Kyushu University Academic Staff Educational and Research Activities Database
List of Presentations
Hisayuki Yao Last modified date:2023.11.22

Assistant Professor / Department of Stem Cell Biology and Medicine / Faculty of Medical Sciences


Presentations
1. 八尾尚幸, 急性リンパ性白血病の中枢神経浸潤経路の解明と中枢神経浸潤の新規予防療法の可能性, 第61回日本小児血液・がん学会学術集会, 2019.11, 急性リンパ性白血病(Acute Lymphoblastic Leukemia: ALL)は中枢神経に浸潤する傾向が強いため、現在では抗癌剤の髄腔内投与や中枢神経への移行性の高い抗癌剤の全身強化化学療法が予防的に行われている。これらの予防療法が行われていたにも拘わらず、一部の症例では中枢神経浸潤が認められ、さらに中枢神経浸潤を起こした場合には予後不良である。これらのことから、中枢神経浸潤は今なおALLの治療において解決すべき課題の一つであり、中枢神経浸潤のメカニズムを解明し、メカニズムに基づいた新たな予防療法の確立が必要である。
今回我々は、ALLモデルマウスにおいてALL細胞が血液脳関門を超えて中枢神経に浸潤しているのではなく、頭蓋骨または脊椎骨の骨髄内とクモ膜下腔を直接結ぶ血管が通過する骨内連絡孔を通って中枢神経に浸潤することを見出した。連絡孔を通る血管の基底膜はラミニンに富んでおり、ALL細胞はインテグリンα6によりラミニンを認識し、血管外壁に沿って連絡孔を通過していることも明らかとなった。
また、ALL細胞のインテグリンα6の発現はPI3Kδシグナルにより制御されており、ALLモデルマウスにPI3Kδ阻害薬を投与すると、ALL 細胞上のインテグリンα6の発現が低下し、連絡孔を通るALL 細胞の遊走、脳脊髄液中の芽球数および中枢神経浸潤による症状はいずれも有意に減少した。さらに、ALL患者検体を用いた研究で、中枢神経再発を起こしたALL患者では、ALL細胞のインテグリンα6の発現が高い傾向にあることが判明した。
上記結果から、ALL細胞は自ら作ったバイパス経路を通り、骨髄からクモ膜下腔に浸潤することが明らかとなり、また、PI3Kδ阻害剤がALLの中枢神経浸潤の新たな予防薬となりえることが示唆された。.