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発表一覧
中澤 太郎(なかざわたろう) データ更新日:2024.04.09

助教 /  医学研究院 臨床医学部門


学会発表等
1. 中澤太郎, 小原知之, 平林直樹, 古田芳彦, 秦 淳, 柴田舞欧, 本田貴紀, 北園孝成, 中尾智博, 二宮利治, 地域高齢住民における大脳白質病変および全脳容積低下が認知症発症に及ぼす影響:久山町研究, 第118回日本精神神経学会学術総会, 2022.06, 【目的】地域高齢住民を対象に大脳白質病変容積(white matter hyperintensities volume: WMHV)と全脳容積(total brain volume: TBV)低下が認知症発症に与える複合的影響を検討した。
【方法】2012-2013年に福岡県久山町の住民健診を受診した65歳以上の住民1,906名のうち、認知機能検査と頭部MRI検査を受けた認知症のない1,158名を5.0年間(中央値)前向きに追跡した。WMHVはLesion Segmentation Toolを、TBVはVBM8を用いて計測した。WMHVおよびTBVの指標にはそれぞれ頭蓋内容積(intracranial volume : ICV)に対する割合(WMHV/ICV、TBV/ICV)を用いた。WMHV増加とTBV低下の有無はそれぞれの中央値で区分し、WMHV増加(-)/TBV低下(-)群、WMHV増加(+)/TBV低下(-)群、WMHV増加(-)/TBV低下(+)群、WMHV増加(+)/TBV低下(+)群の4群に分類した。認知症の発症リスクの算出にはCox比例ハザードモデルを用いた。本研究は、九州大学医系地区部局倫理審査委員会の承認を得て実施した。
【結果】追跡期間中に113名が認知症を発症した。性、年齢、教育歴、収縮期血圧、降圧薬服用、糖尿病、血清総コレステロール値、body mass index、心電図異常、画像上の脳血管障害、喫煙習慣、飲酒習慣、運動習慣で多変量調整した結果、WMHVの増加に伴い認知症の発症リスクは有意に上昇した(傾向性p値<0.001)。さらに、WMHV増加とTBV低下の有無別に4群に分けて認知症の発症リスクを検討した。認知症発症のハザード比(95%信頼区間)は、WMHV増加(-)/TBV低下(-)群に対し、WMHV増加(+)/TBV低下(-)群 2.29(1.03–5.10)、WMHV増加(-)/TBV低下(+)群 1.62(0.70–3.77)、WMHV増加(+)/TBV低下(+)群 3.45(1.63–7.27)であった。
【考察】日本人地域高齢住民において、TBVの低下にWMHVの増加が加わることにより、認知症の発症リスクは相加的に上昇することが示唆された。.
2. 中澤 太郎、小原 知之、二宮 利治, 脳萎縮および白質病変が認知症発症に及ぼす影響:久山町研究, 第119回日本精神神経学会学術総会, 2023.06, 【背景】脳萎縮は認知症に特徴的な形態学的変化の一つであり、主に灰白質容積(gray matter volume: GMV)が低下する。また、脳小血管病の一つである白質病変も認知症患者に認められる所見である。しかし、地域住民を対象に脳部位別の灰白質容積低下および白質病変の増大が認知症発症に及ぼす影響を検討した研究はほとんどない。福岡県久山町では、1985年から地域高齢住民を対象とした認知症の疫学調査(久山町研究)を継続している。本研究では、久山町研究における脳画像研究の成績を用いて、脳部位別の灰白質容積低下と白質病変容積増加が認知症発症に及ぼす複合的な影響を検討した。
【方法】2012年の久山町高齢者調査に参加した65歳以上の住民1,906名(受診率93.6%)のうち、認知機能検査と頭部MRI検査を受けた認知症のない1,158名を5.0年間(中央値)前向きに追跡した。画像解析にはVBM8およびLesion Segmentation Toolを、認知症の発症リスクの算出にはCox比例ハザードモデルを用いた。
【結果】追跡期間中に113名が認知症を発症した。脳部位別の灰白質容積と認知症発症の関係を検討した結果、内側側頭葉、島、海馬、および扁桃体の4領域において、灰白質容積低下に伴い認知症の発症リスク(多変量調整後)は有意に上昇した(全傾向性p <0.05)。また、白質病変容積の増加は認知症の発症リスク上昇と有意に関連した(傾向性p <0.001)。続いて、前述の4領域のうち脳容積低下を認めた領域数と白質病変容積が認知症発症に及ぼす複合的な影響を検討したところ、脳容積低下領域数と白質病変容積の複合的な増加に伴い、認知症の発症リスクは相加的に上昇した。
【考察】日本人地域高齢住民において、内側側頭葉,島,海馬,および扁桃体の灰白質容積低下および白質病変容積の増大は認知症発症の有益なマーカーであることが明らかになった。また灰白質容積低下に白質病変の増大が加わることにより、認知症の発症リスクは相加的に上昇することが示唆された。.
3. 中澤太郎, 大橋綾子, 畑部暢三, 小原知之, 中尾智博, 入院患者における睡眠薬処方の推移と院内インシデント発生の推移について, 第119回日本精神神経学会学術総会, 2023.06, 【目的】九州大学病院における2019年4月から2021年3月までの3年間における睡眠薬処方の推移と、同時期における院内のインシデント報告の推移を検討した。
【方法】2019年4月1日から2021年3月31日の間に九州大学病院を退院した全診療科における入院患者のうち、入院中または退院時に睡眠薬を処方されたのべ17,709名(22,840処方)を対象とした。診療録情報をもとに退院時処方に含まれる睡眠薬、または入院期間中を通じて最終的に処方された睡眠薬の処方薬剤名、および入院期間中の精神科リエゾンチーム介入の有無に関する情報を抽出した。さらに、同期間中における院内のインシデントレポート情報から、ドレーン・チューブ類の自己抜去および転倒の発生件数、およびそれらのインシデントにおけるせん妄合併の有無についての情報を収集した。本研究は、九州大学医系地区部局倫理審査委員会の承認を得て実施した。
【結果】全入院患者における睡眠薬処方の内訳では、2019年から2021年にかけてGABA受容体作動薬の処方割合は48.4%から31.2%に低下していた。一方、オレキシン受容体拮抗薬の処方割合は39.0%から57.1%に上昇した。また、入院中に精神科リエゾンチームの介入を受けた患者に限定した検討では、GABA受容体作動薬の処方割合は16.6%から15.9%とほぼ横ばいだったが、オレキシン受容体拮抗薬の処方割合は52.7%から68.4%へ増加していた。さらに、同期間におけるインシデント件数はドレーン・チューブ類の自己抜去、転倒とも減少傾向を認め、特にせん妄を合併したインシデントの発生件数は約半数に減少した。
【考察】当院の入院患者において、リエゾンチーム介入例のみならず、一般診療科においてもGABA受容体作動薬からオレキシン受容体拮抗薬へと処方内容が推移していることが示された。せん妄を伴うインシデントの報告件数の低下には睡眠薬の処方内容の変化が関連しているかもしれない。.

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