九州大学 研究者情報
発表一覧
藤田 龍介(ふじた りようすけ) データ更新日:2023.11.27

准教授 /  農学研究院 資源生物科学部門


学会発表等
1. 藤田龍介,舘卓司,永田康祐,日野真人,齋木雅大, 鹿児島県出水市でみられた鳥インフルエンザウイルスとオオクロバエの関係, 第75回日本衛生動物学会大会, 2023.04, 2022–2023冬シーズンは全国的に過去最大の高病原性鳥インフルエンザ (HPAI) 流行が見られた。鹿児島県出水市は年1万羽以上のツルが飛来する世界最大のツル越冬地であると同時に、2019年には鶏卵産出額が日本一なった一大養鶏産業拠点であるが、越冬ツルの1割以上がHPAIにより死亡し、近隣の養鶏農家においてもHPAIが多発するなど、その被害は深刻である。HPAIに関してはその伝播について、オオクロバエ等のハエ類の関与が以前より指摘されている。そこで我々は当該地域においてオオクロバエ等の冬季に摂餌行動を行うハエ類の捕集を行い、ハエ体内に取り込まれているインフルエンザの調査を実施した。全体としては試験に供試した651個体中、2%のハエがウイルス陽性であった。これを地域別分布としてみると、ツル渡来地周辺ではウイルス陽性率が14.7%と最も高く、他にも水鳥の見られた市内2本の河川下流域でそれぞれ4.8%、1.7%の陽性率を示した。一方、これらの地域から内陸側数kmの各エリアではウイルスの検出は見られなかった。これらの結果から、当該地域におけるHPAIの原発地はツルコロニーや水鳥生息河川であり、そこから2–3km圏内に含まれる養鶏場がハエによるウイルス伝搬リスクエリアとなり得ることが推察された。.
2. 藤田龍介、永田康祐、日野真人, 福岡市のヒトスジシマカにおけるシノビテトラウイルスの感染状況, 第75回日本衛生動物学会大会, 2023.04, 自然界には未同定のものも含め、夥しい数のウイルスが存在しており、またその多くは病原性を有さない形で宿主と共存している。しかし、どのようなウイルスがどの地域で、どの程度の感染をしているかについてはほとんど明らかになっていない。本研究では、九州大学伊都キャンパス周辺の福岡市西区における蚊のウイルス叢を解明することを目的として、蚊の捕集による季節消長の調査と、捕集蚊におけるウイルス叢解析を行った。2020–2021年の2カ年の結果では、当該地域市街地における優占種はヒトスジシマカであり、発生ピークは両年とも9月下旬であった。2カ年で捕集した計13種、2,089個体の蚊から次世代シーケンサーを用いた網羅的ウイルス解析を行った結果、福岡市西区某神社のヒトスジシマカから高頻度にShinobi tetravirusが検出された。Shinobi tetravirusは培養細胞において、デングウイルス等のアルボウイルスに対して感染抑制機能を持っており、このような機能を持つウイルスが野外蚊から見いだされたことから、野外集団におけるウイルス叢が蚊のウイルス媒介能に何らかの影響を与えていることが予想される。他にも、今回の調査対象蚊からは植物ウイルスと類縁性のあるWenzhou sobemovirusの他、未同定のウイルス様配列が複数検出された。このように、福岡市の蚊には他地域で既に検出・同定されているウイルスが見られただけでなく、未同定新規ウイルスが存在していることが示唆された。.
3. 永田康祐, 藤田龍介, 日野真人, ダイレクトPCRによるウイルス検出に向けたサンプル変性条件の検討, 第75回日本衛生動物学会大会, 2023.04.
4. 藤田龍介, 日野真人, 永田康祐, 福岡市西区における蚊の季節消長とそこで見られるウイルス叢, 第74回 日本寄生虫学会 南日本支部大会 第71回 日本衛生動物学会 南日本支部大会 合同大会, 2022.10, 九州大学伊都キャンパスはおよそ10年前に福岡市西区の山中に造成され, 現在もキャンパス敷地の半分ほどが生物多様性保全ゾーンとして植生が保存されている. この保全ゾーンではイノシシやタヌキ, アナグマなどの動物が多く活動しており, 住宅街と生物環境が大きく異なっている. このような生物環境の違いが蚊の生態系および蚊が保有しているウイルス叢にどのような影響を与えているのかを調査する目的で, 蚊の経時的な捕集調査とウイルスのメタゲノム解析を実施した. 比較対象としては九州大学と同じ福岡市西区にある住宅街の神社を設定した. 2020年および2021年の2カ年における調査の結果, 蚊の捕集数は神社の方が大学キャンパスよりも10倍ほど多いこと, また蚊成虫の発生ピークは両年とも9月末頃であることが明らかとなった. いずれの地点でも最頻種はヒトスジシマカであったが, 大学キャンパスの方が多種の割合が高いという結果も得られた.
 捕集蚊を採集月, および種毎に分別し, 1–25頭ずつを1プールとしたサンプルからRNA抽出を行い, 次世代シーケンサーを用いたウイルスの網羅的解析を実施した. 2,089個体149プールのサンプル解析の結果, 西区の蚊にはShinobi tetravirusやWhenzhou sobemo-like virus 4などのウイルスを保有していることが明らかとなった. 今後はウイルスの保有宿主の同定や2022年以降のウイルス発生動向などについて調査をする予定である.
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5. 藤田龍介,小林大介,伊澤晴彦,沢辺京子, 今後注視すべきジンメンウイルス, 第4回 SFTS研究会・学術集会, 2022.09, 【はじめに】
ダビーバンダウイルス (SFTSウイルス) を始め, マダニは様々な病原ウイルスを媒介することで知られている. その中には新規ウイルスも含まれ, ヒト等への感染性が疑われるジンメンダニウイルス (Jingmen tick virus) が新たにマダニ媒介性ウイルスとして見つかった. その後, 類縁のウイルスが次々と見つかり, 現在はジンメンウイルスグループとしてひとつの分類群を形成していることが明らかとなった. 本講演ではジンメンウイルスの国内発見事例の紹介と, 近年の動向について概説する.
【方法】
国内各地で動物咬着マダニあるいは植生マダニを捕集し, その破砕液に含まれるウイルスの同定をNGS法で実施した. 得られたウイルス配列については海外のウイルスゲノム配列と合わせて比較解析を実施した. また一部のサンプルについては動物由来培養細胞を用いたウイルス分離試験を実施するとともに, ウイルス培養系の独自手法の開発を実施した.
【結果】
国内4地点で捕集されたタカサゴキララマダニからJingmen tick virusが, 1地点のヤマアラシチマダニから近縁のTakachi virusが新たに検出・同定された. Jingmen tick virusには遺伝学的に分別可能な複数の株が存在し, これらは中国での検出サンプルとそれぞれ類似性を示していた. またTakachi virusはJingmen tick virusとアミノ酸配列 (RdRp) で80%程度の相同性を有しており, Alongshan virus同様, ジンメンウイルスグループを構成する別種ウイルスであることが示された. Jingmen tick virusは難培養性であり, 一般的な方法では3継代程度で消失するが, 感染細胞自身を含めた形で継代を繰り返すことで, 細胞傷害性を維持したまま継代可能であることが明らかとなった.
【結論】
ジンメンウイルスは新興のマダニ感染症病原体と考えられ, アジアならびに世界に分布していることから, 今後国内の分布調査や海外からの移出入について注意が必要である.
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6. 藤田龍介, 脊椎動物と無脊椎動物の間にあるウイルスにとっての壁, 第74回日本衛生動物学会大会, 2022.04, ウイルスは宿主細胞の装置を利用して増殖するため、宿主生物の進化と多様化に伴って自 身も適応進化を遂げてきた。その結果、現存するウイルスの多くは特定の生物およびその近 縁種に限定された宿主域を示すが、例外となるのが昆虫媒介性ウイルス (アルボウイルス) である。これまでに確認されているアルボウイルスはアフリカ豚コレラウイルス 1 種を除き、 全て RNA ウイルスであり、DNA ウイルスでは特にこの宿主域制限が厳しいようである。宿主 域を決定するプロセスはいくつかあるが、特に重要となるのが細胞への侵入プロセスと、感 染細胞におけるウイルス増殖の 2 つである。本談話会ではこの 2 点についてそれぞれ、これ までの研究成果とともに、ウイルスの宿主域変化の際にどのような壁があるのかについて議 論させて頂く。
1 点目は無脊椎動物・脊椎動物の両細胞に侵入可能であるものの、無脊椎動物でしか増殖 できないバキュロウイルスを例にとり、RNA ウイルスにはない「DNA-RNA 転写」プロセスにお ける機能的制限について議論する。2 点目として、オルソミクソウイルス科の中で唯一無脊 椎動物への感染性を示すトゴトウイルス属について、その膜タンパク質の進化と昆虫ウイル スの膜タンパク質との類似性について紹介し、脊椎動物病原性ウイルスのアルボウイルス化 の可能性について議論したい。.
7. 藤田 龍介, 日本の昆虫媒介感染症, JSTさくらサイエンス ワンヘルス:人獣共通感染症とデジタルヘルス, 2022.02.
8. 藤田龍介, 日野真人,永田康祐,浅野眞一郎, 北方系ヤブカ類が保有するウイルスの分離, 第78回昆虫病理研究会, 2021.06, 昆虫類は実に多様なウイルスを保有しており、その大半は病原性を示さないと考えられている。一方、中には宿主昆虫や他の生物種に対して病原性を示すものもあり、特に人獣に媒介されて感染症を引き起こすものはアルボウイルスと呼ばれている。デングウイルスなどのアルボウイルスは進化的には昆虫特異的なウイルスから派生してきたと考えられているが、そもそもどのような昆虫ウイルスがいるのかについてはほとんど明らかにされていない。特に感染症研究は熱帯・亜熱帯地域を中心に行われており、寒冷地域での知見は特に乏しい。そこで、寒冷地域に生息する蚊がどのようなウイルスを保有しているのかを調べるべく、北海道石狩市で北方系ヤブカ類の捕集と、捕集個体からのウイルス分離を行った。2018年の捕集調査ではアカンヤブカ、チシマヤブカ、トカチヤブカ、スジアシイエカが計23個体得られた。捕集蚊のRNAおよび培養細胞でウイルス培養を行ったサンプルのNGS解析の結果、24種のウイルス様配列が検出され、9種が培養系で分離された。また、これらのうち16種は新規ウイルスであった。得られたウイルスの中には既知ウイルス分類群と類縁性を示さないものや、植物ウイルスとの関連を示すものなど、他に見られない特徴が多く見られ、北方系ヤブカ類のもつウイルス多様性の一端が示された。.
9. 藤田 龍介, 吸血性節足動物が保有・媒介するウイルス, 九州・沖縄昆虫研究会 2019 年度夏の例会, 2019.07.
10. 藤田 龍介, 吸血性昆虫が保有・媒介するウイルスについての新たな取り組み, 昆虫科学・新産業創生研究センター設立記念キックオフシンポジウム, 2019.06.
11. 藤田 龍介, 江尻 寛子, 山内 健生, 糸川 健太郎, 伊澤 晴彦, 小林 大介, 室田 勝功, 前川 芳秀, 沢辺 京子, ツシマヤマネコ咬着タカサゴキララマダニからの Jingmen tick virus の分離, 第 71 回日本衛生動物学会, 2019.04.
12. 増田 亮津, 李 在萬, 南畑 孝介, 神谷 典穂, 藤田 龍介, 門 宏明, 日下部 宜宏, ヒトノロウイルス様粒子のカイコにおける効率的生産と新規経口ワクチン開発のための粒子表面へのタンパク質ディスプレイの試み, 第42回日本分子生物学会年会, 2019.12.
13. 柿野 耕平, 門 宏明, 藤田 龍介, 李 在萬, 日下部 宜宏, カイコにおける精子形成段階の異なる細胞集団の網羅的遺伝子発現解析, 第42回日本分子生物学会年会, 2019.12.
14. 小林 政彦, 門 宏明, 李 在萬, 佐藤 昌直, 藤田 龍介, 日下部 宜宏, カイコに存在する2つのTOR遺伝子の機能的違い, 第42回日本分子生物学会年会, 2019.12.
15. 門宏明, 佐藤昌直, 藤田龍介, 李在萬, 日下部宜宏, 機能未知遺伝子ライブラリーから得られたカイコ分散型動原体を構成する新規遺伝子の解析, 平成31年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会―日本蚕糸学会第89回大会―, 2019.03.
16. 藤田 龍介, 井上 真紀, 高松 巧, 新井 大, 小山 裕徳, 阿部 信彦, 西野 眞由, 糸川 健太郎, 仲井 まどか, 国見 裕久, チャハマキで後期オス殺しを誘導するOsugoroshi virusに関する研究, 第13回昆虫病理研究会シンポジウム, 2018.09.
17. 周若愚, 李在萬, 藤田龍介, 諸熊大輔, 森尾明大, 日下部宜宏, Human α(1,3)-Fucosyltransferase 6大量生産の試み, 平成31年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会―日本蚕糸学会第89回大会―, 2019.03.
18. 柿野耕平, 門宏明, 田附常幸, 日野真人, 小林政彦, 藤田龍介, 李在萬, 日下部宜宏, カイコ精巣内に存在する先端細胞(apical cell)の遺伝子発現解析, 平成31年度蚕糸・昆虫機能利用学術講演会―日本蚕糸学会第89回大会―, 2019.03.

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