内科同門会, 2015.11.
研究資金
科学研究費補助金の採択状況(文部科学省、日本学術振興会)
2019年度~2021年度, 基盤研究(C), 分担, 大学生が主体的に学べるICTを用いた心と体の健康教育の試み.
2019年度~2022年度, 基盤研究(B), 分担, 慢性疼痛難治例の症例対照研究:中枢性感作に関する愛着・認知・情動とバイオマーカー.
2017年度~2020年度, 基盤研究(C), 代表, 幼少期の体験に注目したより有効な慢性疼痛に対する認知行動療法の開発.

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